「書状」
城の広間。
きらりは文机の前に座っていた。
その目の前には、一通の書状が置かれている。
「虎次郎」
「はい、姫様」
「これは?」
「書状でございます」
「四の国?」
「はい」
「中の国?」
「はい」
「東の国?」
「それはまだ来ておりません」
「では、捨ててよいか?」
「読んでください」
「面倒そうじゃ」
「読まなければ内容が分かりません」
「内容が分からなければ、もっと面倒ではないか?」
「逆でございます」
「そうか?」
「はい」
「では虎次郎が読め」
「姫様への書状でございます」
「私はここにおるぞ」
「そういう問題ではございません」
「では、読むぞ」
きらりは書状を開く。
「……」
「何と書いてございますか?」
「早く来い」
「……やはり四の国でございますか」
「うむ」
「何と返されますか?」
「今向かっておる、と」
「向かっておりません」
「では、向かう予定じゃ」
「予定もございません」
「では、向かうかもしれぬ」
「それも書かないでください」
「難しいのう」
「姫様、当主としてもう少し真面目にお願いいたします」
「では虎次郎」
「はい」
「返事を書いておいてくれ」
「何と?」
「『そのうち』」
「……承知いたしました」
「本当に書くのか?」
「書きません」
「なぜじゃ?」
「私も当主としての姫様を少しは守りたいのでございます」
「そうか」
「はい」
「では、任せた」
「……いつも通りでございますね」




