↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/77

「空き家」

城の広間。


虎次郎が帳面をめくっている。


「虎次郎」


「はい」


「空き家がなくなった」


「それは良いことでは?」


「そうなのか?」


「人が住むようになったということでございますから」


「うむ……」


きらりが少し考える。


「困ったな」


「なぜでございます?」


「次に来た人が住めん」


「……」


「家がない」


「そうなりますね」


「どうすればよい?」


「家を建てるしかないかと」


「では、建てよう」


「承知いたしました」


「たくさん」


「どのくらいでございます?」


「たくさんじゃ」


「もう少し具体的にお願いいたします」


「十軒」


「十軒も必要ですか?」


「分からん」


「……」


「でも、人は来るのであろう?」


「最近は増えております」


「なら、家も増やしておけばよい」


「確かに」


「二十軒にしよう」


「急に倍になりましたね」


「足りなかったら困る」


「余ったらどういたします?」


「誰かが住むじゃろ」


「そうですね」


きらりは満足そうに頷く。


「では二十軒じゃ」


「はい」


「いや」


「まだございますか?」


「三十軒」


「なぜ増えたのでございます?」


「二十軒作ったところで、また人が来たら困る」


「……」


「最初から多く作っておけば安心じゃ」


「その考え方は分かりますが」


「何じゃ?」


「人が来ることを、もう当然のように考えておられますね」


きらりは少し首を傾げる。


「住みたい者がいるなら、来ればよいじゃろ」


「はい」


「来たのに住むところがないのは、かわいそうじゃ」


「……左様でございますね」


「だから家を作る」


「承知いたしました」


「それに」


「はい?」


「人が増えるのは、悪いことではない」


虎次郎が少し笑う。


「はい」


「働く者も増える」


「はい」


「店も増える」


「はい」


「畑も増える」


「はい」


「兵も増える」


「……そこまで考えておられたので?」


「今思いついた」


「そうでございましたか」


「でも、まずは家じゃ」


「はい」


「人が安心して住めるところがなければ、何も始まらん」


「その通りでございます」


虎次郎は帳面に何かを書き込む。


「では、家を三十軒」


「うむ」


「建てる場所も決めませんと」


「うむ」


「木材も必要です」


「うむ」


「職人も必要です」


「うむ」


「また仕事が増えましたね」


「そうじゃな」


「人が増えると、仕事も増えます」


「仕事が増えると?」


「また人が必要になります」


きらりが少し考える。


「では、また人を呼べばよい」


「……」


「何じゃ?」


「その繰り返しになりそうでございます」


「それなら、それでよいではないか」


「はい?」


「人が来て、仕事をして、また人が来る」


きらりは窓の外を見る。


「賑やかな国になりそうじゃ」


虎次郎は静かに頷いた。


「そうでございますね」


「虎次郎」


「はい」


「三十軒で足りるか?」


「……」


「どうじゃ?」


「四十軒にしておきましょうか」


「うむ」


「念のために」


「虎次郎も考えるようになったのう」


「姫様のおかげでございます」


「そうか」


「はい」


「では五十軒」


「増やさないでください」


「なぜじゃ?」


「念のためが止まりませんので」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。