「雨」
朝から雨が降っている。
「虎次郎」
「はい」
「外に出られん」
「雨でございますから」
「濡れるのが嫌じゃ」
「傘をお使いください」
「傘は嫌じゃ」
「では、どうなさいます?」
「屋根をつけよう」
「どこにでございますか?」
「道に」
「……」
「道に屋根があれば、雨の日でも濡れずに歩ける」
「確かにそうでございます」
「よい考えじゃろ?」
「考え方としては」
「では、作ろう」
「九の国の道、全部にですか?」
「うむ」
「かなりの量になります」
「なぜじゃ?」
「道が長いからでございます」
「そうか」
「はい」
「では、短くしよう」
「道を?」
「うむ」
「それでは目的地に着けません」
「そうじゃった」
「はい」
きらりは窓の外を見る。
「では、屋根を高くしよう」
「なぜでございます?」
「兵が通れるように」
「屋根の高さだけは、かなり立派になりそうですね」
「馬も通れるようにしよう」
「はい」
「荷車も」
「はい」
「象も」
「九の国に象はおりません」
「では、来たときのために」
「来る予定があるのでございますか?」
「ない」
「……」
「でも、来たら困るじゃろ」
「まず来ないと思います」
「分からんぞ」
「分からないのは姫様の発想でございます」
「では、屋根を作ろう」
「本気でございますか?」
「うむ」
「国中の道に?」
「うむ」
「職人が足りません」
「集めよう」
「木も大量に必要です」
「買おう」
「お金もかかります」
「……」
きらりが黙る。
「どうされました?」
「傘でよいかもしれん」
「最初からそう申し上げております」
「傘なら一本で済む」
「はい」
「屋根は大変じゃな」
「かなり」
「では、屋根はやめよう」
「ありがとうございます」
「でも」
「まだございますか?」
「城から門までだけなら?」
「姫様」
「なんじゃ?」
「そこにも屋根はいりません」
「なぜじゃ?」
「姫様が傘をお持ちになれば済むからでございます」
「……」
「はい」
「虎次郎」
「はい」
「傘を持ってまいれ」
「承知いたしました」
「それから」
「はい」
「今日は出かけるのをやめよう」
「……」
「雨じゃからな」
「それが一番よろしいかと存じます」




