「武器」
城の広間。
虎次郎は帳面を広げていた。
きらりはその横から、数字を眺めている。
「虎次郎」
「はい」
「兵が増えたら、武器も増やさねばならんのじゃな」
「はい」
「では、増やそう」
「承知いたしました」
「どれくらい?」
「兵一人につき、一つは必要かと」
「では、兵の数だけ買えばよい」
「はい」
「簡単じゃな」
「……そうでもございません」
「なぜじゃ?」
虎次郎が帳面をきらりの前に向ける。
「こちらが、必要な数を揃えた場合の費用でございます」
「……」
きらりが数字を見る。
「これは?」
「武器代でございます」
「高いのう」
「はい」
「こんなに?」
「はい」
「武器一本で?」
「はい」
「では、半分にしよう」
「武器を?」
「値段を」
「それは私が決めることではございません」
「そうか」
「はい」
「では、もっと安い武器を買おう」
「質が落ちます」
「木の棒は?」
「武器とは呼べるかもしれませんが……」
「安いぞ」
「兵が持つには心もとないかと」
「竹は?」
「もっと心もとないです」
「石は?」
「それは拾えますが」
「よいではないか」
「兵が全員、石を持って戦う姿は見たくありません」
「私も見たくない」
「では、ちゃんとした武器を用意しましょう」
「でも高い」
「はい」
きらりは帳面をじっと見る。
「虎次郎」
「はい」
「武器を作るのにも、人がいるのか?」
「もちろんです」
「鉄もいる?」
「はい」
「木も?」
「はい」
「では、武器を増やすには、武器を買うだけではないのじゃな」
「……そうでございます」
「作る人がいれば、買う数を減らせる?」
「はい」
「九の国で作れば?」
「長い目で見れば、国にもよいでしょう」
「では、鍛冶を増やそう」
「はい」
「鍛冶場も?」
「必要になります」
「鉄も?」
「必要です」
「炭も?」
「必要です」
「……」
「どうされました?」
「武器一つ作るのに、ずいぶん色々いるのう」
「そういうものでございます」
「兵を増やそうとしただけなのに」
「はい」
「米が必要になって」
「はい」
「人が必要になって」
「はい」
「今度は武器じゃ」
「はい」
「国を強くするのは大変じゃな」
「ですが――」
「なんじゃ?」
「一つずつ整えていけば、九の国の力になります」
「そうか」
きらりはまた帳面を見る。
「虎次郎」
「はい」
「この武器代、全部払ったら国の金はどうなる?」
「かなり減ります」
「どのくらい?」
虎次郎が少し間を置く。
「……しばらく贅沢はできません」
「贅沢とは?」
「新しい着物などでございます」
「別にいらん」
「団子も少し減らす必要が――」
「それは駄目じゃ」
「……」
「武器は大事じゃ」
「はい」
「米も大事じゃ」
「はい」
「人も大事じゃ」
「はい」
「でも、団子も大事じゃ」
「最後だけ急に重要度が変わりましたね」
「私にとっては同じくらいじゃ」
「……承知いたしました」
「どうする?」
「武器は必要な分を整えます」
「うむ」
「無駄なものは買いません」
「うむ」
「国の中で作れるものは、できるだけ作る」
「うむ」
「そのために、人も育てます」
「よいな」
「そして――」
「そして?」
「団子代も残します」
「さすが虎次郎じゃ」
「そこだけは譲れないのでございますね」
「当たり前じゃ」
「……はい」




