「団子」
城の広間。
「虎次郎」
「はい」
「団子がない」
「……」
「なぜじゃ?」
「昨日、姫様がお召し上がりになったからでございます」
「全部?」
「全部でございます」
「私だけが?」
「はい」
「虎次郎は?」
「私は食べておりません」
「なぜじゃ?」
「姫様が『二人分』とおっしゃって、全部召し上がったからです」
「……そうだったか?」
「はい」
「では、買ってこよう」
「誰が?」
「虎次郎」
「私でございますか?」
「うむ」
「姫様が食べたのでございますが」
「だからじゃ」
「……」
「虎次郎」
「はい」
「団子は一人で食べるより、二人で食べたほうがおいしいぞ」
「では、次は二人分買ってまいります」
「そうしてくれ」
「姫様」
「なんじゃ?」
「二人分でよろしいのでございますね?」
「うむ」
「本当に?」
「うむ」
「三人分ではなく?」
「二人じゃ」
「では、二人分買ってまいります」
「待て」
「はい」
「私の分は二人分じゃ」
「……」
「虎次郎の分は?」
「一人分でございますか?」
「うむ」
「つまり三人分では?」
「そうとも言う」
「最初からそうおっしゃってください」
「細かいのう」
「大事なことです」
「では、三人分」
「承知いたしました」
「ただし」
「まだございますか?」
「一番大きい団子を私に」
「……」
「何じゃ?」
「姫様」
「うむ」
「東の国から書状が来たときより、こちらのほうが難しい交渉でございます」
「団子は戦より大事じゃ」
「それは聞きたくなかったお言葉でございます」




