「援軍を出す理由」
城の広間。
東の国の西進が続き、虎次郎は届いた戦況の書状を読んでいた。
「虎次郎」
「はい、姫様」
「中の国、困っておるのか?」
「はい。東の国が近づいておりますので」
「そうか」
きらりはしばらく書状を眺める。
「では、助けるか」
「はい」
「なぜじゃ?」
「同盟国ですから」
「そうだった」
「……姫様」
「なんじゃ?」
「今まで忘れておられたのですか?」
「少し」
「少し……」
「中の国は、いつも偉そうにしておるからのう」
「それは否定できません」
「四の国もじゃ」
「はい」
「だから、助けなくてもよいのかと思った」
「ですが、同盟国です」
「うむ」
きらりは少し考える。
「虎次郎」
「はい」
「中の国が困っているのは、国主だけか?」
「……いえ」
「領民も困るのか?」
「おそらくは」
「では、助けよう」
「……はい」
「国主が偉そうなのは、私には関係ない」
「はい」
「でも、そこで暮らしている者たちが困るのは嫌じゃ」
虎次郎が少し黙る。
「姫様……」
「なんじゃ?」
「いえ」
「変な顔をしておるぞ」
「少し感心していただけでございます」
「何に?」
「姫様は、時々とても大事なことを簡単におっしゃいますので」
「そうか?」
「はい」
「私は難しいことは分からんからのう」
「だからこそ、なのかもしれません」
「よく分からん」
「私にも、少し分かりません」
「では、同じじゃな」
「はい」
きらりは書状を虎次郎に返す。
「虎次郎」
「はい」
「中の国を助けよう」
「承知いたしました」
「ただし」
「はい?」
「助けるのは領民じゃ」
「……はい」
「国主まで助けるつもりはないぞ」
「それは、難しいところでございますね」
「なぜじゃ?」
「国主も領民の一人……というわけにはいきませんので」
「むう」
「ですが、できる限り領民を守るようにいたしましょう」
「うむ。それでよい」
「では、準備をいたします」
「虎次郎」
「はい?」
「ありがとう」
「……いえ」
「何じゃ?」
「なんでもございません」
「また変な顔じゃ」
「申し訳ございません」
「今日は変な虎次郎じゃな」
「姫様がそうさせておられるのかもしれません」
「そうか」
「はい」
「では、仕方ないのう」
「……はい」




