「戦況」
城の広間。
虎次郎は届いた報告に目を通していた。
きらりはその様子を、向かいから眺めている。
「虎次郎」
「はい、姫様」
「東の国、また進んだのか?」
「はい」
「どこまで?」
「少し西へ進んだようでございます」
「四の国は?」
「東の国の軍が、四の国の陣にかなり近づいております」
「ほう」
「四の国も兵を集めているようです」
「では、まだ大丈夫じゃな」
「そう簡単には言えません」
「なぜじゃ?」
「東の国はかなり強いですから」
「でも、四の国も強いじゃろ?」
「以前は、そうでした」
「以前?」
「最近は少し事情が違います」
「兵が減ったのか?」
「それもございます」
「武将も?」
「はい」
「また逃げたのか?」
「……そのようでございます」
「四の国は、人がよくいなくなるのう」
「笑い事ではございません」
「すまん」
「いえ」
「では、中の国は?」
「まだ東の国とは直接ぶつかっておりません」
「そうなのか?」
「はい。東側では、陸の国と北の国が東の国と対峙しております」
「では、中の国はまだ遠いのじゃな」
「今のところは」
「では大丈夫じゃな」
「姫様、その判断は早すぎます」
「そうか?」
「東の国は西へ進んでおります」
「うむ」
「四の国の陣に迫っております」
「うむ」
「その先には中の国もございます」
「……」
「お分かりいただけましたか?」
「東の国が、どんどん近づいておる」
「はい」
「九の国にも?」
「まだでございます」
「なら大丈夫じゃ」
「……」
「どうした?」
「姫様」
「なんじゃ?」
「少しは心配してください」
「しておるぞ」
「そうは見えません」
「心配だから、団子を食べようと思っておる」
「それは姫様が食べたいだけでは?」
「そうとも言う」
「……では、団子を用意いたします」
「うむ」
「戦況の続きもございますが」
「食べながら聞こう」
「承知いたしました」
「虎次郎」
「はい」
「四の国、大丈夫かのう」
「……分かりません」
「そうか」
「ですが、今はまだ戦えております」
「なら、もう少し見ておこう」
「はい」
「何かあれば教えてくれ」
「もちろんでございます」
「東の国が九の国まで来たら?」
「そのときは――」
「引っ越す?」
「戦う準備をいたします」
「そうか」
「はい」
「残念じゃ」
「何がでございますか?」
「引っ越しなら楽なのに」
「……姫様らしいお考えでございます」




