「援軍」
城の広間。
きらりの前には、二通の書状が並んでいた。
「虎次郎」
「はい、姫様」
「今度は中の国からじゃ」
「何と?」
「援軍を出せ」
「……またでございますか」
「四の国にも言われておるぞ」
「はい」
「二つの国から同時に頼まれるとは、人気者じゃな」
「そういう問題ではございません」
「では、何の問題じゃ?」
「九の国の兵は、二つの国へ同時には送れません」
「そうなのか?」
「はい」
「では、二つに分ければよい」
「それではどちらにも足りません」
「では、三つに分ける」
「もっと足りなくなります」
「むう」
虎次郎は二通の書状を見比べる。
「中の国は、東の国との戦線に兵を出せと言っております」
「四の国は?」
「同じでございます」
「同じなら、二つとも助ければよいではないか」
「四の国は、さらに兵糧も送れと」
「中の国は?」
「馬も出せと」
「……」
「さらに中の国からは、できれば早急に、と」
「四の国は?」
「今すぐに、と」
「どちらも急いでおるのう」
「はい」
「自分たちは?」
「それぞれ戦っております」
「大変じゃな」
「九の国も大変でございます」
「そうじゃな」
きらりは二通の書状を並べる。
「虎次郎」
「はい」
「どちらを助ける?」
「難しいところでございます」
「では、じゃんけんをさせよう」
「国同士の援軍をじゃんけんで決めるのですか?」
「公平じゃろ?」
「公平ではございますが、納得されないと思います」
「では、くじ引き」
「もっと納得されないと思います」
「では、両方に断る」
「それも難しいかと」
「ではどうする?」
「まず、こちらから出せる兵を確認いたしましょう」
「うむ」
「その上で、どちらを優先するか考えます」
「虎次郎」
「はい」
「中の国と四の国、どちらが強い?」
「中の国です」
「では中の国は自分で何とかできるのでは?」
「……」
「どうした?」
「姫様」
「なんじゃ?」
「それを言ってしまうと、かなり怒られると思います」
「そうか」
「はい」
「では、四の国にするか」
「四の国は、もっと兵が足りません」
「では四の国じゃな」
「ただし、四の国は――」
「まだ何かあるのか?」
「援軍を出したら、その兵を自分たちの指揮下に置きたいと」
「……」
「中の国も同じ要求です」
「二つとも勝手じゃな」
「はい」
「では、九の国の兵は九の国のものじゃ」
「その通りでございます」
「誰にも貸さん」
「……それはそれで問題がございます」
「難しいのう」
「国を治めるのは難しいのでございます」
「団子を買うほうが簡単じゃな」
「それは否定いたしません」
「では、まず団子を食べよう」
「援軍の話は?」
「食べながら考える」
「……承知いたしました」
「虎次郎の分もあるぞ」
「ありがとうございます」
「ただし一つだけじゃ」
「姫様は?」
「私は二つ」
「……それでは公平ではございません」
「これは私の国じゃからな」
「そういうところでございます」




