「人気者」
城の広間。
きらりは届いた書状を眺めながら、首をかしげていた。
「虎次郎」
「はい、姫様」
「私、人気があるのか?」
「……突然、どうなされたのですか?」
「最近、よく人に声をかけられる」
「それは姫様が当主だからでは?」
「そうなのか?」
「それだけではないと思いますが」
「では、人気がある?」
「少し違います」
「人気ではないのか?」
「姫様は、ご自分ではお気づきになっていないようですが」
「何を?」
「人と話すとき、相手のことをよく見ておられます」
「そうか?」
「はい」
「普通ではないか?」
「普通の当主は、忙しいと家臣の話を途中で切ってしまうこともございます」
「それは嫌じゃな」
「姫様は最後まで聞かれます」
「聞いたほうが早いからのう」
「それから、兵が戻れば必ず声をかけます」
「疲れておるからな」
「書状を届けに来た者にも、礼を言われます」
「届けてくれたのじゃから、礼くらい言うじゃろう」
「その『くらい』が大事なのだと思います」
「よく分からん」
「それに、以前、夜遅くまで働いていた家臣に――」
「ああ、『もう寝てよいぞ』と言ったやつか」
「はい」
「顔が疲れておったからな」
「その方、翌日ずっと嬉しそうでした」
「寝不足だったのでは?」
「違うと思います」
「そうか?」
「はい」
「では、私は人気者なのか?」
「だから、少し違います」
「では何なのじゃ?」
「……好かれているのでしょう」
「誰に?」
「九の国の者たちに」
きらりは少し考える。
「そうか」
「はい」
「では、皆にお菓子を配ろう」
「それは人気取りでございますか?」
「違う」
「では?」
「私が食べたい」
「……姫様らしゅうございます」
「虎次郎の分もあるぞ」
「ありがとうございます」
「一番大きいやつじゃ」
「姫様がお選びください」
「うむ」
きらりはしばらく悩んだあと、一番大きなお菓子を虎次郎に渡した。
「はい」
「……よろしいので?」
「いつも働いておるからな」
「姫様」
「なんじゃ?」
「そういうところでございます」
「?」
「いえ、何でもございません」
「変な虎次郎じゃな」




