第十九話 三沢葵のバックアッププラン
GREEDのグループチャットに新しいメンバーが加わった。
「皆さん、初めまして。清優マリハさんのマネージャー、三沢葵と申します。よろしくお願いいたします。」
数秒の静寂の後、グループの雰囲気が一気に盛り上がった。スタンプ、歓迎の言葉、挨拶が次々と湧き出た。
「マネージャーお姉さん、私たちの小隊へようこそ!」
乃亜が最初にメッセージを送り、狂ったように手を振る子猫のスタンプも添えた。
続いて三人の歓迎スタンプが届き、それぞれの性格がよく表れていた。
舞子はクールな表情の歓迎スタンプを送った。
レイナは本人とのギャップが大きいピンク色の歓迎スタンプを送った。
いずみは乃亜が作ってくれた本人のデフォルメキャラクターの歓迎スタンプを送った。
「せっかく皆さんこんなに熱心だから――直接会ってみない?」葵がメッセージを送った。
グループが一瞬静まり、そして爆発した。
「え?! 今ですか?!」
「いいよ、どこで?」
「私も大丈夫です。」
「私も問題ないわ。」
「新野江口ビル11階、私のスタジオです。マリハもこっちにいますよ!」
理由はとても簡単だった――マリハがこれからもこの人たちと関わっていくのなら、早いうちに一度顔を合わせておいたほうがいい。オンラインでどれだけ盛り上がっても、実際に会って座って話すほうがよほど実になる。そして彼女自身も、マリハが言うところの「とても面白い人たち」が一体どんな人たちなのか、実際に見てみたかったのだ。
葵には先見の明があった――物事が徐々に自分の制御範囲を超えつつあることを、漠然と感じていたのだ。
スタジオの名前は三沢Studio。現在は葵の個人スタジオだ。ここが、彼女がマリハと自分のために用意した最初の逃げ道だった。
新野江口ビルはガーデン体育館から徒歩十分の場所にある、二十四階建ての薄灰色の建物だ。一階から十階と十八階以上は賃貸に出されており、十一階はこのビルの中で最も安いフロアだった。かつてはゲーム制作会社や企画会社が入居していたが、いずれも半年から一年の間に音を立てて消えていった――不吉なことではなく、ただ何をやっても長続きしなかっただけだ。
葵がここを借りたのは、ただ安くて場所が便利だったからだ。そしてあの窓から見える景色が、ちょうどガーデン体育館のドームの一角を望めることが、それだけで価値があると思えたからだ。
いずみとレイナは地下鉄の駅で待ち合わせ、乃亜と舞子は一緒に歩いて来た。四人はすぐにビルの入り口で、それぞれ別の方向から顔を合わせた。
「1階-2階 新野グループ
3階-10階 株式会社KAIROS
11階 三沢Studio
12階-17階 (空室)
18階-19階 GrooooT Animation
20階-24階 株式会社TOOPP」
ビルの入り口の表示板にはそう書かれていた。
四人はロビーのエレベーターのそばに立っていた。エレベーターは二十四階に止まっており、おそらく誰かが降りてくるのだろう。
「KAIROSって何をやってるんだ? 十階分も借りるほど資金力があるなんて。」レイナが尋ねた。
「よく分からないな……」いずみはあちこち見回して、何かを見つけたように、無意識に視線をそらした。
舞子はそれに気づき、いずみが先ほど見ていた方を見た。そこには御長亭院金融のポスターがあり、その隣には有名モデルの万里小路楓の写真が飾られていた。
「いずみ姐さん、こういうタイプが好きなんだ! 万里小路楓、確かに綺麗だよなあ……」舞子は心の中で思い、口元がわずかに緩んだ。
「GrooooT AnimationとTOOPPは知ってるよ。」乃亜が答えた。
「TOOPPはインテリアデザインだろ、それは知ってる。でもGrooo……って、なんで伸ばすんだ?」レイナが少し困惑して尋ねた。
「だって会社の名前がそういう読み方だからだよ、GrooooT Animation。前に『アイドル散華』とか『見知らぬ妻が帰ってきた件について』とかを作ってた新世代アニメ会社だよ。」
「え……分かんない……」レイナは老人のような虚ろな目でエレベーターのドアをじっと見つめた。「そういうのは全く分からない。」
乃亜はついでにKAIROSが何をしているのか調べようとしたが、エレベーターが降りてきた。
エレベーターからは様々な人が降りてきた。髪をぼさぼさにした中年男性、バインダーを持ったショートカットの女性、図面を挟んで腕時計を見ながら外に出ようとする人、髪を染めた若者たちがおしゃべりしながら出てきた。
最後の一人はエレベーターに乗ったままだった。
彼女は茶色のチェックシャツにストレートジーンズ、白いスニーカーを履き、頭には白いベースボールキャップをかぶり、静かにそこに立っていた。
四人が顔を上げると、マリハが微笑みながら彼女たちを見ていた。
「Welcome!」
十一階に通じるエレベーターは二基だけだった。
エレベーターを降りると、真正面には巨大な空色の「三沢Studio」ロゴがあった。
右に曲がるとエレベーターホールを抜け、スタジオ全体はまだ整理されていなかった。前の会社が残した物がまだ片付けられていなかった。
外には何列もの空っぽのデスクが並び、その上には二、三台のパソコンモニターが残されていた。
「まだ正式に運営を始めたわけじゃないんだ。ただ名前を出しただけ……さっきね。」マリハが言った。
「すごく広いね。」
奥へ進むと、廊下の両側にはまだ数部屋の空室があり、前の会社の仕切りやガラスドアが残っていた。
一番奥には巨大な半球形のすりガラスでできた部屋があり、それがかつての社長室だった。
半球形の部屋に入ると、左側の窓際にはすでに薄灰色のソファとローテーブルが置かれ、クッションはきちんと整えられていた。真ん中には濃い茶色の無垢材のデスクがあり、天板は広く、表面には前の会社が残した細かな傷がいくつか残っていたが、椅子はなかった。後ろには本棚があり、中には数枚の写真が置かれているだけだった。右側の壁際には未開封の段ボール箱がいくつか積まれており、黄色いテープで封がされ、きちんと積まれていたが、誰も触った形跡はなかった。それ以外は、部屋全体ががらんとしていて、床はきれいで、窓からは明るい光が差し込み、あのデスクだけが中央にぽつんと置かれていた。
「葵!」
「はい……」
葵が机の下から這い出てきた。彼女はしゃがんで机の下を拭いており、立ち上がると、手にした雑巾を机の端に掛け、膝に付いた埃をはたいた。
「皆さん、初めまして。三沢葵です。葵と呼んでください!」葵は四人の顔を順番に見渡し、最後にマリハに止まり、ウインクした。
「初めまして! 北原乃亜です。」
「片山……舞子です。」
「安藤レイナ、レスラーです。」
「秋岡いずみです。同じくレスラーです。」
「清優マリハです!」
「あなたは自己紹介しなくていいの!」
皆をソファに案内した後、葵はもう一度四人を観察してから話し始めた。
「今日皆さんにお集まりいただいたのは、一つお伝えしたいことがあるからです。」
「マリハはこの数日、プロレスの試合のおかげでトレンドの一位にいます。良いことのように見えます。しかし、私はデータ比較をしてみました――あの上昇のカーブは異常で、誰かが意図的にプロモーション費用を投じて押し上げたように見えます。そしてここ二日間で突然現れたあの二つの映画のトレンドも、明らかに誰かがプロモーションしています。ただマリハが抑え込んで、上に上がれなかっただけです。」
彼女は唇を噛んだ。
「率直に言って、この件は皆さんにも波及するかもしれません。今の状況は、私一人のマネージャーが対抗できるものではありません。私たちには今、背後で世論や話題性を操作している連中と渡り合う力は全くありません。」
「近いうちにこの業界で大きな入れ替えが起きるかもしれません……」
窓の外の夕暮れが次第に深まり、体育館のドームの輪郭が夕闇の中で徐々にぼやけていった。まるで黄昏が少しずつ全てを飲み込んでいくかのように。
この話は皆にとってやや重く、雰囲気は微妙になり、誰も口を開かず、ただガラスに映る自分の顔を静かに見つめていた。
「こんな話はさておき、ピザを注文してあるんですよ。」
雰囲気が徐々に和らいでいき、数人は夜遅くまで話し込み、それぞれ散っていった。




