第十三話 物事は偶然に起こるのではない
窓の外は夕暮れに覆われ、夜が迫り、灯りが遠くに連なってぼんやりとした帯を形成していた。
一人の女性が机に背を向けて革張りの椅子に座り、手に持ったペンを軽く回しながら、視線は遠くの地平線に向けられていた。
「あの写真、見たわね。」女性が冷たく言った。
「はい。」
「この試合……GREEDにかなりの話題をもたらしたわね。これからどうするべきか、分かっているわね。」
「承知しております。」
女性は無造作に手を振った。
足音がドアの外に消え、オフィスには再び静けさが戻った。
彼女は椅子を回し、スマホを手に取った。画面にはマリハのマスクが外れたあのスナップ写真が映っていた。
「清優マリハ……面白い女ね。」
四階・更衣室
「まるで夢のようだなあ……」マリハは感嘆した。
「次にこんなことがあったら、必ず私に言いなさいよ!」葵は椅子に座り、両手を素早くスマホのキーボードに走らせ、社長に状況を説明していた。
彼女は送信ボタンを押し、スマホの画面をロックしてバッグに放り込み、ポニーテールをほどいて髪を振り払い、上着を脱いで腕に掛けた――中には黒いトップスが着られていた。
「さあ、役を取ったお祝いに、ご飯に行こう。」
マリハは彼女の後ろについていった:「また飲むのね、私が見てるだけだよね。」
「あんたは飲めないんだから。」
二人はドアを押し開けて夏の夜に飛び出した。風が吹き、昼間の暑さを運び去った。
葵は彼女の横を歩き、いつもより速い足取りだった:「知ってる? マスクが外れたあの写真。」
「……もう言わないで。」
「すごくかっこよかった!」葵の声が一段高くなった。「スマホで写真を見た時、驚いちゃったわ。あんたのあの表情、ぼんやりしててしかも強烈で、照明がちょうど顔に当たって、まるで漫画のワンシーンのようだった。」
マリハは顔を覆った。
二人は路地を曲がり、一軒の居酒屋に入った。
座ると、葵は日本酒と烏龍茶を注文した。烏龍茶はマリハの前に差し出された。
「舞台の上での気持ちを教えてよ。」葵は自分にお酒を注ぎながら言った。「私はプロレスは全く分からないから、説明してくれない?」
マリハは考えた:「最初は何も分からなかった。全部、秋岡いずみ選手がリードしてくれたんだ。」
「それってすごいじゃない。」
葵は一口酒を飲んだ。
「あんた、教えてよ。あのプロレスの動作ってどういう仕組みなの? クロスボディって具体的に何?」
マリハは笑い、彼女にジェスチャーを交えながら説明し始めた:「ロープから飛び出して、横から相手の胸にぶつかるんだ……」
「飛び出す時、怖くなかった?」
「死ぬほど怖かった。でも飛び出した瞬間、頭の中が真っ白になった。」
「これからだんだん怖くなくなるよ。」葵はもう一杯飲み、頬が微かに赤らんだ。
マリハはうつむいて微笑んだが、何も言わなかった。
居酒屋は大きくなく、狭い路地の二階に隠れていた。暖簾をくぐると、薄暗い灯りが迎え、木製のカウンターが半分を占め、後ろにはいくつかのコンロと大きな鍋が湯気を立てていた。壁には手書きのメニューが貼られ、曲がりくねった筆文字で「本日のおすすめ」と書かれていた。隅の古いテレビでは夜のニュースが流れていたが、その音は客の喧騒に掻き消されていた。
席は全て半個室タイプの小ボックスで、焦げ茶色の革張りの長椅子は使い込まれて微かに光っていた。空気には焼き鳥の香ばしい香り、醤油の塩気、そして日本酒のほのかな甘い香りが混ざり合っていた。隣の席ではスーツ姿の男性たちがネクタイを緩めて仕事の話を大声でしていた。この店はかなり年季が入っていて、木の枠組みには煙で燻された古びた色合いが見えた。
「今日、桃ちゃんの現場に付き添ってたんだけど、誰を見たと思う?」
葵はテーブルに突っ伏して言った。「佐伯凛太郎先輩だよ。」
マリハが烏龍茶を飲む手が一瞬止まった。「……現場であの人に会ったの?」
「そうだよ! 現場で! 桃ちゃんと一緒に演じてたんだよ。」葵は体を起こし、興奮してジェスチャーを交えた。「何年ぶりだろう、相変わらずかっこいい――あの横顔、高校の時と変わらないね。」
佐伯凛太郎は二人の高校時代の先輩で、当時は全校のアイドルだった。
葵は当時生徒会長で、まるで中川菜々や優木雪菜のようなタイプの生徒会長だった。学校によく現れるギャルアイドルの堀口奈々が誰か、佐伯凛太郎先輩以外は誰も知らなかった。
何年も経った今でも、まだ一緒にいるの? 二人は青葉荘で三年間暮らし、大学に入ってから今も一緒に住んでいる。
そのことはマリハも知っていた。おそらく葵は飲みすぎて酔っ払ったのだろう。
葵は滔々と話し続け、その言葉の中には彼女への励ましや称賛もたくさん含まれていた。
マリハはそれを聞きながら、時折相槌を打ち、手元には常にあの烏龍茶があった。こんなに長く一緒にいるのに、こうやって心を開いて話すのは初めてだった。
最後に葵はテーブルに突っ伏して、目を閉じたまま呟いた:「マリハ……あんたのマスクが外れた瞬間、本当にかっこよかったよ。」
マリハはテーブルに突っ伏した葵を見つめて、残っていた烏龍茶を飲み干した。
……
葵を家に送り届けるまで、マリハは気づかなかった。あんなに酒に強い人が、数杯の日本酒で酔うわけがない。
「やられたなあ!」
マリハは心からの称賛を思い返しながら、微笑みを浮かべて家へと歩いていった。




