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リングの外では、まだ本当の自分になれていない。  作者: 黒黒の白描 / 黒ノ橙
第二章 灯光の下、リングの上
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第十二話 新たなオーディション、新たな挑戦

 自分のスマホを手に取ると、案の定、葵からすぐに電話がかかってきた!


「葵……いや、違うんだ……急に舞台に上げられて……今すぐ行く、今すぐ行くから!」


 葵は怒っているようだったが、マリハは今そんなことを気にしている余裕はなく、履いていたズボンをバッグに入れ、上着と靴を手に取って外に飛び出した。まだ衣装も着替えていない。


「家で洗ってから返しますから……」と言い終わらないうちに、マリハはもう遠くへ走り去っていた!


「その衣装は返さなくていいですよ! 清優さん!」


 明らかに彼女の耳には届いていなかった。


 凪Filmのビルに駆け戻り、彼女はエレベーターにも乗らず、一気に五階まで階段を駆け上がった。葵はまるでそれを予期していたかのように、階段の踊り場に立っていた。


 怒りを含んだ葵の表情に向かって、彼女は早く説明したくてたまらなかった。


 葵はプロレスの衣装を着たマリハを見て、表情が少し和らぎ、上着とバッグと靴を受け取り、彼女を押すようにして再びオーディション会場へと連れて行った。


 ドアが閉まった。


 他にオーディションを受ける俳優はもういなかった。彼女だけが、先ほどの三人のキャスティングディレクターと向き合っていた。


 キャスティングディレクターは率直に尋ねた:


「さっきのプロレスの試合に上がっていたのは君だね。」


 マリハはうなずいた。


 右側に座っていた先生が彼女をじっくりと観察し、さらに尋ねた:


「これらの動作は体系的に実戦練習したことがあるのか?」


「いいえ、ございません、先生……さっきの試合が……私にとって初めての実戦練習でした。」マリハは答えた。


 三人の先生は顔を見合わせ、目には信じられないという表情が浮かんでいた――全く系統だった訓練を受けたことのない素人が、いきなりプロのリングに上がって、このレベルを達成するとは。


 余計な議論はなく、キャスティングディレクターはペンを机に置き、顔を上げてマリハに一言言った:


「君に決めた!」

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