第十話 彼女についていけばいい
マリハが答える間もなく、秋岡いずみは立ち上がり、彼女を地面から引き起こした。
最初の一撃は正面からの押しのけだった。マリハは秋岡の手のひらが向かってくるのを見て、体が本能的に硬直し、反応する間もなく、押されて三歩後退し、背中がロープにぶつかって跳ね返された。
二撃目は肘打ち。秋岡の前腕が振り抜かれた時、マリハは今度こそ覚えていた――その勢いに任せて後ろに座り込む。彼女が尻もちをついた瞬間、キャンバスの弾力が確かに衝撃の大半を吸収してくれたが、尾てい骨に鈍い衝撃が走った。
なかなか痛かった。
裂けるような痛みではなく、鈍く、骨の隙間から染み出るような痛みだった。胸は平気だったが、下半身には強い痛みが残っていた。、彼女は地面に座り込みながら歯を食いしばり、マスクの下の顔は歪んでいた。
彼女はゆっくりと立ち上がり、腰を揉みながらリングの隅へと下がった。キャンバスを踏みしめるたびに鈍い音が響き、一歩ごとに尾てい骨が痛んだ。彼女はコーナーポストのそばまで下がり、背中を冷たい鉄柱に預け、両手を両側のロープにかけた。
秋岡いずみはリングの中央に立ち、呼吸を整え、歩み寄った。
まずは小走り、そして加速。
マリハはコーナーポストに張り付き、秋岡いずみの影が近づいてくるのを見て、体が無意識に緊張した。秋岡が目前に迫った瞬間、両手で彼女の腰を掴み、ぐっと押し下げた。マリハの膝が曲がり、まだ体勢を整える間もなく、その手がさらに上に持ち上げ、彼女を宙に浮かせた。
足が地面を離れ、マリハは本能的にロープに足をかけた。ロープが足元で揺れ、彼女は両腕を広げ、手にしたロープに頼ってかろうじてバランスを保った。
秋岡いずみは手を離し、二歩後退した。
彼女はマリハに向き直り、両足を開いて立ち、両手を微かに広げ、ロープの上で揺れる白い影を見つめた。
その姿勢の意味は明らかだった。
クロスボディ――跳べ!
彼女は歯を食いしばり、足を蹴って、全身を秋岡いずみに向かって飛ばした。体は空中で水平に広がった。これは彼女が動画で一番多く見た動作で、頭の中で何十回も反芻していた。
落ちる角度がずれていた。本来なら横になって秋岡の肩と胸にぶつかるはずの体が、相手の腕をかすめて斜めに落ちていった。
秋岡いずみの反応は非常に速かった。彼女はその勢いに身を任せて横向きになり、肩を沈めて彼女を受け止めたが、二人の重心は狂っていた――秋岡は斜め後方に二歩よろめき、膝が砕け、二人は一緒にリングに倒れ込んだ。まるで勢いに押し倒されるかのように、マリハの体がちょうど秋岡の胸の上に横向きに覆いかぶさり、その姿は意外にも決まって見えた。
観客席からどよめきが起こった。
マリハはその勢いで顔を上げ、秋岡いずみの右足をロックした。
勢いよく顔を上げた瞬間、彼女のマスクが衝撃で鼻筋に沿って滑り落ち、ぱたんとキャンバスに落ちた。
視界が一気にクリアになり、照明がまっすぐ瞳に突き刺さった。彼女は二度瞬きをし、まだそれを拾う間もなく、舞台下から白い光が走った。
シャッター音が観客のざわめきをかき分けて、彼女の耳に届いた。
彼女の心臓がどんと沈んだ。
彼女は慌てて手を伸ばしてマスクを拾い上げ、頭に被り直し、紐を締め直した。指先は慌てて震えていた。
二十分が経過した。
通路の入り口から黒い影が飛び出してきた。
マリハはそれが誰かを見る間もなく、一つの手が彼女の手首を掴んだ。次の瞬間、彼女はリングから引きずり降ろされた。それほど痛くはなかったが、またしても反応できなかった。
彼女は体勢を整えて顔を上げると、見覚えのある顔に直面した。
安藤レイナ。
彼女がこの数日間、何度も何度も動画で見ていたあの人、あのプロレスの動作が鮮やかで、反撃のたびにマリハが拳を握りしめずにはいられなかった人だ。
レイナの手は依然として彼女の手首を握りしめ、指先が微かに震えていた。彼女の唇が動き、何かを言いかけたが、結局は強くうなずくだけだった。その表情には、緊張の後の安堵、言葉にできない感謝、すべての感情がその瞳に詰まって、はっきりと輝いていた。
マリハは喉が詰まった。彼女が何度も何度もビデオで見てきたこの人が、今まさに自分の手を握っている。なんてことだ。




