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【第8話 殺すなよ】

カン、カン。プシュー。

夜の工場に音が響く。健が手を動かしている。慎二は少し離れて腕を組んだまま見ている。

健の手が止まる。工具を置く。少しだけ車体を見る。

「……これでええやろ」

低く言う。慎二は頷くだけや。前に出る。車を一周する。

黒のヴィッツ。どこにでもある車や。

慎二はボンネットを軽く叩く。それ以上は触らん。


「……ほな」


「シミュレーションしとこか」

健はウエスで手を拭く。

「22時。マンション入る」

健が顔を上げる。

「早ないか」

慎二は少しだけ笑う。

「遅なって、出入り減ったら、オートロック入られへんやろ」

健は少し考える。

「……せやな」


慎二は車から視線を外さんまま言う。

「俺は中入る」

短い。健は黙る。

「お前は一旦、十三戻れ。送迎の出るタイミングで動け。先回りして、戻って、車で待機」

健は何も言わん。頭の中でなぞっている。

動き。時間。ズレたら終わりや。

「……分かった」

短く言う。


健が口を開く。

「……ええか」

慎二は立ち止まる。振り返らん。

「やりすぎんなよ」


「殺すなよ」

低い声や。

工場の中が、静かになる。

慎二は何も言わん。少しだけ顎を引く。それから——

「分かってる」

短い。

それだけやった。

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