【第6話 二人だけの秘密】
十三のネオンが濃くなる。
店の前には、女が数人立っていた。その中の一人が、慎二に気づく。
「あー」
すぐに近寄ってくる。
「この前、指名してくれんかったやろー」
笑いながら言う。慎二も軽く笑う。
「悪い悪い。手持ち無くてな」
適当や。女は呆れた顔をする。
「今日はどうしたん? うち来るの?」
少し距離を詰める。慎二は少しだけ間を置く。
「しゃあないなー。呼び込みされたから入るか」
女が笑う。
「なんそれ」
「指名はせんけどな」
わざとらしく笑う。女は少しだけ口を尖らせる。
「はいはい。ほな、うちもまたセットに行くわー」
あっさり店の方へ戻っていく。慎二はそれを一瞬だけ見た。それだけや。そのまま店に入る。
「いらっしゃいませ」
ボーイが寄ってくる。
「一名様ですか?」
「一人や」
少しだけ間。
「誰かご指名は?」
慎二は軽く周りを見る。ほんの一瞬だけ。それから——
「ミカで」
あっさり言う。
前より奥の席に案内される。しばらくして、ミカが来る。
「こんばんは。来てくれたんですね」
慎二も笑う。
「言うたやろ」
グラスが当たる。
「かんぱい」
「前に、誕生日って言うてました?」
「あー、言いましたっけ。覚えてたんですね」
「そらな。いつなん?」
「来月です」
「何日?」
「……十七日」
「へぇー」
「で、いくつになるん?」
ミカが止まる。
「女性に年齢聞くなんて」
空気が張る。
「いやいや、そんなつもりちゃうねん」
慎二はすぐに続ける。
「誕生日ケーキのロウソク何本いるかなー思って」
ミカが吹き出す。
「失礼やなー」
空気が戻る。
「バラの花もな。何本用意したらええか分からんし」
ミカが笑う。
「嬉しいわー。けどね、うちはプレゼントより、たまに顔出してくれるだけでええんよ。ほんまに」
ナンバーワンの理由が分かる。
慎二が言う。
「さそり座やーん」
「違います」
「え、ちゃうん? 何座なん?」
「さそり座です」
「合ってるやんけ」
二人とも笑う。
「名前、何てお呼びしたらいいですか?」
「タカシ」
「じゃあタカちゃん」
ミカは少し声を落とす。
「タカちゃん優しいから、ほんとのこと教えてあげる。店からは言うたらあかんって言われてるんやけど」
「二十八。お店では二十六ってことになってるから」
「二人だけの秘密ね」
何人と秘密にしとんねん。
頭の中でだけ思う。顔には出さん。
「そっか」
それだけや。
「誕生日の日はな、太客さんらで混んでそうやから、また顔出さしてもらうわ」
ミカは笑う。慎二も笑う。
それで十分やった。




