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【第4話 距離は詰めへん】

十三のネオンは、夜になると一気に濃くなる。

店の前には、女が数人立っていた。それぞれが客を待っている。笑っているやつ。スマホを見ているやつ。目だけで客を追うやつ。

その中の一人が、慎二に気づく。

「あ」

すぐに寄ってくる。

「来てくれたーん」

あのときの女や。慎二は軽く手を上げる。

「おー。ここやったんかー」

看板を見上げるふりをする。

「探したでー」

適当や。女は笑っている。

「うそやん」

慎二は肩をすくめる。

「今日はな」

少しだけ声を落とす。

「手持ちも少ないし、さくっとフリーで入るわ」

女の顔が少し曇る。

「はぁ? 指名してや」

半分本気や。慎二は笑う。

「また今度な」

振り返らへん。そのまま店に入る。

店の中は、外より暗い。音と光だけが強い。

席に座ると、すぐに女が来る。

「いらっしゃいませー」

隣に座る。グラスが当たる。

「かんぱーい」

軽い音や。女はすぐに距離を詰めてくる。

「お兄さん、初めて?」

「まぁな」

適当に返す。視線は別の方向や。店の奥。あそこだけ空気が違う。

しばらくして、女が入れ替わる。今度は少し落ち着いた女や。

「こんばんはー」

ゆっくりと座る。

「今日バタバタしてんねん」

「なんかあんの?」

「誕生日」

その瞬間や。

ヒールの音が近づく。

「お待たせしました」

顔を上げる。

ミカや。

セミロング。長身。色白。切れ長の目。派手やない。せやのに、目が離れん。周りの女とは、はっきり違う。

「ボーイさんから聞いたんですけど」

ミカが軽く笑う。

「ナンバーワンって誰、って聞きはったとか」

柔らかい声や。せやけど、逃がしてへん。

慎二は一瞬だけ止まる。すぐに笑う。

「ちょっと気になってな」

「そうなんですね」

それだけや。

「今度、指名してもええかな」

「もちろんです。お待ちしてますね」

ミカは名刺を差し出す。慎二はそれを受け取る。

ミカ。それで十分やった。

店を出ると、夜の空気が少し軽い。

慎二はすぐには動かへん。通りの端で、入口を見張る。

少し離れた場所。健はバイクの上で、エンジンを切ったまま待っていた。

街の音だけが流れている。人の声。ヒールの音。遠くの信号。

自分が何をしているのか、分かっている。せやのに、体は動いていた。

——来た。

ミカや。

客と店の前で別れる。そのまま送迎の車へ向かう。黒いワンボックス。運転手が乗る。女が数人、続けて乗り込む。五人ほどや。ミカは最後や。

ドアが閉まる。エンジンがかかる。

その瞬間、携帯が一度だけ震えた。

慎二からや。

健はエンジンをかけた。

ワンボックスが動く。少し遅れて、バイクも動く。

距離は詰めへん。せやけど、見失わへん。

それでええ。

そう言い聞かせながら、健はアクセルを握り続けた。

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