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【第43話 一人でやれよ】

白い診察室。消毒液の匂いが、やけに強い。

医者がレントゲン写真を指でなぞる。

「肋骨、二本ヒビ入ってますね」

慎二は顔をしかめる。

「鼻骨は大丈夫やね。打撲やな」

カルテに目を落としながら続ける。

「首はムチ打ち。変な寝方したんか?」

軽く笑う。

「まぁ……軽いわ」

慎二は何も言わない。

「とりあえず、肋骨に巻くコルセットと、湿布出しとくから」

診察は、あっさり終わった。

待合室。プラスチックの椅子が並ぶ。テレビの音だけが、ぼんやり流れている。

慎二は脇腹を押さえながら言う。

「ヒビやわ」

指で、自分の肋をなぞる。

「ここ……と、ここ」

息を吸うだけで、顔が歪む。

「しばらく、息するのも痛いな」

健は横で聞いている。腕を組んだまま。

「まぁ……それぐらいで済んで良かったわ」

慎二が笑う。

「ヘルメット被っててよかった」

少し間を置く。

「頭、かち割られてるとこや」

健は視線を落としたまま言う。

「……もう懲りたやろ」

慎二はすぐに答える。

「いや」

健が顔を上げる。

「取るまで終われん」

静かな声。

健はしばらく何も言わない。やがて、小さく息を吐く。

「上手く行っても、失敗しても」

慎二を見る。

「終わりや言うたやろ」

少しだけ間が落ちる。

「やるなら……一人でやれよ」

その言葉は、静かに落ちた。

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