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【第43話 一人でやれよ】
白い診察室。消毒液の匂いが、やけに強い。
医者がレントゲン写真を指でなぞる。
「肋骨、二本ヒビ入ってますね」
慎二は顔をしかめる。
「鼻骨は大丈夫やね。打撲やな」
カルテに目を落としながら続ける。
「首はムチ打ち。変な寝方したんか?」
軽く笑う。
「まぁ……軽いわ」
慎二は何も言わない。
「とりあえず、肋骨に巻くコルセットと、湿布出しとくから」
診察は、あっさり終わった。
◆
待合室。プラスチックの椅子が並ぶ。テレビの音だけが、ぼんやり流れている。
慎二は脇腹を押さえながら言う。
「ヒビやわ」
指で、自分の肋をなぞる。
「ここ……と、ここ」
息を吸うだけで、顔が歪む。
「しばらく、息するのも痛いな」
健は横で聞いている。腕を組んだまま。
「まぁ……それぐらいで済んで良かったわ」
慎二が笑う。
「ヘルメット被っててよかった」
少し間を置く。
「頭、かち割られてるとこや」
健は視線を落としたまま言う。
「……もう懲りたやろ」
慎二はすぐに答える。
「いや」
健が顔を上げる。
「取るまで終われん」
静かな声。
健はしばらく何も言わない。やがて、小さく息を吐く。
「上手く行っても、失敗しても」
慎二を見る。
「終わりや言うたやろ」
少しだけ間が落ちる。
「やるなら……一人でやれよ」
その言葉は、静かに落ちた。




