【第37話 ロイヤルコート野里】
タクシーは二号線へ出て、そのまま梅田方面へ走り出した。
黒のZRXは、一台挟んで後ろにつく。詰めない。離しすぎない。テールランプを視界に入れたまま、流れに乗る。
神崎川を越える。御幣島の交差点も、そのまま通過する。
どこまで行くんや――
慎二は前を見たまま、心の中でつぶやく。
気づけば、見慣れた景色に変わっていた。
地元。
野里を過ぎる。牛丼屋の明かり。外車ディーラーのショールーム。
その先で――
タクシーのウィンカーが左に点く。
慎二はスピードを落とす。急がない。そのまま少し先で減速し、ゆっくりと止まる。首だけを動かし、左をのぞく。
タクシーはさらに奥へ入る。二つ目を、また左折。
慎二はタイミングを見て、バイクを滑らせる。音を立てないように。無理をしない。
路地の先で、ハザードが点滅しているのが見えた。タクシーが止まっている。
千秋が降りる。周囲を気にする様子はない。そのまま歩き、マンションの中へ消えていく。
「ロイヤルコート野里」
表札を確認する。
五階建て。各フロアに四部屋。一つひとつが広い造り。
駐車場に目をやる。
ベンツ。BMW。ドイツ車が並ぶ。LEXUS。MASERATI。その隙間に、フィアット500やMINI。セカンドカー。
「……金持ちマンションか」
小さくつぶやく。
入口には防犯カメラ。中はオートロック。無理に入る構造ではない。部屋数は少ない。出入りも限られる。
張るなら、ここ。
黒のZRXのエンジン音だけが、静かに残っていた。




