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【第31話 次で終わりや】
「……アホか」
ぽつりと落とした声には、力がなかった。
しばらくの沈黙。工具の先から、ぽたりと油が落ちる。
健はそのまま視線を下げたまま、動かない。やがて、小さく息を吐く。
「……分かった」
慎二の視線が上がる。
健はゆっくり顔を上げる。
「しかし、条件がある」
低く言う。その目は、さっきまでとは違っていた。もう迷っていない。
慎二は一歩、近づく。
「なんや」
短く聞く。
健は間を置く。言葉を選ぶように。
「次で終わりや」
はっきりと言い切る。
「しくじったら、そこで終いや」
視線を逸らさない。
「逃げるも何も、全部終わりや」
慎二は黙って聞いている。
健は続ける。
「段取りは、全部俺が決める」
「勝手な動きはすんな」
「少しでもおかしい思ったら、引く」
短く、区切る。
「ええな」
その一言が、重く落ちる。
慎二はしばらく黙る。やがて、小さく頷く。
「……分かった」
だが、その目の奥には、まだ熱が残っていた。




