表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/71

【第26話 横流すなよ】

「コニチワ」

シャッターの隙間から、クォンが体を滑り込ませた。外の光が一瞬だけ差し込み、すぐにまた陰に戻る。

健は奥でしゃがみ込んだまま、手を動かしている。工具の音だけが、乾いたリズムで響く。

クォンはゆっくりと中へ進み、視線を巡らせた。

油の匂い。湿った空気。その奥に、二台の車が並んでいる。

黒のヴィッツ。その横に、シルバーのマークX。

クォンの足が止まる。

「オオ……ドッチモ、ヨウ使ッタナ」

軽く笑う。健は顔を上げない。

「……ああ」

短く返す。

クォンはヴィッツのボンネットを指で叩く。

「コレモ、アレモ……ウチカラ出シタヤツナ」

健は何も言わない。否定もしない。それで十分やった。

「デ、ドウスル?」

健はスパナを置き、ゆっくり立ち上がる。二台を一度見てから、短く言う。

「両方とも、パーツ取った後で解体してくれ」

クォンの眉がわずかに動く。

「……リョウホウ?」

健は答えない。視線だけで示す。

クォンは小さく笑う。

「カエシテ、バラスカ」

振り返る。

「グェン」

シャッターの外に声をかける。すぐに、影が動く。外で待っていたグェンが中へ入ってくる。二台の車を見て、静かに頷く。

クォンが続ける。

「キシワダ、モッテイク?」

健は作業台から偽造プレートを取り上げる。

「……これ、つけとけ」

クォンは受け取り、軽く確認する。

「ヨウイ、ハヤイナ」

健はポケットから札束を取り出す。無造作に差し出す。

「ほな、これで」

クォンはそれを受け取り、ざっと数える。

「……ニジュウマン」

小さく頷く。

健は一歩だけ近づく。

「あと、横流すなよ」

クォンは一瞬だけ目を細める。すぐに笑う。

「ワカテル、ワカテル」

軽く手を振る。

だが、その目は笑っていない。

グェンはすでに工具を手にしている。二台の車に歩み寄る。無駄な会話はない。

金属音が、静かに響き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ