【第23話 ライターの行方】
朝九時。大阪府警大淀署に、捜査本部が立ち上がった。
会議室には捜査員が集まり、ざわめきが広がっている。資料が配られ、椅子が引かれる音が重なる。
やがて、前に立った男が口を開いた。
「今回の件やが……」
ざわめきが止まる。
「吹田のと、同じや」
空気がわずかに変わる。
「狙われたのはキャバ嬢」
「マンションの入口で接触」
「そのまま車で逃走」
淡々と並べられる。
「被害額は一万五千」
誰かが小さく息を吐く。
「……少なすぎるな」
前の男は頷く。
「恐らく、過少申告やろ」
資料をめくる音が響く。
「同じヤツか、模倣犯か……今はまだ分からん」
前の男が言う。
「ただ、同じやったら厄介や」
視線が一度、全体をなぞる。
「吹田との合同本部、立てなあかん」
短い沈黙。
「とりあえず整理する」
声が少しだけ低くなる。
「マンションとその周辺の聞き込み」
「周辺の防犯カメラ解析」
「Nシステムでの追跡」
「キャバクラへの聞き込み」
ひとつずつ、区切るように並べていく。
「それと――」
わずかに間を置く。
「犯人のもんか分からんが、現場近くにライターが落ちてた」
空気が少しだけ動く。
「被害者の勤めとるキャバクラのや」
資料をめくる手が止まる。
「被害者は知らん言うとる」
その一言で、静けさが落ちた。
ただの強盗ではない。
そんな空気が、ゆっくりと広がっていく。
前に立つ男が、最後に視線を上げた。
「ほな、各班の班長に従って動いてくれ」
一拍も置かず、続ける。
「今日の十八時、戻って会議や」
椅子が引かれる音が一斉に重なる。
ざわめきが戻る。
捜査は、動き出した。




