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【第16話 後は下見やな】

ある日の二十二時。

「おぅ」

慎二が車に寄りかかりながら声をかける。

「あれ、もうクラウンもMASERATIもないんか」

「あぁ、もう終わったから返した」

「そんで、これか」

視線の先には、代車として出していたマークXが置かれていた。

「行くか。ちょっとラーメンでも食お」

「わかった」

店を出たあと、慎二がぽつりと呟く。

「久しぶりに、こってり食うたわ。若い時に食うた時は衝撃やったけどな」

誰に向けるでもなく、一人でしゃべる。

南方。キャバクラ近くの路地で、健は車を停めた。慎二は様子を見るため外へ出る。

時間が流れ、零時を過ぎたころ。店から数人の女性が、運転手と黒服に挟まれながらビルを降りてきた。そのまま白のハイエースに乗り込んでいく。

だが、ナンバーワンのシホの姿はなかった。

「……ん」

慎二の目が細くなる。

やや遅れて、黒服とシホが降りてくる。黒服が迎車のタクシーを呼び、シホを中に入れてドアを閉める。軽く頭を下げる。

慎二はその一連を見届け、車へ戻る。助手席に乗り込みながら言う。

「健坊、タクシーや」

エンジンがかかる。タクシーは新御堂筋を南へ向けて走り出す。その後ろ、間に一台挟んでマークXがつく。

信号が変わる。黄色から赤へ。

「いけ」

慎二が低く言う。健はアクセルを踏む。

ギリギリ、タクシーと同じタイミングで交差点を抜けた。

慎二がバックミラーを見る。赤色灯は光っていない。

「危なかったのー」

小さく息を吐く。

健は前を見たまま言う。

「バイクにしたらよかったか」

慎二が首を振る。

「いや、お前にばっかり申し訳ないやろ」

タクシーは淀川を越えたところで速度を落とし、右へ寄る。そのまま中津方面へと降りていく。マークXは距離を取りながら追う。

道は入り組み、人通りも車も減っていく。

「……バレるか」

慎二が小さく呟く。

やがて、川沿いに白い建物が見えてきた。十階ほどの高さ。新しいマンションではないが、小綺麗に整っている。

タクシーはその白いマンションの前で停まった。

健は速度を落とし、そのまま通り過ぎる。ミラー越しに様子を追う。

シホが降りる。料金を払い、軽く頭を下げる。そのままエントランスへ向かい、マンションの中へと消えていった。

タクシーはすぐに走り去る。

「よし」

慎二が短く言う。一拍置いて、続ける。

「後は下見やな」

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