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【第10話 三万て】
翌朝。
眠れへんまま、朝を迎える。時計は六時を回っている。テレビをつける。
しばらくして——ニュースが始まる。
『十八日未明、大阪府吹田市のマンションで、住民の女性が何者かに襲われる事件がありました』
『女性は病院に搬送されましたが、命に別状はないということです』
『警察によりますと、女性はエレベーターを待っていたところ、背後から突然襲われ、現金およそ三万円が入ったバッグを奪われたということです』
『被害に遭ったのは、飲食店店員の佐々木美樹さん(35)です』
『警察は強盗殺人未遂の疑いで捜査本部を設置し、逃げた犯人の行方を追っています』
同じ映像が繰り返される。
雨に濡れたマンション。規制線。誰もおらんエントランス。
健は画面を見たままや。
携帯が震える。画面を見る。出る。
「……見たか、ニュース」
「見た」
短く返す。少し間。
「殺人未遂って言うてるの、気になるな」
「……いや」
「年齢や」
黙る。
「アイツ、二十八言うとったのに」
少し間。
「……三十五やったな」
小さく返ってくる。
「アホか」
短い。
また間が空く。
「……それより」
「現金、三万て」
向こうは何も言わん。
健はテレビを見る。同じ映像がまだ流れている。
「……この二千万は」
言葉が止まる。
「どういう事や」
テレビの音だけが残る。通話は続いている。どっちも、切らへん。




