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男の娘魔王様の如何ともし難い日常 〜異世界化した未来の地球に転移した魔王は姫になる〜  作者: 和三盆光吉


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10話



 魔王の従者ユートは青い髪をした巨人族の美少年だ。

 魔族数十万年の長い進化の歴史の中で、共通の祖先を持ちながら少し違った進化を遂げた数多の少数民族達がいる。

 その中の一つが身長が2メートルを大きく超える巨人族。


 巨体から生み出される膂力。魔族である証の魔法力。

 2つを併せ持った巨人族は人族との戦争で多いに活躍して、魔王と共に戦線を支え続けた。




「魔王様よ、ちょっと良いかい」


 とある戦場。生気なく項垂れて、ただ歩く魔王軍の兵士達を、魔王は地面に座って眺めていた。巨人族の戦士は、そんな魔王の隣に腰掛ける。

 

 魔族軍は負け戦の直後だった。


 圧倒的な数で押す人族。

 魔法力で劣る人族の使う大砲や銃は、集団戦術で大きな力を発揮する。なまじ魔法力が高い故に魔族が切り捨てた火薬兵器は、ドクトリンの違いによって魔族を苦しめていた。


「戦士ベベル、何か?」


 偉丈夫の美青年魔王は戦士ベベルを見上げる。お互い地面に座り込んでいても、巨人族は見上げるほど大きい。

 2人は凸凹と並んで座り、悲壮な列を眺める。


「今回は派手に負けたな。こりゃ、撤退も難しいぞ」


 戦士ベベルは顎髭を擦りながら、言葉とは逆にニカリと笑う。土で汚れた髭面、埃と返り血で汚れた鎧と服。浮浪者の如き姿だが、巨人族も美形魔族の一種なので、戦士ベベルの笑った顔もイケメンだ。


「そうだな。しんがりは我が指揮を執る。悪いがベベルにはつき合ってもらうぞ」


 その日の一戦。人族は新兵器、ライフルを投入した。

 先込め式で単発なのは従来品と変わらない。

 だが射程と直進性と威力は段違い。

 ライフルの存在を知らなかった魔族軍は、数の差の前に大敗を期したのだ。損害は全体の3割。戦列を維持できない、軍事的な全滅である。


 魔王は瓦解した軍をなんとか統率して撤退したが、人族は好機とばかりに激しく追撃する。このままでは軍の消滅も有り得る。絶体絶命の危機だ。


「ぐはは! むしろ血が滾るわ、望むところよ!」

「ベベル。お前がいてくれて助かる」

「湿気た事を言うな魔王様! 巨人族は戦士の種族。戦いは娯楽なのよ。がはは!」


 人族の追撃を防いで本隊を逃す。

 一息つければ軍を再編して、新兵器ライフルへの対処法を生み出せる。一人でも多く兵を逃せば、巻き返して人族に勝利する日も夢ではない。その為に、今は誰かの犠牲が必要であった。


「だがな魔王様」

「おん?」

「しんがりの指揮を執るのは俺だぜ」

「なにを言う。我には魔王としての責任がある」


 戦士ベベルは上から魔王の顔を覗き込む。

 目を合わせ、それから魔王の背中をバンと叩いた。


「痛った! 何をするこの野郎!」

「がはは! 何が責任だ、笑わせやがるぜ!」

「なんとだ!」

「責任って言うならよ、軍を再編して人族を倒して、魔族を守ってこその責任だろうが。こんなつまらん撤退戦で死ぬのは責任でも何でもない。責任放棄だ。違うか?」

「うっ」

「俺に任せろや。必ず本隊が逃げる時間を稼いでみせる。だから魔王様よ、仇は取ってくれよ」


 戦士ベベルは魔王の肩を抱いて笑った。

 そこには諦めも悲壮感もない、漢の覚悟だけがあった。


「すまん、ベベル」


 魔王は涙を堪えて頭を下げる。


「だが、一つだけ頼みを聞いて欲しい」


 魔族全体の為に死にゆく戦士の願い。否などあろうはずもない。


「言ってくれ。無理をしてでも叶えよう」

「ありがてぇ、ならよ」


 戦士ベベルには一人息子ユートがいる。未だ幼い少年だ。そのユートだが、母親は既に故人。頼れる親類も戦争で皆死んだ。今は父親のベベルとユートだけの親子。ベベルが死ねば、いよいよ一人きりになる。


「親の俺から見ても、女房に似てかなりの美形だ。なんなら魔王様の愛人にしてもいいぜ」


 魔族は同性愛OK。けれど魔王はノンケ。愛人はない。


「息子の心配は無用だ。太陽の女神アマテ様と魔王の名に誓って、我が守り養育する。寂しい想いは決してさせない」

「へへ。ありがとよ。これで思いっ切り暴れられる」

「残されるしんがり隊の家族は我が庇護する。安心して死ぬが良い。いつか天上の園で会おう」

「応よ! 死ぬには良い戦場だ!」


 2人は立ち上がって強く手を握り合った。


「所でだな、息子のユートはマジ美形だぜ? 巨人族にしては小柄だし、戦いよりも植物が大好きな優しい子だ。愛人にしたら尽くすタイプだと思うんだが」


 父親が息子を魔王の愛人に勧める。それが魔族の文化。

 魔王はちょっとだけ引いた。


「いや、大事にするけど愛人はないわ。我、女の子が好きだし。童貞は好きな女の子で捨てたいし」

「けっ! ヘタレな魔王だぜ。お尻も知らないで人族を討てるのかよ」

「おい、お尻は戦争と関係ないだろう。取り消せ」

「嫌だね。どうせ息子の魅力に負ける時が来るんだ。天上の園でたっぷりと共寝の話を聞かせて貰うからな」

「そんな日は来ない!」

「がはは! 言ってろ! わはは!」


 戦士ベベルと決死隊による獅子奮迅の活躍により、魔族軍本隊は窮地を脱する。

 魔王の指揮のもと軍は再編され、ライフルへの対処戦術も編み出され、魔族軍の抵抗は更に数年続くのである。


 ◇◇◇◇◇


「ユート! ユート! ユート! 無事だったのか! 本当に良かった! 他の皆は? なぜユートはここにいるのだ? セレンティアスはどうした?」


 魔王は高身長巨乳美女ユーリのお腹に抱き着いて、シックスパックの腹筋に顔を埋めて泣いた。身長差的に、丁度おっぱいが頭の上に乗る感じ。


「ちょっとなんだい? 私はユーリ。ユートじゃないよ。エミリオ、亀吉、この子どうしたのさ?」


 支部長ユーリは当然困惑する。自分をユートと呼びながら泣きじゃくる、美少女みたいな美少年を無理に引き離して良いものかと悩む。


「ユート、我が分からぬのか? そうか、見た目が変わったから分からぬのか。仕方ないな。我だ、リムリアスだ」

「いや、リムリアスと言われても初対面なんだけど」


 エミリオと亀吉も魔王の側に立って、どうしたものかと思案する。


「亀吉、リムちゃんは何か思い出したっぽいな」

『はい。ユーリ支部長を誰かと間違えている様子ですね』

「見てないで助けておくれよ二人とも」

「もしかしてですけど、ユーリさんがリムちゃんのお母さんってオチですか?」

「そんな訳あるか! こんなに大きな子、何歳の時の子供だよ!」

「ですよね。でも、ユーリさんなら有り得るかも」

「エミリオ、ぶっ殺す」


 魔王はこの時、少々錯乱していた。

 魔族の未来を賭けた勇者との死闘。

 突然の異世界転移。

 帰れないであろう故郷。同胞達との永遠の別れ。

 魔族国を遥かに超える技術力を持った日本国の存在。

 人の一生で一度あるかないかという出来事が連続して起こり過ぎた。冷静でいろと言う方が酷である。


「え〜と、お嬢ちゃん。じゃなくて、亀吉の報告だと男の子? そろそろ離れてくれないかい?」


 ユーリは優しく魔王の肩に手を添える。出来るだけ穏便に、傷付けない様に、魔王を引き離そうとする。


「すまぬユート。この魔王、ガラにもなく取り乱した。許せ」


 魔王は未だ勘違いの最中。けれど魔王たる者、いつまでも情けない姿は晒せない。ぐっと気合を入れ、抱き着いたまま顔を上げてユーリの顔を良く見ようとした。


「うわっぷ。く、苦しい」


 おっぱいが目鼻口を塞いでしまう。


「離れりゃいいだろう。窒息するよ」


 そういえば、先ほどから頭の上が重いと思っていたのだ。柔らかいクセにやたら重い謎の二房。ユートには無かったはずのおっぱい。


「ユ、ユート、おっぱいを退かしてくれ。流石の我も、呼吸が出来ねば死んでしまう」

「仕方ないね。ほら」


 ユーリは自らのおっぱいを持ち上げて魔王をレスキューした。日本に転移してから2度目の救助である。


「ぷはぁ〜。助かったぞユート。して、今度はおっぱいが邪魔でお前の顔が見えん。外してくれ」

「おっぱいは胸にくっついているんだから、そりゃ無理だよ。ぼくちゃんが離れな」

「それもそうだな」


 魔王はユーリの腰をホールドしていた腕を解くと距離を取った。そしてユーリの顔を見上げる。夜間でも照明によって煌々と照らされた顔は、ホクロや毛穴までくっきりと分かった。


「ん? あれ? ユート?」

「だから私はユーリ。チバラキ県ハンター協会筑波支部長のユーリだよ」

「ユーリ? ユート? あれ? ユートはいつから巨乳美女になったのだ?」

「産まれた時から巨乳美女だよ。それで、ユートってのは誰さね?」

「あっ!」


 ようやく魔王は勘違いに気が付いた。

 目の前の青髪巨乳美女は、戦士ベベルの一人息子で魔王が可愛がった従者のユートではない。


「す、すまぬ! 髪の色と身長と雰囲気がそっくりだったので取り乱してしまった。レディに対して不躾な態度、本当に申し訳ない。オーガの霍乱だと思って許して欲しい」


 魔王は頭を下げてユーリに謝罪。


「別に良いけど。亀吉の報告だと、ぼくちゃんは転送事故の後遺症で記憶が欠落しているとか。すぐにデータベースで身元を照会するから中へお入り。それからユートとかセレンティアスとか、家族っぽいね。思い出した事も話しておくれ」


 魔王達はユーリの案内で艦内へ入る。

 そこは魔王の知る帆船とはまるで違い、明るく広い通路が続いている。


(灯りの魔法具より明るい。これでは昼夜が分からなくなる。通路も広くて高い。船内スペースを切り詰める必要がないのか?)


 太平洋戦争時の戦艦大和を例にとろう。

 あの時代は操船と戦闘の全てを人間が行っていた。

 細々とした全てを人間の労力で賄わなければならなかった。

 結果。戦艦大和の乗組員は3300人以上を必要とした。

 艦内はさぞや狭かった事だろう。


 変わって宇宙開拓時代になると、人の仕事の大半はAIに取って代わられる。戦闘艦の運用に必要な乗組員の数は大幅に減り、人が減ることで浮く空間は兵器や物資格納庫の拡張。或いは少ない乗組員がストレスを感じずに過ごせるゆったりとした空間創りに消費されるのだ。従って宇宙巡洋艦『筑波』の艦内は、船と言うより三ツ星ホテルの様な快適さを醸し出していた。


 魔王は見るもの全てが摩訶不思議。エミリオの袖をちょいちょいと引いて小声で尋ねる。


「船なのに総金属製なのか? ずいぶんと豪華な船だな」

「リムちゃん。僕は逆に、木製の宇宙艦艇を見た事がないよ」

「そうか。日本国は鉄資源が豊富なのだな」

「いや、全然。なんかリムちゃんと話が噛み合わないね。もしかして、結構記憶が戻ってきてる?」

「記憶は戻っておらん。馬鹿エミリオ。見れば分かるであろう。エミリオ馬鹿」


 しばらく歩くとユーリが艦内カートの前で止まる。

 広い艦内を徒歩で移動するのは面倒なので、カートに乗って談話室まで行くと言う。


「時間が遅いから人が少なくて助かるね」


 ユーリはエミリオに運転しろと指示を出す。自分は魔王と共に後部座席に座ると言う。


「嫌ですよ。僕はリムちゃんと一緒に座りたい」

「黙れロリコン」

「ロリコンは否定しません。でもリムちゃんは男の子だからロリコンにはなりません」


 エミリオは自らの主張に胸を張った。


「なお悪いわ。お前はいつからショタに鞍替えしたんだ」

「リムちゃんと出会ったその時からです。僕は生まれて初めて本当の恋を知りました」


 真顔で恥ずかしい告白をするエミリオに対して、ユーリも魔王も亀吉すらもドン引く。


「私は部屋に帰って休みたいんだ。変態の馬鹿な話に付き合うつもりはない、早く運転しろ」


 ユーリは容赦なくエミリオの尻を蹴る。


「あうっ!」


 何やかんやで談話室。

 部屋に入ると大きめのテーブルにゆったりとしたソファー。そしてぽっちゃりほんわかした若い女性が一人。もちろん巨乳だ。


「夜遅くまでお疲れ様です。ほんたら皆さんお座り下さい」


 ぽっちゃり巨乳女性に促さてソファーに座る魔王。隣には亀吉、対面にはユーリ。エミリオは立っていろと釘をさされる。


「ありがとう美和ちゃん。遅くまでご苦労さま」


 エミリオはぽっちゃり巨乳女性に気さくに話し掛けた。


「なんも、これが仕事ですから。エミリオさんこそ、メガナウマン象の納品ありがとうございます」

「どういたしまして。状態はかなり良いから、買い取りは色をつけてね♡」

「規定に則って、努力致します」


 魔王は謎の女性が気になる。後ろを振り返ってエミリオに問う。


「ハンター協会職員の伊藤美和さん。優しい女性ひとだから安心して」


 エミリオの紹介に、ニコリと微笑む伊藤美和。


「アニメのヒロインみたいに可愛い女の子だべ。大変な思いをしたみたいだども、もう安心だっぺ。私を頼って何でも言ってけろ」

「うむ。かたじけない美和殿。我はリムリアス。リムと呼んで欲しい」

「めんこいな〜。リムちゃんよろしく」

「美和殿も美しい。外見はもちろん、内面の美しさが表れている」

「やだ〜。お世辞の上手い女の子だっぺ」

「お世辞ではない。我はお世辞が苦手だ」

「あらま〜。うふふ」


 美和はニコニコと機嫌良く紅茶とクッキーを出す。

 魔王と美和は紅茶には砂糖とミルクが究極だとか、薔薇ジャムをたっぷり入れるのも至極だとか、クッキーはバタークッキーが至高だとか、紅茶葉を混ぜ込んだクッキーも悪くないとか、きゃぴきゃぴと打ち解けた所でユーリが切り出す。


「それじゃ、データベースで身元を検索するから、このタブレットのここを見てくれるかい」


 タブレットで網膜を読み取ると言う。加えて指紋も調べ、駄目押しにDNAも採取して調べると言う。日本国籍を持っていれば、99.99%身元が判明すると言う。


(無駄だがやらない訳にもいかぬ。素直に従おう)


 魔王は言われるままにした。

 十数秒後。


「該当無し。この子は日本国籍を持ってないよ」


 ユーリは困った顔で結論つけた。


「転送事故って本人は言ってるんだよね?」

「そうです」


 エミリオの肯定に、ユーリは「う〜ん」と唸ってしまう。


「外国から飛ばされて来たか、そもそも戸籍の無い隠された子供か。こりゃ厄介だよ」


 ハンター協会のデータベースは指名手配犯を捕まえたり、遭難者を保護する関係上、警察とリンクしている。それで身元が分からなければ、ハンター協会では手に負えない。しかしエミリオと亀吉には想定内の事態であった。


「ユーリさん良いですか」

「あん?」

「実はリムちゃんには特別な事情がありまして」

「なんだい?」


 エミリオは魔王が高位の超能力者だと伝える。加えて亀吉が超能力(魔法)の観測データを提出する。


「なんだいこりゃ! こんな事、有り得ない!」


 現実は創作よりも奇妙なり。

 ユーリがテーブルをバンバン叩いてどれだけ否定しようと、魔王の魔法は本物である。


「ユーリさん。僕はリムちゃんを守りたい。その為に実家の力を借りようと考えています」

「桜家の力かい。そりゃ、ぼくちゃんの特異性を考えれば妥当な判断だけど」

「本当は今すぐ連れて帰りたいんです。一時いっときも離れたくない。でも、いま連れ回せば誘拐事件になってしまう」

「だね。私が関与した時点で、この子はハンター協会が保護した形になるからね」

「そこでお願いがあります」

「言ってみな」


 エミリオは姿勢を正してユーリを見つめた。

 魔王は座りながらクッキーをサクサクしている。

 美和はいつの間にか魔王の隣に座り、魔王の黒髪を三つ編みして遊んでいる。

 亀吉はハンター協会のデータベースに接続して最新情報の更新中。


 少しばかりカオスな空間。


「僕が戻るまで一週間程度。リムちゃんを預かって下さい」


 エミリオは深く頭を下げた。


「預かるって言うか、エミリオには渡さないから」

「え?」


 たとえ異世界融合しようと、ここは法治国家日本。

 変態ロリコンが推定未成年を引き取れるはずがない。

 魔王の能力をかんがみて、エミリオの実家である桜家に身元保証を求めるのは良い判断であるが、それとエミリオの性欲は別の話。


「ぼくちゃんはハンター協会で責任を持って預かる。エミリオは心配しなくて良いよ」

「そ、そんな〜!」


 エミリオは半泣きで膝をついた。


「それで、ぼくちゃん」

「リムと呼んで欲しい、ユーリ殿」

「なら、リム」

「うむ」

「リムは自分の歳は覚えているかい?」

「32だ」

「そうかい。それじゃ、セレンティアスとユートって誰かな?」

「詳しくは思い出せない。すまん」

「ふ〜ん。全部嘘だね」

「我は案外、正直者だぞ」

「隠したい事がある。そうだね」

「思い出せない。黙秘したい」

「まあ、良いさ。話したくなったら話しておくれ」

「かたじけない」


 ユーリは紅茶を一口含み、最後の一枚となったクッキーをサクサク。


「あ、クッキー」

「リム、お聞き」

「う、うむ」

「日本では身元不明の未成年を保護した場合、行政が面倒をみる」

「うむ。国家として当然の務めであるな」

「リムは何処からどう見ても未成年だ」

「32歳だ」

「しかも高位の超能力者エスパーと来てる」

「それほどではある」

「身元不明の未成年で記憶喪失で超能力者で外国人かもしれない。これだけ揃えば犯罪者のいいカモだ」

「カモられるほどヤワではない」

「リムの身元引受人は私がなる。良いな」

「異存はない。良しなに頼む」

「後はエミリオの実家が上手いことやるだろう。こいつの実家は日本を支える四名家の一つ、桜家だ。任せれば適当な戸籍を作ってくれる。それまでは目立たないように」

「あい、分かった。悪者に目を付けられない為だな」

「理解が早くて良いね。それで、年齢は?」

「32歳」

「まだ言うか」


 年齢に関して魔王は嘘などついていない。外見上は女子中学生並であるが、正真正銘32歳のおっさんなのだ。


「さて、今夜はもういいだろう。私も美和も残業はここまで。リムには艦内の職員用個室を使わせる。美和、案内を頼む」

「はい。さ、リムちゃんこっちさ来っぺ」

「かたじけない、美和殿」


 魔王と美和は先に談話室を出る。お子様は寝る時間なのだ。そして残ったユーリとエミリオと亀吉は。


「エミリオ、いつまでいじけてる。鬱陶しい」

「はい〜、リムちゃん……」

「良いかいエミリオ、良くお聞き」

「はい〜」

「あの子、リムリアスは間違いなく訳ありだ」

「はい〜、そうですね〜」

「可能性として、デファ星人が送り込んだスパイバイオロイドの線もあり得る」

「そ、それはないです! 僕の下半身が反応してるんですから、絶対に天女ですよ!」


 エミリオの力説にユーリは嫌な顔をする。

 魔王を弁護する根拠がロリコンの下半身とか、軽蔑しかない。


「とにかく。あの子は私の監視下に置いて、怪しい行動がないか徹底的に見張る。エミリオも桜家の力で身元を調べておくれ」


 エミリオは不承不承の顔で頷いた。

 どの道、魔王を男の娘妻にする為には、身元調査と戸籍整理は通らねばならない道だからだ。


「出来るだけ早く戻ります。それまでリムちゃんの生活に掛かる費用は全額僕が負担します」

「あ? なんでだ?」

「極近い将来の妻ですから、夫として当然です」


 キリリとガチで話すエミリオに再びドン引きするユーリ。


「お前は真正のロリコンで同性には興味が無いはずなのに、まさか洗脳されたか?」

「言いがかりはやめて下さい。リムちゃんとの出会いは運命で、あの子だけ特別なんです。今でも男には一切興味はありませんよ。そもそもリムちゃんは男の娘のフリをしたお姫様です」


 ぶっ飛んだエミリオを心配したユーリは亀吉へ目配せする。洗脳状態か否かを調べる脳波チェックはしたのかとアイコンタクトする。

 すると亀吉は無言で頭を振った。つまり洗脳は無し。エミリオは素で魔王に一目惚れをして、素でド変態であると。


「はぁ〜。今日はもう疲れた。エミリオ、亀吉、ご苦労だった。解散だ」


 ユーリが席を立ち、エミリオと亀吉が続く。

 談話室の明かりが落とされ、静寂が訪れた。


 こうして魔王の筑波ハンター協会での生活が始まる事となった。





 お断り。

 戦艦大和は大和ホテルと呼ばれていたそうです。

 あくまで素人小説ですので、ツッコミはご勘弁願います。

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