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BURN BEAT  作者: 度肝抜造
第1章「NOIZ JAC結成編」
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5/21

第5話「ブラック・マジシャン」

BURN BEAT

第5話「ブラック・マジシャン」

――夕暮れ。

桜ヶ丘高校から少し離れた、使われていない倉庫。

その前に。

朝倉烈が立っていた。

周囲には、十人近い男たち。

そして。

その奥。

壁にもたれながら、一人の男が烈を見ていた。

三年生。

鋭い目。

短く整えられた髪。

制服の着こなしも乱れていない。

だが。

その男から漂う空気だけは――

他の連中とは明らかに違っていた。

「……お前が朝倉烈か」

「そうだけど?」

男がゆっくりと歩いてくる。

「俺は相馬」

「この辺りじゃ、俺の名前くらい聞いたことあるだろ?」

烈は鼻で笑う。

「知らねぇな」

周囲の男たちがざわつく。

「てめぇ……!」

「相馬さんに向かって……!」

相馬は手を上げる。

「いい」

男たちが黙る。

相馬は烈を見つめた。

「お前、二中の馬鹿壁だろ?」

「……」

烈の目が細くなる。

「その呼び方、嫌いなんだよ」

「そうか」

相馬は笑った。

「だが、面白い」

「何が?」

「一年で三年相手に喧嘩を売れる奴は、そういない」

烈は拳を鳴らす。

「それで?」

「俺たちの仲間になれ」

「……は?」

「ブラック・マジシャン」

相馬が名乗る。

「この辺りの不良は、ほとんど俺たちの傘下だ」

「その中でも俺は、この地域を任されている」

相馬は淡々と言った。

「支部長だ」

「つまり――」

烈は鼻を鳴らす。

「俺にお前の子分になれってことか?」

相馬の目が鋭くなる。

「そういうことだ」

「断る」

即答。

「理由は?」

「気に入らねぇ」

「何が?」

「お前の顔」

「…………」

一瞬。

周囲が凍った。

烈は腕を組む。

「それに」

「俺は俺の好きなようにやる」

相馬は少し黙る。

そして。

「……そうか」

静かに言った。

「なら――」

相馬が手を上げる。

「試してみるか」

烈が笑う。

「最初からそのつもりだろ?」

二人が向かい合う。

「行くぞ」

烈が踏み込む。

――ドンッ!!

地面を蹴った瞬間。

巨体が一気に加速する。

「速い……!」

周囲の男たちが驚く。

烈の拳が相馬へ迫る。

――ゴォン!!

相馬は紙一重でかわす。

そのまま烈の脇腹へ蹴り。

「ぐっ!」

烈の身体が横へ流れる。

「……やるな」

相馬は笑った。

「お前もな」

烈が再び突っ込む。

右。

左。

さらに右。

相馬はすべてをかわしながら、確実に烈へ打撃を入れていく。

「くっ……!」

烈が距離を取る。

「速ぇな……」

相馬は構える。

「力だけじゃ、俺には勝てないぞ」

「だったら――」

烈が拳を握る。

「力で勝てるまで殴る!」

「馬鹿が」

二人が同時に踏み込む。

拳。

蹴り。

肘。

互いの攻撃がぶつかり合う。

――ドンッ!!

烈の拳が相馬の肩を捉える。

「ぐっ!」

相馬が後退する。

烈が追う。

「どうだ!」

「……なるほど」

相馬が口元を拭う。

「噂以上だ」

烈が笑う。

「まだまだ!」

再び突撃。

しかし――

相馬が突然、横へ飛んだ。

「……?」

烈の拳が空を切る。

その瞬間。

背後から――

「ぐっ!」

何かが烈の背中に叩き込まれた。

烈が前へ吹き飛ぶ。

「なっ……!」

振り返る。

そこには。

金属バットを持った男。

「おい!」

烈が睨む。

相馬が淡々と言った。

「別に一対一とは言ってない」

「……!」

「喧嘩ってのはな」

相馬が歩いてくる。

「勝った奴が正義なんだよ」

烈が立ち上がる。

「汚ねぇ……!」

「そうか?」

相馬は笑う。

「これがブラック・マジシャンだ」

男たちが一斉に囲む。

烈が拳を握る。

「……上等だ」

一人。

二人。

三人。

烈が次々と殴り飛ばす。

「うおおおおっ!」

一人を投げ飛ばす。

二人目を壁へ叩きつける。

三人目を拳で吹き飛ばす。

しかし。

背後からまた攻撃。

「ぐあっ!」

倒れる。

「烈!」

――その声。

烈が顔を上げる。

倉庫の入口。

そこに。

藤堂隼人が立っていた。

「……隼人」

「何やってんだ、お前!」

隼人が歩いてくる。

「一人で来るなって言っただろ!」

「お前、言ってねぇだろ!」

「言ってなくても分かれ!」

「無茶言うな!」

二人が言い合う。

その間にも男たちが迫る。

隼人が振り返る。

「……ったく」

一人の男が殴りかかる。

隼人は身体をひねる。

拳を避ける。

そして。

――ドンッ!!

強烈な蹴り。

男が吹き飛ぶ。

「手は大事なんだよ!」

さらに。

回し蹴り。

二人目が倒れる。

「俺はギタリストだからな!」

烈が笑う。

「相変わらず蹴りばっかだな!」

「うるせぇ!」

隼人が笑う。

「お前は拳だけだろ!」

二人が背中合わせになる。

烈が拳を構える。

隼人が足を引く。

「……二人なら」

烈が笑う。

「負けねぇな」

隼人も笑った。

「ああ」

「やるぞ、烈!」

「おう!」

二人が同時に飛び出す。

――ドゴッ!!

烈の拳。

――バキッ!!

隼人の蹴り。

一人。

二人。

三人。

次々と男たちが倒れていく。

「何だ、こいつら……!」

「強すぎる!」

「一年だぞ!?」

相馬はその光景を黙って見ていた。

そして。

口元に笑みを浮かべる。

「……なるほど」

烈が最後の一人を投げ飛ばす。

「終わりだ!」

隼人が蹴りで相手を倒す。

「残るは――」

二人の視線が。

相馬へ向く。

相馬はゆっくりと拳を構えた。

「そうだな」

烈が前へ出る。

「隼人」

「ん?」

「こいつは俺がやる」

隼人が笑う。

「分かった」

一歩下がる。

「でも、危なくなったら入るぞ」

「好きにしろ!」

烈と相馬。

再び向かい合う。

今度は。

誰も邪魔をしない。

烈が突っ込む。

相馬も迎え撃つ。

――ドンッ!!

拳と拳。

互いに譲らない。

「うおおおおっ!」

烈が押す。

相馬が受ける。

「ぐっ……!」

そして。

烈の拳が相馬の頬を捉える。

相馬が吹き飛ぶ。

「……!」

だが。

相馬も立ち上がる。

口元から血。

それでも笑っていた。

「……最高だな、お前」

「俺もそう思うぜ!」

烈が笑う。

二人が再び激突する。

拳。

蹴り。

体当たり。

互いに何度も倒れ。

それでも立ち上がる。

やがて。

相馬の動きが止まる。

烈も膝に手をつく。

「……はぁ……はぁ……」

「……まだ……やるか?」

相馬が聞く。

烈は笑う。

「当たり前だろ」

しかし。

その瞬間。

隼人が横から口を挟む。

「烈」

「ん?」

「もう十分だ」

「……」

隼人は相馬を見る。

「こいつも限界だ」

相馬も苦笑する。

「……その通りだ」

烈は拳を下ろす。

「……そうか」

相馬は壁に背を預ける。

「朝倉烈」

「ん?」

「お前、面白いな」

「俺はお前の仲間にはならねぇぞ」

「分かってる」

相馬は笑う。

「だが」

「いつか考えが変わるかもしれない」

烈は鼻で笑った。

「変わらねぇよ」

隼人が烈の肩を叩く。

「行くぞ」

「ああ」

二人は倉庫を出ていく。

相馬はその背中を見送った。

「……朝倉烈」

そして。

「藤堂隼人、か」

小さく呟く。

「面白い奴らだ」

――同県

ブラック・マジシャン本部。

薄暗い部屋。

巨大な机。

その前に。

一人の男が座っていた。

ブラック・マジシャン総長。

全国の支部を束ねる男。

その手元に。

一枚の報告書が置かれている。

「……朝倉烈」

写真を見る。

続いて。

「藤堂隼人」

もう一枚の写真。

総長は静かに笑う。

「一年生で支部長を倒しかけたか」

側近が報告する。

「はい」

「朝倉烈は二中時代から有名な喧嘩屋です」

「藤堂隼人も、かなりの腕を持っています」

「二人とも、まだ一年生」

総長は報告書を閉じる。

「……惜しいな」

「何がでしょう?」

「この二人が、俺達の敵になることだ」

総長は立ち上がる。

「ならば――」

写真を机へ置く。

「敵になる前に」

「こちらへ引き込めばいい」

側近が頷く。

「接触させますか?」

「まだ早い」

総長は笑う。

「まずは周囲から探れ」

「二人の仲間」

「行動範囲」

「好きな場所」

「何に興味を持っているのか」

「すべて調べろ」

「了解しました」

側近が頭を下げる。

総長は窓の外を見る。

「朝倉烈」

「藤堂隼人」

「お前たちは――」

静かに笑う。

「ブラック・マジシャンに必要な人材だ」

そして。

その夜。

ブラック・マジシャンの各支部へ。

二人の少年について。

密かに情報が流れ始めた。

まだ。

烈も。

隼人も。

知らない。

自分たちの背後で。

巨大な組織が動き始めていることを。

BURN BEAT 第5話「ブラック・マジシャン」――完。


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