↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BURN BEAT  作者: 度肝抜造
第1章「NOIZ JAC結成編」
PR
2/21

第2話「バンドと女と美咲」


第2話「バンドと女と美咲」

――放課後。

私立桜ヶ丘高校。

屋上。

フェンス際に、朝倉烈と藤堂隼人が並んで座っていた。

二人の手には――

IQOS。

「……で?」

烈が煙を吐きながら隼人を見る。

「バンドって何だ?」

「何って……」

隼人は少し呆れた顔をする。

「バンドはバンドだよ」

「分かんねぇよ」

「楽器やって、歌って、女にキャーキャー言われるんだよ」

「……!」

烈の目が変わった。

「女に……?」

「ああ」

隼人はニヤリと笑う。

「バンドマンはモテるぞ」

「本当か?」

「本当だ」

烈は腕を組んだ。

「……それなら」

「ん?」

「やってもいい」

隼人が笑う。

「だろ?」

「で、俺は何やるんだ?」

「それはこれから決める」

「そうか」

烈は立ち上がった。

「じゃあ行こうぜ」

「どこへ?」

「バンドやるんだろ?」

「気が早ぇな……」

---

翌日。

昼休み。

校舎裏。

烈が一人、壁にもたれていた。

そこへ。

隼人がやってくる。

「おーい、烈!」

「遅ぇぞ」

「悪い悪い」

隼人が近づく。

そして。

「おい烈」

「ん?」

「お前どうせモテないだろうし毎日暇だろ?」

「……」

烈の眉が動く。

「なんだと!?」

「いや、だから――」

「おーまーえー!」

烈が隼人の首に腕を回す。

「ちょっとばかしジャニ顔で可愛い彼女がいるからってぇー!」

「いてててて!」

「シバいちゃる!」

「烈! 話を聞け!」

「知らん!」

「なんつー馬鹿力だ!」

隼人は必死に烈の腕を叩く。

「いてて、やめろ烈!」

「だったら謝れ!」

「だから話を聞けって!」

「……」

烈が腕を緩める。

「よし」

腕を組む。

「聞いてやろう」

隼人は首をさする。

「……ったく」

そして。

ニヤッと笑った。

「烈、実はな――」

「バンドマンは」

一拍。

「もてるのだ!」

「なっ……」

烈の目が見開かれる。

「なんだって〜!!」

「フッ」

隼人が腕を組む。

「どうだ?」

烈が詰め寄る。

「本当か?」

「ああ」

「看護師のお姉さんにも?」

「もちろんさ!」

「港区女子にも?」

「もちろんさ!」

隼人が親指を立てる。

烈の顔が輝いた。

「良いじゃないか隼人君!」

「おう」

「バンドやろうではないか!」

「そうこなくっちゃ!」

「ハッハッハー!」

「ちきしょー!」

隼人が拳を握る。

「羨ましいぜ烈君!」

二人は肩を組んで歩き始めた。

---

「で?」

烈が歩きながら聞く。

「どんなバンドにする?」

「ロックだな」

「ほう」

「ギターは俺」

「なるほど」

「ボーカルも俺」

「……」

「そして――」

烈は自信満々に胸を張る。

「俺!」

「お前しかいねぇじゃねぇか」

「?」

「いや、まだ他のメンバー決まってねぇから」

「そうか」

烈は納得した。

しばらく歩く。

「でもよ」

烈が突然立ち止まる。

「俺、ギターなんて弾けるのか?」

「知らん」

「歌は?」

「知らん」

「……」

烈は少し考える。

「まあ、何とかなるだろ」

「お前、本当に適当だな……」

---

二人が向かった先。

公園。

そこに、一人の少女がいた。

ベンチに座り、スマホを見ている。

茶色がかった髪。

明るい雰囲気。

少しギャルっぽい制服姿。

少女の名前は――

神崎美咲。

隼人の幼なじみ。

そして。

隼人の彼女だった。

「おーい、美咲!」

美咲が顔を上げる。

「あ、隼人」

「待った?」

「別に」

美咲は立ち上がる。

そして。

烈を見る。

「……この人?」

「ああ」

隼人が烈の肩を叩く。

「昨日話してた朝倉烈」

烈が胸を張る。

「朝倉烈だ」

「神崎美咲」

「よろしくな」

「うん、よろしく」

美咲は笑う。

そして。

「それで?」

「バンドの話でしょ?」

「そう!」

隼人が答える。

「俺と烈でバンドを組む」

「ふーん」

美咲が烈を見る。

「烈くん、楽器できるの?」

「できない」

即答。

「歌は?」

「分からん」

「……」

美咲は隼人を見る。

「本当にこの人で大丈夫?」

「大丈夫だって」

隼人は笑う。

「ガタイいいし」

「それだけ?」

「それだけ」

「……」

美咲は少し黙る。

「駄目だ……」

「ん?」

「こいつら……」

小さく呟く。

「最初から駄目だ」

「何でだよ!」

烈が突っ込む。

美咲は笑った。

「ごめん、ごめん」

---

「じゃあ、俺はギターとボーカルな!」

烈が言う。

「……」

隼人が黙る。

美咲も黙る。

「どうした?」

烈が二人を見る。

隼人が言った。

「いや、お前ドラム」

「…………へ?」

烈の顔が固まった。

「俺が?」

「ああ」

「ドラム?」

「そう」

「……」

烈の目が細くなる。

「お前」

「ん?」

「俺にギターやらせるんじゃなかったのか?」

「そんなこと一言も言ってねぇぞ」

「……」

烈が隼人を見る。

そして。

「だましたなぁぁぁ!」

「うわっ!」

烈が隼人をヘッドロックする。

「いてててて!」

「俺はギターとボーカルだろ!」

「誰もギターやボーカルやってくれなんて言ってねーだろ!」

「じゃあ何でバンドに誘った!」

「ドラムやってくれそうだからだよ!」

「ガタイだけで決めんなぁぁ!」

「なんつー馬鹿力だ!」

美咲は二人を見る。

「…………」

そして。

額を押さえる。

「駄目だ、コイツら……」

---

ようやく隼人が解放される。

「はぁ……はぁ……」

首をさすりながら。

「烈」

「何だ」

「ドラムってのはな」

隼人が真顔になる。

「人口が少ないからプロになりやすいんだ」

「……なに?」

烈の目が光る。

「本当か?」

「ああ」

もちろん――

嘘である。

「ドラム人口は少ない」

「だからプロになれる確率も高い」

「……」

烈が腕を組む。

「プロになれると言う事は?」

隼人は待ってましたとばかりに答える。

「金持ちになって――」

一拍。

「女をはべらせられるんだ!」

「なっ……」

烈の目が見開かれる。

「なんだと……?」

隼人が親指を立てる。

「ドラムは狙い目だぜ」

烈は震えた。

そして。

拳を握る。

「よぉーし!」

「やってやろうじゃねーかー!」

「隼人君!」

「ちきしょー!」

隼人が頭を抱える。

「羨ましいぜ烈君!」

その横で。

美咲は。

完全に呆れていた。

「……」

「……」

美咲の目が。

ゆっくりと血走っていく。

「……隼人」

「ん?」

「ちょっと聞いていい?」

「何?」

「烈くん」

「うん」

「そんなにモテたいの?」

「……」

隼人が美咲を見る。

そして。

美咲の目を見る。

「…………」

隼人の顔が引きつった。

「へっ?」

一歩下がる。

「美咲ちゃん?」

「何?」

「いや……」

「何よ?」

「……何でもないです」

烈はそんな二人を見て笑う。

「かっかっか!」

「どうした?」

「面白ぇな、お前ら!」

「烈……」

隼人が小声で言う。

「今は笑わない方がいい」

「何でだ?」

「俺にも分からん」

美咲が笑顔で拳を握る。

「隼人」

「はい」

「後でちょっと話そうか」

「…………はい」

---

三人はそのまま歩き出した。

烈は上機嫌だった。

「なあ隼人」

「ん?」

「プロになったら本当に女をはべらせられるんだよな?」

「……たぶんな」

「よし!」

烈は拳を握る。

「俺、ドラム頑張るわ!」

「その調子だ!」

美咲は二人の後ろを歩く。

「……本当に大丈夫かな」

そして。

小さく笑った。

「まあ……楽しそうだけど」

夕暮れの空。

三人の影が長く伸びていく。

この日。

朝倉烈。

藤堂隼人。

神崎美咲。

三人の物語が始まった。

まだ。

誰も知らない。

この三人から始まった小さなバンドが。

やがて――

六人の音を響かせることになるなんて。

BURN BEAT 第2話「バンドと女と美咲」――完。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。