↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BURN BEAT  作者: 度肝抜造
第1章「NOIZ JAC結成編」
PR
15/21

第15話「LIVE前夜」


BURN BEAT

第15話「LIVE前夜」

――夏。

初ライブまで、あと数日。

朝倉烈の自宅にある防音練習室では、今日もドラムの音が鳴り響いていた。

……ただし。

「隼人ぉぉぉぉっ!!」

練習室の外まで響く、烈の怒声もセットだった。

「なんだよ! うるせぇな!」

「なんだよじゃねぇ!! 俺の服、なんでお前が勝手に選んでんだよ!!」

「お前に任せたら、いつもの黒Tシャツ一枚で来るだろ!」

「ロックは気合いだろうが!」

「ステージ衣装は気合いだけじゃどうにもならねぇんだよ!」

「じゃあ脱ぐか!?」

「そういう話じゃねぇ!!」

隣で美咲が腹を抱えて笑っていた。

「もう、二人とも朝から元気すぎ!」

「美咲、こいつどうにかしろ!」

「えー? 烈はそのままでいいんじゃない?」

「ほら見ろ!」

「でも、隼人の言うことも分かるよ。せっかくの初ライブだし、ちょっとくらい格好つけようよ」

「……ちょっとだけだからな」

烈は腕を組んだ。

「変なヒラヒラとか、キラキラとかは絶対なしだ!」

「はいはい」

美咲は笑いながら、二人を引っ張っていった。

1.ステージ衣装を買いに行こう!

三人が向かったのは、駅前の衣料品店とロック系ファッションを扱うショップだった。

隼人は黒を基調にしたジャケットとアクセサリーを選び、美咲はショートジャケットにブーツ、ステージ映えする小物を次々と手に取っていく。

一方の烈は――。

「これでいいだろ」

手に持っていたのは、いつもと大差ない黒いTシャツだった。

「烈」

「なんだよ」

「それ、家にあるやつと何が違うの?」

「……生地?」

「知らねぇよ!」

隼人のツッコミが飛ぶ。

美咲は笑いながら、黒いノースリーブのトップスとダメージデニムを烈に押しつけた。

「はい、これ着てみて!」

「お、おう……」

試着室から出てきた烈を見て、隼人が腕を組む。

「……おっ。意外と似合うじゃねぇか」

「だろ?」

「いや、まだ何も言ってないから!」

美咲も満足そうに頷いた。

「うん! 烈、普段よりちょっとだけロックっぽい!」

「普段もロックだろうが!」

「喧嘩の方向性がロックなんだよ、お前は!」

「誰が喧嘩の方向性だぁ!」

結局、三人とも納得のいく衣装を購入した。

店を出る頃には、烈の両手に紙袋が増えていた。

「……服買うだけで、なんでこんな疲れるんだ」

「ライブは体力勝負だぞ、烈」

「お前にだけは言われたくねぇ!」

美咲の笑い声が、夏の街に響いた。

2.四曲を仕上げろ!

その日の午後。

三人は烈の自宅へ戻り、防音練習室に集まっていた。

ドラムセット。

ギターアンプ。

ベースアンプ。

そして、中央に置かれた譜面台。

そこには、ライブで演奏する四曲のセットリストが並んでいる。

相川七瀬「夢見る少女じゃいられない」

Avril Lavigne「Sk8er Boi」

BOØWY「NO. NEW YORK」

オリジナル曲「君にだけ、素直になれない」

烈はセットリストを見つめた。

「……四曲か」

「そうだな」

隼人がギターを構える。

「三曲のカバーに、俺たちのオリジナル一曲。これを最後まで通せるようにする」

美咲もベースを肩にかけた。

「それに、今日は曲だけじゃないよ。MCも練習するからね!」

「MC?」

烈が首を傾げる。

「曲と曲の間に喋るやつ」

「おう! 任せろ!」

烈は胸を叩いた。

「俺が客を盛り上げてやる!」

隼人が嫌な予感のする顔をした。

「……お前、何を喋るつもりだ?」

「まずは自己紹介だろ! 俺は朝倉烈! 喧嘩なら誰にも負けねぇ! 今日は全員まとめて――」

「却下」

「早ぇよ!!」

美咲が吹き出す。

「喧嘩の宣伝しに来たんじゃないんだから!」

「じゃあ、何て言えばいいんだよ!」

隼人はため息をついた。

「普通に挨拶して、バンド名を言って、次の曲を紹介すりゃいいんだよ」

「……NOIZ JACK、朝倉烈だ! よろしくな!」

「そこはいいんだけど、その後に喧嘩の話をするなよ?」

「しねぇよ!」

「本当か?」

「……たぶん」

「不安しかねぇ!」

三人の笑い声が練習室に響いた。

最初の曲は「夢見る少女じゃいられない」。

隼人のギターがイントロを刻む。

美咲のベースが重なり、烈のドラムが力強くリズムを支える。

一度目の通し演奏。

最後の音が鳴り終わった。

「……よし!」

烈がスティックを握ったまま立ち上がる。

「今の、結構よかったんじゃねぇか!?」

「うん、悪くない」

隼人も頷く。

「でも、二番の入りで少し走ってたぞ」

「……マジか?」

「マジ」

美咲がベースを下ろす。

「烈、ちょっとテンポが前に出てたね。でも、前よりずっと安定してるよ!」

「おう!」

烈は嬉しそうに笑った。

「もう一回やるぞ!」

「その前に水飲め!」

隼人がペットボトルを投げてよこす。

烈はそれを受け取り、一気に飲んだ。

「ぷはぁっ! よし、次だ!」

二曲目。

「Sk8er Boi」。

今度は軽快なギターとベースに、烈のドラムが勢いよく加わる。

曲が進むにつれ、三人の身体が自然にリズムを刻み始めた。

演奏が終わる。

「……楽しいな!」

烈が笑う。

「やっぱバンドって最高だぜ!」

「お前、最初はモテたいから入ったんだろ?」

隼人がニヤリとする。

「うるせぇ! 今はドラムが楽しいんだよ!」

「へぇー?」

美咲がからかう。

「じゃあ、もうモテなくてもいいんだ?」

「……いや、それはそれでモテたい!」

「結局そこかよ!!」

隼人の声が響いた。

三曲目。

「NO. NEW YORK」。

今回は隼人がボーカルを担当する。

ギターを弾きながら歌う隼人の姿に、烈はドラムを叩きながら思った。

――こいつ、やっぱ格好いいんだよな。

普段は軽口ばかり。

美咲に頭を叩かれたり、くだらないことで騒いだり。

けれど、ギターを持つと別人のようになる。

美咲もベースを弾きながら、隼人の歌声に笑みを浮かべていた。

そして、最後の曲。

オリジナル。

「君にだけ、素直になれない」。

隼人が美咲を見る。

美咲も、ほんの少し照れくさそうに頷いた。

ギターの柔らかな旋律が流れ始める。

美咲のベースが、静かに寄り添う。

烈はいつもより力を抜き、二人の音を包み込むようにリズムを刻んだ。

歌詞には、素直になれない気持ち。

近くにいるからこそ、言えない言葉。

そして、何度喧嘩しても離れられない二人の想いが込められていた。

演奏が終わる。

誰もすぐには喋らなかった。

やがて烈が口を開く。

「……いい曲だな」

隼人が少し照れたように笑う。

「だろ?」

「お前が作ったんだもんな」

「まあな」

美咲はベースを抱えたまま、隼人を見た。

「……歌詞、書いてよかった」

「美咲が書いてくれたから、この曲になったんだよ」

「……もう」

美咲の頬が赤くなる。

隼人がそっと笑う。

烈は二人を見比べた。

「……なんか、前よりやたらイチャついてんな?」

「はぁ!?」

隼人と美咲の声が重なった。

「そ、そんなことないでしょ!」

美咲が慌てて否定する。

「そうだぞ! 俺たちはいつも通りだ!」

隼人も妙に早口だった。

烈は首を傾げる。

「そうかぁ?」

「そうなの!」

美咲が強く言い切った。

烈は数秒考え――。

「……ま、いいか!」

あっさり話を終わらせた。

隼人と美咲は顔を見合わせ、そっと息を吐く。

「……こいつ、鋭いんだか鈍いんだか」

隼人が小声で呟いた。

「烈は烈だからね」

美咲は笑った。

3.冷蔵庫と、ちょっとした本音

夕方。

休憩に入った三人。

烈は冷蔵庫を開ける。

「ジュース飲むか?」

「おう」

「私、オレンジ!」

美咲が手を挙げる。

「了解!」

烈は冷蔵庫からペットボトルを取り出し、コップに注いだ。

そのとき。

玄関から声が聞こえた。

「こんにちわ、お邪魔します!」

美琴だった。

「おう、美琴!」

烈が振り返る。

美琴の後ろには、もう一人。

柔らかな雰囲気の少女が立っていた。

白石柚葉。

「……こ、こんにちは」

小さな声。

烈はその少女を見た。

「おう。いらっしゃい」

柚葉の肩がびくっと跳ねた。

「ひゃっ……!」

「……?」

烈が首を傾げる。

「……俺、なんかしたか?」

「ち、違います! あの、えっと……!」

柚葉は顔を真っ赤にして俯いた。

美琴が心配そうに覗き込む。

「ゆずちゃん、大丈夫?」

「う、うん……!」

けれど、柚葉の心臓はずっと跳ね続けていた。

――間違いない。

――あの人だ。

一年前。

自分と弟を、しつこく絡んできた高校生たちから助けてくれた男の子。

怖いくらい強くて。

でも、最後には自分たちを気遣ってくれた。

『嬢ちゃん、怪我ねぇか?』

そう言って、手を差し伸べてくれた。

そして、泣きそうになっていた自分にハンカチを渡してくれた。

その後、警察が来ると――。

『やべっ、警察!? じゃあな、嬢ちゃん!』

そう言って、ものすごい勢いで走り去っていった。

あの時は名前も聞けなかった。

それでも。

柚葉はずっと覚えていた。

その男の子が、目の前にいる。

朝倉烈。

けれど。

烈は柚葉を見ても、まったく思い出した様子がなかった。

当然だ。

あの出来事は、烈にとっては数ある騒動の一つだったのだから。

「……?」

烈がもう一度首を傾げる。

「白石……だっけ?」

「は、はいっ!」

「そんな緊張しなくていいぞ。取って食ったりしねぇから」

「ひゃあっ!?」

柚葉がさらに赤くなる。

隼人がジュースを飲みながら呟いた。

「……おい烈。お前、初対面の女子を怖がらせてどうすんだよ」

「はぁ!? 俺、普通に喋ってるだけだぞ!」

美咲が柚葉の隣に座り、優しく声をかけた。

「ゆず、烈は見た目ちょっと怖いけど、悪い奴じゃないからね」

「そ、そうそう」

隼人も頷く。

「顔と声はこんなだけど、仲間思いだし、困ってる奴を放っとけないタイプだから」

「おい、隼人。褒めてんのか、それ?」

「褒めてる褒めてる」

「絶対嘘だろ!」

美咲が笑う。

「でも本当だよ。烈は、なんだかんだ優しいから」

柚葉は俯いたまま、ぎゅっと手を握った。

――知ってる。

――私は、知ってるよ。

あの日、助けてくれたこと。

ハンカチを渡してくれたこと。

名前も知らない自分を、当たり前みたいに守ってくれたこと。

本当は、全部話したかった。

「あの時、助けてくれてありがとう」って。

でも。

今、目の前にいる烈は、あの時のことを覚えていない。

もし話したら、迷惑かもしれない。

それに。

「……あ、あの……」

柚葉が顔を上げる。

烈と目が合った。

「……っ!」

言葉が出ない。

烈は心配そうに眉を寄せた。

「おい、本当に大丈夫か? 顔、真っ赤だぞ」

「だ、大丈夫ですっ!」

柚葉は勢いよく頭を下げた。

「ご、ごめんなさい!」

「……なんで謝るんだ?」

烈はますます困惑した。

隼人と美咲は顔を見合わせる。

「……完全に怖がられてるな」

「ねー」

「お前ら聞こえてんぞ!!」

烈の声が響いた。

柚葉はその様子を見て、思わず小さく笑った。

――やっぱり。

――あの時と同じだ。

怖い顔をしているのに。

どこか、放っておけない。

その笑顔を見た烈が、少しだけ目を丸くする。

「……お?」

「……?」

「いや、今笑っただろ?」

「えっ!? あ、あの……!」

「なんだ、笑えるじゃねぇか!」

烈は豪快に笑った。

「その方がいいぞ!」

柚葉の顔が、再び真っ赤になった。

「……っ!」

美琴はその様子を見ながら、そっと息を吐いた。

――ゆずちゃん、頑張って。

心の中で応援する。

けれど、自分自身も。

今、別の気持ちを抱えていた。

4.音楽が呼ぶもの

夕食前。

美琴と柚葉は、練習室の入り口に立っていた。

中では、隼人がギターを調整し、美咲がベースの弦を確認している。

烈はドラムの椅子に座り、スティックをくるくると回していた。

「……すごいね」

柚葉が小さく呟く。

「うん」

美琴は、目を離せなかった。

隼人のギター。

美咲のベース。

烈のドラム。

三つの音が合わさると、一つの曲になる。

それぞれ違う音なのに。

一緒になると、こんなにも楽しい。

美琴は、自分の指先を見つめた。

美咲に教えてもらったベース。

家では何度も練習している。

音程も分かる。

リズムも取れる。

でも。

ここに立つと。

胸の奥が、少しだけ苦しくなる。

――私も。

――一緒に演奏してみたい。

そう思う。

けれど。

姉に言うのは、なぜか怖かった。

美咲は自分よりずっと先を歩いている。

自分が同じ場所に立てるのか、分からない。

もし失敗したら。

もし迷惑をかけたら。

そう考えると、言葉が出なかった。

美咲は、ちらりと妹を見る。

美琴の視線が、ベースから離れない。

その表情を見れば、何を考えているのかは分かった。

隼人も気づいていた。

けれど、二人は何も言わなかった。

無理に誘うのではなく。

美琴自身が、自分の気持ちを口にするのを待とう。

そう決めていた。

「ねえ、二人とも!」

美咲が明るく声をかける。

美琴と柚葉が振り向いた。

「今度のライブ、絶対来てね!」

「……ライブ?」

柚葉が首を傾げる。

「うん! 私たちの初ライブ!」

美咲が胸を張る。

「NOIZ JACKの初ステージなんだから!」

隼人も笑う。

「ちゃんと格好いいところ見せるからな」

烈がスティックを肩に担ぐ。

「おう! 俺のドラムでぶっ飛ばしてやるぜ!」

「だから、喧嘩じゃないんだってば!」

美咲がすかさずツッコむ。

柚葉がくすくす笑った。

「……行きたいです」

「本当!?」

「はい……!」

柚葉は頷いた。

「みんなの演奏、ちゃんと聴きたいです」

美琴も小さく頷く。

「……私も、行く」

美咲は嬉しそうに笑った。

「約束ね!」

その笑顔を見て、美琴の胸が少しだけ熱くなる。

――お姉ちゃんたちのライブ。

――私も、ちゃんと見たい。

そして。

いつか。

自分も、あの音の中に加わりたい。

まだ言葉にはできない。

けれど。

その気持ちは、少しずつ大きくなっていた。

5.MCは難しい!

二人が帰ったあと。

三人は再び練習室へ戻った。

「さて、MCの続きだ!」

隼人が手を叩く。

「最初の挨拶は俺がやる。バンド名を紹介して、美咲に繋ぐ」

「はいはい」

美咲が頷く。

「それから?」

烈が聞く。

「二曲目の前に、烈が一言」

「任せろ!」

烈が立ち上がった。

「お前らー! 楽しんでるかー!!」

「ライブはまだだ!!」

隼人が即座にツッコむ。

「練習で客席に叫ぶな!」

「本番の練習だろうが!」

「それはそうだけど!」

美咲は笑いをこらえながら、台本代わりのメモを持った。

「じゃあ、こうしよう。隼人が挨拶して、私が次の曲を紹介。烈は短く盛り上げる!」

「短く?」

「短く!」

「……分かった!」

烈は真剣な顔で頷いた。

数秒後。

「お前らー! 今日は来てくれてありがとな! 俺たちNOIZ JACKだ! 最後まで楽しんでけよ!」

隼人と美咲が顔を見合わせる。

「……いいじゃん」

「うん、今のはよかった!」

烈がニカッと笑う。

「だろ!」

「その後に喧嘩の話を足さなければ完璧だな」

「足さねぇって言ってんだろ!」

練習室に、また笑い声が響いた。

6.LIVE前日

翌日。

三人は初めてのライブを前に、スタジオで最後のリハーサルを行っていた。

ドラムセットの前に烈。

ギターを構える隼人。

ベースを抱える美咲。

三人の視線が合う。

「……行くぞ」

隼人が小さく頷いた。

「うん!」

美咲も笑う。

烈はスティックを構えた。

「NOIZ JACK――練習開始だ!」

「そこはライブ開始って言えよ!」

隼人のツッコミ。

「うるせぇ! まだ練習だろうが!」

「それもそうだな!」

三人は笑った。

そして。

最初の曲。

「夢見る少女じゃいられない」。

音が鳴り始める。

一曲目を最後まで演奏。

問題なし。

二曲目。

「Sk8er Boi」。

リズムも安定している。

三曲目。

「NO. NEW YORK」。

隼人の歌声がスタジオに響く。

そして。

最後の曲。

「君にだけ、素直になれない」。

美咲の歌声が、ギターとベースに重なった。

烈は、ドラムを叩きながら思った。

――ここまで来たんだ。

初めてドラムを叩いた日。

何も分からなくて。

スティックの持ち方すら怪しかった。

それが今では。

隼人のギターに合わせて。

美咲のベースに合わせて。

一緒に音楽を作っている。

「……最高じゃねぇか」

思わず声が漏れた。

「烈、歌うな! リズム!」

「歌ってねぇよ!」

「今、歌ってたろ!」

「気のせいだ!」

美咲が笑いながら歌い続ける。

最後の音が鳴り終わった。

静寂。

そして。

「……よし!」

隼人がギターを下ろした。

「四曲、全部通せたな」

「うん!」

美咲も笑う。

「いい感じ!」

烈はスティックを握り締めた。

「明日……本番だな」

「そうだ」

隼人が頷く。

「俺たちの初ライブだ」

美咲が二人を見る。

「絶対、最高のライブにしようね!」

烈は大きく笑った。

「おう!」

「俺たちのリングは――」

隼人が言う。

「ステージだ」

三人の声が重なった。

7.初ライブ当日の朝

そして――。

ライブ当日。

朝倉家。

烈はベッドから勢いよく飛び起きた。

「……今日だ」

カーテンの隙間から、夏の朝日が差し込んでいる。

今日は、初ライブの日。

昨夜は緊張して眠れないかと思った。

けれど、気づけば朝になっていた。

烈は枕元のスティックを手に取る。

何度も握ってきた、自分の相棒。

「……よし」

立ち上がり、窓の外を見る。

空は青い。

最高のライブ日和だ。

その頃。

隼人はギターケースを確認し、美咲は衣装を整えていた。

美琴と柚葉も、それぞれライブへ向かう準備をしている。

誰もが、今日という日を待っていた。

烈はスマートフォンを手に取る。

隼人からメッセージが届いていた。

『寝坊すんなよ、烈』

烈は鼻で笑う。

「誰に言ってんだ、あいつ」

すぐに返信した。

『お前こそ遅れんなよ!』

そして。

スティックを握り直す。

「……行くぜ」

今日、NOIZ JACKは初めてステージに立つ。

まだ何も始まっていない。

けれど。

三人が積み重ねてきた時間は、確かにここまで繋がっていた。

烈は玄関へ向かう。

扉を開けると、夏の風が吹き込んできた。

「俺たちのリングは――」

小さく呟く。

「ステージだ!」

番外編「BURN BEAT」第15話「LIVE前夜」――完。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。