第13話「免許合宿」
BURN BEAT
第13話「免許合宿!」
――夏休み初日。
朝。
駅前。
大きなバッグを持った三人の高校生が立っていた。
朝倉烈。
藤堂隼人。
神崎美咲。
今日から三人は――
一週間の免許合宿。
「いよいよだな!」
烈が拳を握る。
「一週間で免許取るぞ!」
「おう!」
隼人も笑う。
美咲は大きなバッグを肩に掛けながら、嬉しそうに笑っていた。
「これで三人ともバイク乗れるようになるんだね!」
「そうだ!」
烈が胸を張る。
「免許取ったら、みんなでツーリング行こうぜ!」
「いいね!」
美咲が頷く。
「海とか行きたい!」
「いいじゃん!」
隼人も笑う。
「夏だしな!」
三人は盛り上がっていた。
そこへ。
一台の送迎バスが近づいてくる。
車体には、教習所の名前。
「来た!」
美咲が手を振る。
「乗ろう!」
三人は荷物を持ってバスへ乗り込んだ。
バスの中。
他にも何人かの合宿生が乗っている。
大学生らしい青年。
専門学校生らしい男子。
そして。
同じくらいの年齢の男女。
烈は車内を見回す。
「結構いるな」
「そりゃ夏休みだからね」
美咲が答える。
隼人は座席に深く座る。
「一週間か……」
「長いようで短いかもな」
「だな」
三人は笑った。
そのとき。
後ろの席から声が聞こえる。
「なあ」
「ん?」
「前の女の子、可愛くね?」
「どの子?」
「金髪っぽい子」
美咲だった。
烈と隼人は気づいていない。
後ろの男子たちは、美咲を見ながら何やら話している。
美咲はそんなことなど気にせず、窓の外を眺めていた。
「楽しみだなぁ……」
教習所
送迎バスが到着する。
「着いた!」
全員が降りる。
大きな建物。
広いコース。
教習車。
そして。
二輪教習用のコース。
烈の目が輝く。
「うおお……!」
「どうした?」
隼人が聞く。
「なんか……テンション上がってきた!」
「単純だな、お前」
美咲が笑う。
「でも私も楽しみ!」
三人は受付へ向かう。
入校手続き。
説明。
適性検査。
視力検査。
そして。
教官からの説明。
「では、これから一週間の予定を説明します」
スクリーンにスケジュールが映し出される。
「午前は技能教習」
「午後は学科教習」
「規定時間をクリアした方から卒業検定へ進みます」
烈が小さく頷く。
「なるほど……」
隼人が横を見る。
「ちゃんと聞いてるか?」
「聞いてるって」
美咲が笑う。
「烈、寝ないでよ?」
「寝ねぇよ!」
初めての技能教習
三人は二輪コースへ向かった。
教官がバイクを並べる。
「まずは基本操作からです」
烈がバイクを見る。
「おお……」
「まずは乗車姿勢」
「はい!」
「次に発進」
烈が緊張した顔でアクセルを握る。
「……」
「朝倉君」
「はい!」
「そんなに力を入れなくて大丈夫ですよ」
「はい!」
ゆっくりクラッチを繋ぐ。
バイクが動く。
「……!」
烈の顔が明るくなる。
「動いた!」
「そりゃ動くよ」
隼人が笑う。
「うるせぇ!」
隼人も発進。
こちらは安定している。
「さすが隼人」
美咲が笑う。
「じゃあ次、私ね」
美咲も発進する。
こちらもスムーズ。
「……」
烈が二人を見る。
「お前ら上手くね?」
隼人が笑う。
「普通だろ」
美咲も得意げ。
「烈が力みすぎなんじゃない?」
「……」
烈はバイクを見る。
「よし」
「次は俺もやる!」
数日後
教習所での生活にも慣れてきた。
朝。
技能。
昼。
学科。
夕方。
自由時間。
三人は空いた時間に一緒に過ごしていた。
「この問題、分かる?」
美咲が教科書を見る。
「これ?」
隼人が答える。
「優先道路だから――」
「へえ」
烈は隣で教科書を睨んでいる。
「……」
「烈?」
「ん?」
「勉強してる?」
「してる」
「ページ一枚も進んでないけど?」
「……」
烈は教科書を閉じた。
「俺は実技で勝負する!」
「免許は筆記もあるんだよ」
美咲が呆れる。
「分かってるって!」
隼人が笑う。
「絶対分かってないだろ」
ちょっとした事件
昼休み。
三人は教習所の食堂にいた。
そこへ。
昨日の男子たちがやってくる。
「ねえ、神崎さん」
美咲が顔を上げる。
「私?」
「そう」
男子が笑う。
「今日、暇?」
「え?」
「教習終わったら、俺たちと遊びに行かない?」
美咲は少し困った顔をする。
「ごめんね」
「友達といるから」
烈と隼人を見る。
「いいじゃん」
男子は引かない。
「ちょっとくらいさ」
「本当にごめん」
美咲が笑って断る。
「私、この二人といるから」
隼人を見る。
「お、おう」
烈も頷く。
「そういうこと」
男子の一人が少し苛立ったように言う。
「なんだよ」
「そんなダサい奴等より俺達と遊ぼうよ」
そのうち1人の男が美咲の肩へ手を伸ばす。
その手を。
隼人が掴んだ。
「……やめとけ」
男子が睨む。
「なんだよ」
「嫌がってるだろ」
烈も立ち上がる。
「しつこいのはダサいぞ」
「お前ら、やるのか?」
「やるなら相手するぞ」
烈が一歩前へ出る。
しかし。
「烈!」
美咲が止める。
「いいから」
「でもよ……」
「大丈夫」
美咲は男子たちを見る。
「本当にごめんね」
そして。
笑顔。
「仲良くしようよ?」
男子たちは少し戸惑った。
「……チッ」
「行こうぜ」
男たちは離れていく。
烈がため息をつく。
「なんなんだよ、あいつら」
隼人も座る。
「まあ、合宿中だしな」
美咲が二人を見る。
「ありがと」
「おう」
「別に」
美咲は笑う。
「二人とも優しいね」
烈と隼人は顔を見合わせる。
「……」
「……」
「まあな」
その日の夕方。
教習所の入口。
一台の車が停まった。
降りてきたのは――
二人の男。
一人は。
黒い服。
鋭い目。
そして。
圧倒的な威圧感。
神崎拓真。
その隣には。
相馬。
Black Magicianの幹部だった。
「美咲は?」
拓真が聞く。
「たぶん、もうすぐ出てきますよ」
相馬が答える。
「心配しすぎですよ、拓真さん」
「うるせぇ」
そのとき。
「たくにぃ!」
美咲が走ってくる。
拓真の表情が、一瞬で柔らかくなる。
「たくにぃ〜」
「来てくれたんだ!」
「ちょっと通り掛かったからな」
「心配してくれたの?」
「そりゃ心配するだろ」
拓真が美咲の頭を軽く撫でる。
「何かあったらすぐ連絡しろ」
「うん!」
その光景を。
烈と隼人。
そして。
昨日の男子たちが見ていた。
「……」
「……」
男子の一人が呟く。
「神崎……?」
別の男子が顔を青くする。
「まさか……」
「神崎拓真……?」
その名前を聞いた瞬間。
空気が凍った。
「ブラックマジシャンの……総長?」
「嘘だろ……」
美咲が振り返る。
「どうしたの?」
拓真が答える。
「こいつらか?」
「うん。同じ合宿の子たち」
拓真が笑う。
「そうか」
男子たちは直立する。
「……!」
拓真が何気なく言う。
「俺の従妹だから、よろしくな」
「――――!」
全員の顔が青ざめた。
「従妹……」
「神崎さんの……」
「……マジか」
美咲は首を傾げる。
「そんなに驚くこと?」
男子たちは一斉に頭を下げた。
「神崎さん!」
「え?」
「美咲さん!」
「美咲さん!」
「……え?」
美咲は目を丸くする。
「普通に美咲でいいよ?」
「いえ!」
「美咲さんと呼ばせてください!」
美咲は少し考える。
そして。
ニコッ。
「……お友達がいっぱいできた♪」
「……」
「……」
烈と隼人は固まる。
隼人が小声で言う。
「烈」
「なんだ」
「美咲……」
「うん」
「こぇぇ……」
「俺もそう思った」
「……悪魔だ」
「完全に悪魔だ」
美咲は嬉しそうに笑っていた。
「合宿来てよかった~♪」
卒業検定
そして。
一週間が過ぎた。
卒業検定の日。
「緊張するな……」
隼人が言う。
「私は大丈夫!」
美咲は余裕の表情。
烈は拳を握る。
「俺も余裕だ!」
「本当に?」
美咲が笑う。
技能検定。
隼人。
無事に合格。
「よし!」
美咲。
無事に合格。
「やった!」
そして。
烈。
「……」
一本橋。
成功。
スラローム。
成功。
急制動。
成功。
そして。
「合格です」
「よっしゃぁぁぁ!」
烈が拳を突き上げる。
「俺も合格!」
隼人が笑う。
「お前、意外とやるじゃん」
「当然だろ!」
美咲も笑う。
「三人とも卒業だね!」
「おう!」
しかし。
三人には。
まだ一つ残っていた。
免許センターの学科試験。
翌日。
免許センター。
「ここで合格すれば、今日から免許だよ」
美咲が言う。
「分かってる!」
烈が胸を張る。
隼人が苦笑する。
「昨日まで全然勉強してなかったけどな」
「大丈夫だって!」
そして。
試験開始。
数時間後。
結果発表。
「藤堂隼人さん――合格」
「よし!」
「神崎美咲さん――合格」
「やった!」
そして。
「朝倉烈さん――」
「……」
「不合格です」
「…………」
烈の顔が固まった。
「……え?」
隼人が吹き出す。
「ぷっ……」
「笑うな!」
美咲も口を押さえる。
「烈……」
「笑ってんじゃねぇか!」
係員が淡々と説明する。
「後日また来てください」
烈は頭を抱えた。
「なんで俺だけぇぇぇぇぇ!!」
「明日来てーけど、明日はゴルフ練習場のバイトが…」
隼人と美咲が笑う。
「頑張れ、烈!」
「明後日また試験だね♪」
「お前ら他人事だと思ってぇぇぇ!」
こうして。
隼人と美咲は予定通り免許を取得。
烈だけが。
二日間の延長戦へ突入した。
「俺だけ延長とか聞いてねぇぇぇ!」
夏休み初日。
三人で始めた免許合宿。
最後に待っていたのは――
朝倉烈、一人だけの。
二日間のお預けだった。
番外編「夏休み編」第13話「免許合宿!」――完。




