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BURN BEAT  作者: 度肝抜造
第1章「NOIZ JAC結成編」
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12/21

第12話「夏フェスへの誘い」


BURN BEAT 第12話「夏フェスへの誘い」

BURN BEAT

第12話「夏フェスへの誘い」

――数日前。

神崎家。

隼人は、部屋の中でベースを弾いている美琴の前に座っていた。

美琴は少し緊張した様子で、何度も指を止める。

「……どうでしたか?」

「どうって……」

隼人は言葉を探した。

「……すげぇよ」

「え……?」

美琴が顔を上げる。

「正直、ここまで弾けるとは思ってなかった」

「……そうですか?」

「ああ」

隼人は笑う。

「音が綺麗なんだよ」

「それに……」

美琴の指を見る。

「ちゃんと曲の中でベースが生きてる」

「……」

「美咲のベースとは、全然違う」

美琴が少しだけ笑った。

「お姉ちゃんとは……違いますか?」

「うん」

隼人は頷く。

「美咲は前に出るタイプだろ?」

「美琴は……」

一瞬、言葉を止める。

「曲全体を支える感じがする」

美琴は驚いたように隼人を見る。

「……そんなこと、考えたことありませんでした」

「でも、俺はそう思った」

隼人は立ち上がる。

「もっと聴いてみたい」

「……はい」

美琴は小さく頷いた。

隼人は神崎家を出た。

夕方の道を歩きながら。

「……なんだろうな」

頭の中に、さっきのベースの音が残っている。

ただ「上手い」というだけじゃない。

何かがある。

まだ、それが何なのかは分からなかった。

だが。

隼人は確かに感じていた。

――こいつは、ただのベースが弾ける妹じゃない。

何かを持っている。

そんな気がしていた。

数日後。

放課後。

隼人はいつものように、佐伯のライブハウスへ向かっていた。

「よっしゃ……今日もバイトだ」

学校を出て、ライブハウスへ向かう。

ドアを開ける。

「お疲れ様です!」

「おう、隼人!」

佐伯の声が返ってくる。

「ちょうどいいところに来たな!」

「何か手伝うことあります?」

「まだ開店前だからな。まずは掃除!」

「了解!」

隼人は店内を掃除する。

床を掃き。

ステージを確認。

機材をチェック。

ドリンクカウンターを整える。

少しずつ。

ライブハウスの仕事にも慣れてきていた。

そんなとき。

壁に貼られた一枚のポスターが目に入った。

「……ん?」

隼人が近づく。

そこには、大きく書かれていた。

8月20日

佐伯LIVE HOUSE PRESENTS

「SUMMER ROCK FESTIVAL」

素人バンド・フェス

出演バンド募集中!!

「……フェス?」

隼人はポスターを見つめる。

「素人バンド……」

その文字を見た瞬間。

頭の中に。

NOIZ JACKの姿が浮かんだ。

烈。

美咲。

そして自分。

ステージ。

照明。

客席。

歓声。

「……俺達が出たら……」

想像する。

隼人がギターを弾く。

美咲が歌う。

烈がドラムを叩く。

そして。

客席から歓声が上がる。

「うおおおおおっ!!」

「NOIZ JACK!!」

「……」

隼人の口元が緩む。

「……いいな」

さらに妄想が膨らむ。

自分たちの名前がステージ上で呼ばれる。

照明が落ちる。

そして――

「NOIZ JACK!!」

「……かっけぇ」

完全に妄想の世界へ入っていた。

そのとき。

「何ニヤニヤしてんだ?」

「うわっ!」

隼人が飛び上がる。

後ろに佐伯が立っていた。

「さ、佐伯さん!」

「さっきからポスター見ながら、ずいぶん楽しそうじゃねぇか」

「いや……これは……」

佐伯はポスターを見る。

「ああ、これか」

「8月20日のフェスですか?」

「そう」

「高校生のバンドとかも出るんですか?」

「出るぞ」

佐伯は笑った。

「興味あるんだったら、やってみるか?」

「え?」

隼人が振り返る。

「俺達が……?」

「そうだよ」

佐伯は肩をすくめる。

「そんな硬くならなくてもいいぞ」

「お祭りみたいなもんだからな」

「お祭り……」

「そうそう」

佐伯は笑う。

「素人バンド中心のフェスだ」

「まだ経験の浅い連中も出る」

「だったら……」

隼人の目が輝く。

「俺達でも……」

「出られるさ」

佐伯はポスターを指差す。

「そーいや、お前の兄貴たちも、このフェスが初LIVEだったな」

「えっ!?」

隼人が驚く。

「恒一兄貴たちが?」

「ああ」

「昔の話だけどな」

佐伯は懐かしそうに笑う。

「最初はガチガチだったぞ」

「でも、ステージに立ったら別人だった」

隼人はポスターを見る。

「……兄貴もここからだったのか」

「そういうこと」

佐伯は続ける。

「今回のメインはLuminousだ」

隼人「Luminous?」

「この前兄貴達と対バンした?」

佐伯「そう、彼女達まだアマチュアだけど結構人気あるんだよ。」

隼人が少し驚く。

「へぇ……」

「他にも高校生のバンドが何組か出る予定だ」

「つまり……」

隼人の胸が高鳴る。

「俺達と同じくらいの奴らも出る……」

「そういうこと」

佐伯は笑った。

「どうする?」

隼人はしばらくポスターを見つめた。

そして。

「……出たいです」

佐伯が笑う。

「そう言うと思ったよ」

翌日。

昼休み。

学校。

隼人は烈と美咲を探していた。

「いた!」

教室の外。

烈がパンを食べている。

その隣には美咲。

「おーい!」

隼人が駆け寄る。

「何よ、朝からうるさいわね」

「聞いてくれ!」

「何?」

「8月20日!」

烈がパンを食べながら顔を上げる。

「八月?」

「ライブハウスでフェスやるんだって!」

「フェス?」

美咲も興味を示す。

「佐伯さんが、俺達も出ないかって」

一瞬。

二人が顔を見合わせる。

そして。

美咲が笑った。

「……やってみたい」

「だろ?」

「うん!」

烈はすぐに拳を握る。

「出ようぜ!」

「烈、即決すぎ!」

「だってライブだろ?」

「まあ、そうだけど……」

烈はニヤッと笑う。

「俺達がステージに立つんだろ?」

「面白そうじゃねぇか!」

隼人も笑う。

「よし!」

美咲も頷く。

「決まりね」

三人は拳を合わせる。

「NOIZ JACK、フェス参戦!」

しかし。

問題が一つ。

「で、何曲やるの?」

美咲が聞く。

隼人は佐伯から聞いた内容を思い出す。

「持ち時間は20分」

「20分か……」

烈が腕を組む。

「じゃあ一曲?」

「少なすぎるでしょ」

美咲が呆れる。

「三曲くらい?」

隼人が考える。

「MCもあるし……」

三人で話し合った結果。

「……四曲」

「四曲ね」

「よし!」

NOIZ JACK初のフェス。

持ち時間20分。

演奏するのは――

四曲。

三人の表情が変わる。

「……忙しくなるぞ」

隼人が言う。

「バイトもある」

美咲が続ける。

「学校もある」

烈が言う。

「練習もしなきゃな!」

三人が顔を見合わせる。

そして。

「やってやろうぜ!」

それから。

NOIZ JACKの活動は一気に忙しくなった。

学校。

バイト。

スタジオ。

秘密基地での練習。

そして。

四曲分のセットリスト作り。

「ここ、もう一回!」

「烈、そこ走ってる!」

「美咲、もうちょっと音下げて!」

「分かった!」

「隼人、ギターうるせぇ!」

「お前に言われたくねぇ!」

そんな毎日。

それでも。

三人は楽しんでいた。

夏フェス。

初めての本格的な舞台。

その日を目指して。

そして。

一学期の期末テスト前。

学校。

三人は昼休み、いつものように集まっていた。

美咲が突然。

「ねぇ」

「ん?」

烈と隼人が振り返る。

「夏休みさ」

「うん」

「初日から、どっか行かない?」

「どこへ?」

美咲がニヤッと笑う。

「免許合宿」

「……」

隼人が固まる。

烈も固まる。

「単車の免許」

美咲が続ける。

「一週間くらいで取れるところあるんでしょ?」

隼人が目を輝かせる。

「……いいな」

烈も。

「俺も取りてぇ!」

「でしょ?」

美咲は笑う。

「フェスの練習もあるけど、夏休みなら時間あるし」

「初日から合宿行って、帰ってきたらフェスに向けて練習しまくる」

隼人が頷く。

「賛成」

烈も拳を握る。

「俺も!」

「決まりね」

すると。

烈がふと聞いた。

「でもよ」

「何?」

「免許取ったとして、バイクどうすんだ?」

「……」

三人が顔を見合わせる。

隼人が先に答えた。

「俺はあるぞ」

「え?」

「兄貴のお下がり」

「スティード400」

「マジか!」

烈が食いつく。

隼人は笑う。

「恒一兄貴が昔乗ってたやつ」

「ちゃんと動くようにしてある」

「いいなぁ……」

烈が羨ましそうに言う。

「俺も親父がバイク好きなんだよ」

「この前、親父がハーレー買ってきてさ」

「それで?」

「俺にドラッグスター400がある」

「ドラッグスター400!?」

隼人が驚く。

「お前ん家、何なんだよ!」

「知らねぇよ!」

烈は笑う。

「親父がバイク好きなんだから仕方ねぇだろ!」

「じゃあ、美咲は?」

隼人が聞く。

烈も美咲を見る。

「私は?」

「バイク持ってんの?」

美咲はニヤッと笑う。

「私?」

そして。

胸を張る。

「私はね――」

少し間を置いて。

「たくにぃに、バイクちょうだい♥って言ったら、くれた」

「…………」

隼人と烈が固まる。

「……くれた?」

「うん♥」

「いや……」

隼人が呟く。

「それ……」

烈も続ける。

「くれたって言うか、奪ったんじゃ……」

その瞬間。

「ゴツン!」

「いてぇ!」

「ゴツン!」

「いってぇぇぇ!!」

美咲が二人の頭にゲンコツを落とした。

「誰が奪ったって?」

「……すみません」

「……すみません」

二人が頭を押さえる。

美咲は満足そうに笑う。

「私のはマグナ250」

「たくにぃがくれたの」

「はいはい……」

「納得いかねぇ……」

「烈、何か言った?」

「何も言ってません!」

こうして。

夏休み初日。

三人は――

単車の免許を取りに、教習所の合宿へ行くことになった。

隼人。

スティード400。

美咲。

マグナ250。

烈。

ドラッグスター400。

そして。

一週間後。

三人は無事に免許を手に入れる――

はずだった。

果たして。

NOIZ JACKの三人は、無事に単車の免許を取得できるのか。

そして。

夏フェスのステージで、四曲を無事に演奏できるのか。

夏休み。

NOIZ JACKにとって。

初めての――

熱い夏が始まろうとしていた。

BURN BEAT 第12話「夏フェスへの誘い」――完

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