第11話「兄貴達の打ち上げ」
BURN BEAT 第11話「兄貴たちの打ち上げ」
BURN BEAT
第11話「兄貴たちの打ち上げ」
――ライブ終了後。
帰り道、
烈は大きく伸びをする。
「ふぅー……疲れた!」
隼人が笑う。
「お前、ライブ見てただけだろ」
「見てるだけでも疲れるんだよ!」
「何でだよ」
美咲が呆れる。
「ずっと興奮してたもんね」
烈は力強く頷く。
「俺もいつか、あんなライブやってみてぇ!」
隼人がニヤッとする。
「そのためには、まずドラムをもっと練習しろよ」
「分かってる!」
帰り道隼、隼人のスマホが鳴る
佐伯さんから
隼人達が手伝ってくれたからお礼に打ち上げの誘いである。
烈の目が輝く。
「行く!」
隼人が笑う。
「お前、打ち上げって言葉だけでテンション上がってねぇか?」
「だって楽しそうじゃん!」
美咲が腕を組む。
「でも私たちは帰るよ」
「え?」
烈が振り返る。
「女の子二人を夜遅くまで連れ回すわけにはいかないでしょ」
美咲が美琴を見る。
美琴も頷く。
「うん……」
隼人も頷いた。
「そうだな」
そして。
「じゃあ俺と烈で参加するか」
「おう!」
烈が即答する。
「美咲と美琴は送ってくよ」
「お願い」
二人を自宅まで送り届ける。
玄関前。
「じゃあ、また明日」
隼人が言う。
「うん」
美咲が答える。
「隼人」
「ん?」
「……飲みすぎないでね」
「俺、まだ高校生だぞ」
「知ってる」
美咲がジト目になる。
「でも、なんか心配」
烈が横から笑う。
「大丈夫だって!」
「お前は黙ってて」
「なんで俺!?」
美琴が小さく笑う。
「……おやすみ」
「おう、おやすみ」
二人と別れ。
烈と隼人は、佐伯たちとの打ち上げへ向かった。
――佐伯行きつけの居酒屋
店の奥。
大きなテーブルを囲んで、VOLT EDGEのメンバーたち。
そして佐伯。
さらに――
この日の前座を務めたガールズバンドのメンバーたちも参加していた。
「お疲れー!」
「カンパーイ!」
グラスが一斉に上がる。
烈もジュースの入ったグラスを掲げる。
「カンパーイ!」
「お前、楽しそうだな」
隼人が笑う。
「最高だろ!」
烈は周囲を見る。
VOLT EDGEのメンバー。
ライブハウスのオーナー。
そして。
年上のお姉さんたち。
「……」
烈の目が輝く。
「おい」
隼人が横を見る。
「何だよ、その顔」
「いや……」
烈はニヤニヤする。
「お姉さんいっぱいだな」
「お前なぁ……」
隼人が呆れる。
その隣では。
「いやぁ、今日は最高だったな!」
佐伯も上機嫌だった。
「お姉ちゃんたちも良かったよ!」
「佐伯さん、飲みすぎ!」
ガールズバンドの一人が笑う。
「いいじゃねぇか!」
佐伯はテンションアゲアゲだった。
「今日はライブも大成功!」
「打ち上げも大成功!」
「最高だー!」
「うるさいですよ、佐伯さん」
恒一が苦笑する。
■VOLT EDGEメンバー
改めて。
隼人が烈に紹介する。
「じゃあ、ちゃんと紹介するわ」
「まず俺の兄貴」
「藤堂恒一」
「ギター」
恒一が軽く手を上げる。
「よろしく」
「よろしくお願いします!」
「で、ボーカルが――」
神谷迅。
「神谷だ。よろしく」
低く落ち着いた声。
烈は思わず姿勢を正す。
「よろしくお願いします!」
「そんな固くならなくていい」
神谷が笑う。
「隼人の友達なんだろ?」
「はい!」
続いて。
「ギター、相沢蓮司」
「よろしく」
「ベース、三浦大地」
「よろしくな」
「そしてドラム、桐生浩二」
「おう!」
桐生が豪快に笑う。
「お前が朝倉か!」
「はい!」
「今日、客席からずっと見てたぞ」
「え?」
「兄貴のライブ見て、目ぇ輝かせてただろ」
烈が照れる。
「……バレてました?」
「バレバレだ!」
一同が笑う。
「しかし」
神谷が烈を見る。
「お前、ドラムなんだな」
「はい!」
「始めたばっかりだって?」
隼人が答える。
「まだまだ初心者」
烈がムッとする。
「初心者だけど、やる気はあるぞ!」
桐生が笑う。
「それでいい」
「最初から上手い奴なんて、そういねぇよ」
烈は少し嬉しそうにする。
「……はい!」
恒一も笑う。
「隼人」
「ん?」
「いい仲間を見つけたな」
「だろ?」
隼人が少し誇らしげに笑う。
その後。
打ち上げはさらに盛り上がっていった。
烈は年上のお姉さんたちと楽しそうに話している。
「へぇー、高校生なんだ」
「はい!」
「ドラムやってるの?」
「そうなんですよ!」
「頑張ってね」
「はい!」
完全に浮かれている。
少し離れたところでは。
佐伯も。
「いやぁ、お姉ちゃんたち、これからもウチでライブやってくれよ!」
「もちろん!」
「よっしゃ!」
佐伯も上機嫌。
隼人はその様子を見ながら苦笑した。
「……この二人、似てるな」
恒一が笑う。
「お前も人のこと言えないけどな」
「俺は違うって」
「はいはい」
やがて。
打ち上げも終盤。
隼人のスマホが鳴った。
「……美咲?」
電話に出る。
「もしもし?」
『隼人?』
「おう」
『今、どこ?』
「打ち上げ」
『……楽しそうね』
「いや、普通に――」
『烈と二人で楽しんでるんでしょ?』
「いやいや!」
隼人が慌てる。
「烈がはしゃいで大変なんだよ!」
『……ふーん』
明らかに機嫌が悪い。
「美咲?」
『……年上のお姉さんとかいるんでしょ』
「何で知ってんだよ!?」
烈が横で笑う。
「お前、完全に疑われてんじゃん!」
「うるせぇ!」
その瞬間。
恒一が隼人のスマホを取り上げる。
「もしもし、美咲ちゃん?」
『えっ?』
「大丈夫」
恒一が笑う。
「俺たちが付いてるから」
『お兄さん……』
「隼人はちゃんと返すよ」
『……本当ですか?』
「ああ」
『……お兄さんが言うなら』
美咲の声が少し柔らかくなる。
「じゃあ、また明日な」
『うん。おやすみ』
通話終了。
恒一がスマホを隼人へ返す。
「ほら」
「……助かった」
「お前も大変だな」
「誰のせいだよ」
「知らん」
烈が笑う。
「かっかっか!」
――翌日。
昼前。
隼人は美咲の家へ向かっていた。
「昨日は楽しかったな……」
歩きながら思い出す。
烈は完全に浮かれていた。
佐伯もテンションが異常だった。
そして。
美咲には少し嫉妬された。
「……まあ」
隼人は苦笑する。
「次は美咲も連れてくか」
そんなことを考えながら。
美咲の家の前へ到着する。
「……ん?」
足を止める。
家の中から。
音が聞こえる。
――ボン。
――ボン。
低い音。
そして。
――ポロポロ……
ベース。
隼人は耳を澄ます。
「……美咲?」
いつもの美咲の音。
そう思った。
しかし。
「……ん?」
何かが違う。
音が。
妙に落ち着いている。
余計な力がない。
一音一音が。
綺麗に繋がっている。
「……?」
隼人は首を傾げる。
「美咲……こんな弾き方だったか?」
もう一度。
ベースの音が聞こえる。
隼人は玄関のチャイムを押した。
ピンポーン。
音が止まる。
少しして。
玄関が開いた。
「はい――」
美咲だった。
「……隼人」
開口一番。
「昨日は烈と二人で随分楽しそうだったわね!」
「またそれかよ!」
隼人が頭を抱える。
「勘弁してくれよ!」
「ふーん」
美咲が腕を組む。
「随分楽しそうだったじゃん」
「烈の奴がはしゃいじゃって大変だったんだから!」
「本当?」
「本当だって!」
隼人はため息をつく。
「次からは美咲も参加な!」
「……」
美咲の表情が少し緩む。
「最初からそう言いなさいよ」
「はいはい」
そして。
隼人はふと家の中を見る。
「……ところで」
「ん?」
「さっきベース弾いてたの――」
隼人が耳を澄ます。
「ミコちゃんか?」
美咲がニヤッと笑った。
「そうだよ」
「美琴」
美咲は少し誇らしげに言う。
「上手いでしょ?」
その瞬間。
家の奥から。
小さくベースの音が聞こえた。
――ポロン。
隼人は黙った。
「……」
先日。
チューナーを使わずに音を合わせた美琴。
そして。
今、聞こえているベース。
「……なるほど」
隼人は小さく笑った。
「ちょっと……聞かせてもらおうかな」
美咲が笑う。
「もちろん」
そして。
「美琴ー!」
家の奥から。
「……なに?」
美琴の声。
「隼人来たよ」
「……!」
少し慌てた気配。
美咲が楽しそうに笑う。
「ほら」
「今日はちゃんと聞いてもらおうか」
隼人は玄関で待つ。
まだ。
本人は知らない。
昨日のライブで感じた「音楽の凄さ」が。
この後、
NOIZ JACKの新しい仲間へと繋がっていくことを。
「BURN BEAT」第11話「兄貴たちの打ち上げ」――完。




