↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BURN BEAT  作者: 度肝抜造
第1章「NOIZ JAC結成編」
PR
10/21

第10話「LIVEってスゲー」

BURN BEAT

第10話「LIVEってスゲー!」

――数日後。

放課後。

NOIZ JACKの三人は、いつものように学校から帰ろうとしていた。

烈が鞄を肩に担ぐ。

「じゃあ、また明日な」

「ちょっと待て」

隼人が呼び止める。

「ん?」

烈が振り返る。

「お前ら、今週の土曜って暇?」

美咲が首を傾げる。

「私は暇だけど?」

「俺も特に予定ねぇぞ」

烈が答える。

「何だよ?」

隼人はニヤッと笑った。

「ライブ行かねぇ?」

「ライブ?」

烈が聞き返す。

「そう」

隼人が親指を立てる。

「俺の兄貴のバンドが、佐伯さんのライブハウスでライブやるんだよ」

「兄貴のバンド?」

「VOLT EDGE」

隼人が誇らしげに名前を口にする。

「今はプロでやってるバンドだ」

「へぇ……」

烈は少し考える。

「……俺、ライブって見たことないんだよな」

「マジで?」

美咲が驚く。

「ない」

「じゃあ決まりじゃん」

隼人が烈の肩を叩く。

「絶対面白いから」

「まあ……付き合いで行ってやるよ」

「なんだよ、その言い方」

「別に音楽聴くために行くわけじゃねぇし」

烈は笑う。

「隼人の兄貴を見に行くだけだ」

「はいはい」

美咲が笑う。

「でも烈、絶対ハマると思うけどなぁ」

「何に?」

「ライブに」

「んなわけねぇだろ」

烈は笑った。

この時は。

本当にそう思っていた。

そして。

土曜日。

夕方。

三人は駅前で待ち合わせていた。

「おーい!」

隼人が手を振る。

「遅ぇぞ」

烈が言う。

「まだ時間前だろ!」

「細けぇことはいいんだよ」

美咲が呆れる。

「はいはい。じゃあ行きましょ」

三人はライブハウスへ向かう。

その途中。

美咲がふと思い出した。

「そういえば、美琴も来るよ」

「え?」

烈が振り返る。

「美琴も?」

「うん」

「ライブ見るのか?」

「そう」

美咲が笑う。

「今日はちゃんと連れてくる」

隼人も頷く。

「ミコちゃん、兄貴たちのライブ好きなんだよ」

「へぇ」

烈は何となく楽しみになった。

ライブハウス。

扉を開ける。

「……ここが」

烈が中を見回す。

壁にはライブのポスター。

ステージ。

照明。

スピーカー。

そして。

ライブを待つ客たち。

「……すげぇな」

「まだ始まってねぇぞ」

隼人が笑う。

「分かってるよ」

烈はステージを見つめる。

自分たちが普段練習している場所とは違う。

ここには。

何かが始まる前の空気があった。

やがて。

照明が落ちる。

会場が暗くなる。

「おっ」

烈が顔を上げる。

ステージへ。

一人。

また一人。

VOLT EDGEのメンバーが登場する。

歓声が上がる。

「うおおおお!!」

烈の目が見開かれる。

「……!」

最後に。

藤堂恒一がギターを肩に掛ける。

隼人が小さく笑う。

「来たな」

ステージ中央。

ボーカルがマイクを握る。

一瞬。

静寂。

そして。

――ジャァァァン!!

ギターが鳴った。

続けて。

――ドンッ!

ベース。

――ズドンッ!

ドラム。

一気に音が押し寄せる。

「――ッ!!」

烈の身体が反応した。

音圧。

振動。

照明。

歓声。

目の前で演奏される生の音。

テレビで見るのとは全然違う。

「……なんだ、これ」

烈は立ち尽くした。

ギターが走る。

ドラムが叩き込む。

ベースが低く唸る。

ボーカルの声が会場を突き抜ける。

観客が叫ぶ。

「うおおおお!!」

烈の胸まで。

その音が響いてくる。

「……スゲー」

気が付けば。

烈はステージから目を離せなくなっていた。

一曲。

二曲。

三曲。

時間が進む。

烈は。

完全にライブへ引き込まれていた。

最初は腕を組んで見ていた。

それが。

いつの間にか身体がリズムに合わせて動いている。

「……!」

ドラムのフィルが入る。

烈の目が輝く。

「今のスゲェ!」

隼人が横を見る。

「……お前」

烈は気づかない。

「なあ隼人!」

「ん?」

「ライブって……」

烈はステージを見たまま叫ぶ。

「こんなスゲーのかよ!」

隼人が笑う。

「だから言っただろ?」

美咲も笑っている。

「ほら」

「烈、完全にハマってるじゃん」

「ハマってねぇ!」

そう言いながら。

烈はステージから目を離さない。

美咲が笑う。

「どの口が言ってんのよ」

そして。

最後の曲。

会場の熱気が最高潮になる。

VOLT EDGEの演奏が始まる。

ギター。

ベース。

ドラム。

ボーカル。

五人の音が一つになる。

観客も一つになる。

烈は。

拳を握っていた。

「……すげぇ」

最後の一音。

――ジャァァァン!!

照明が一気に点く。

大歓声。

「うおおおおおお!!」

烈は。

しばらく動かなかった。

そして。

「……」

拳を握る。

「……サイコーだったぜ!」

隼人と美咲が笑う。

「だろ?」

「だから言ったじゃん」

烈は二人を見る。

その顔は。

今まで見たことがないほど楽しそうだった。

「こんな楽しいこと……」

ステージを見る。

「今まで知らなかったぞ!」

ライブ終了。

普通なら客はそのまま帰る。

だが。

隼人たちはステージ裏へ向かった。

「俺たち、片付け手伝うから」

「そうなの?」

烈が聞く。

「昔から兄貴のライブの時は手伝ってんだよ」

隼人が答える。

「それに、俺ここでもバイトしてるし」

「バイト?」

「うん」

楽器を片付ける。

ケーブルをまとめる。

機材を運ぶ。

アンプを移動する。

烈も手伝う。

「これどこ?」

「そっち!」

「おう!」

美咲も手伝う。

そこへ。

「隼人!」

声がした。

振り返る。

ライブハウスのオーナー。

佐伯剛だった。

「お疲れさん」

「佐伯さん、お疲れっす」

隼人と佐伯は気軽に挨拶を交わす。

烈は二人を見る。

「知り合いなのか?」

「兄貴たちのライブで知り合ったんだよ」

隼人が答える。

「それから、俺もちょくちょくここで臨時バイトしてんの」

佐伯が笑う。

「助かってんだよ、隼人には」

そして。

少し真面目な顔になる。

「なあ、隼人」

「はい?」

「そろそろ正式にバイトにならねぇか?」

「正式に?」

「ああ」

佐伯は腕を組む。

「暇な時だけでもいい。ライブの日だけでもいい」

隼人は少し考える。

「……ここで練習してもいいなら」

佐伯がニヤッと笑う。

「お前、ちゃっかりしてんなぁ」

「大事な条件ですよ」

「いいぞ」

「マジっすか?」

「その代わり、ちゃんと働け」

「了解!」

隼人が笑う。

こうして。

隼人は正式に佐伯のライブハウスでバイトをすることになった。

片付けが一段落する。

隼人が烈を呼ぶ。

「烈」

「ん?」

「兄貴たちに紹介するよ」

「え?」

烈が振り返る。

そこに。

VOLT EDGEのメンバーたちがいた。

ステージの上とは違う。

ライブを終えた彼らは。

少しリラックスした雰囲気だった。

隼人が兄に声をかける。

「兄貴」

「ん?」

「こいつ」

烈の肩に手を置く。

「俺のバンド仲間」

「朝倉烈」

烈は少し緊張しながら頭を下げる。

「朝倉烈です!」

メンバーたちは烈を見る。

少しの沈黙。

そして。

恒一が笑った。

「……そうか」

他のメンバーも。

烈の姿を見る。

大柄な身体。

真っ直ぐな目。

どこか野性的な雰囲気。

何かを感じ取ったように。

「頑張れよ」

その一言。

烈は少し驚く。

「……はい!」

「兄貴」

隼人が笑う。

「何か感じた?」

恒一は答えず。

ただ笑った。

「まあな」

そして。

恒一が美咲を見る。

「美咲ちゃん」

「お久しぶりです!」

「久しぶりだね」

恒一は笑う。

「隼人のこと、頼むよ」

「え?」

美咲が隼人を見る。

隼人は少し照れくさそうに胸を張る。

「俺が面倒みてんだよ」

「何よそれー!」

美咲が笑う。

「私が隼人の面倒見てるんでしょ!」

「いやいや、俺だって色々やってるだろ」

「どこがよ!」

二人が言い合う。

恒一は苦笑する。

「相変わらず仲いいな」

呆れたように言いながら。

その顔は。

どこか嬉しそうだった。

その時。

美咲が思い出したように言う。

「あ、そうだ!」

みんなを見る。

「今日は美琴も連れてきてるんです」

「美琴?」

隼人が振り返る。

「あっ」

少し離れた場所。

美琴が小さく立っていた。

人が多い場所が苦手なのか。

モジモジしている。

美咲が手招きする。

「美琴、おいで」

「……うん」

美琴が恐る恐る前へ出る。

美咲はそんな妹を見て。

少し笑った。

――可愛い。

本当に。

連れてきてよかった。

恒一が美琴を見る。

そして。

笑顔になる。

「ミコちゃん」

「……!」

美琴が顔を上げる。

「久しぶり」

「今日は来てくれてありがとう」

美琴の顔が赤くなる。

「あ……」

口を開く。

けれど。

緊張して言葉が出てこない。

「きょ……」

一度、息を吸う。

「きょ、今日は……」

顔が真っ赤になる。

「お、お邪魔しました……」

隼人が微笑む。

恒一も優しく笑う。

美琴は必死に続ける。

「すっごく……」

少し噛む。

「かっ……かっこよかったです……!」

言い切った。

美咲は。

妹を見つめていた。

そして。

少し嬉しそうに笑った。

――頑張ったね、美琴。

人前で。

自分からちゃんと話した。

それだけで。

美咲には十分だった。

「よかったね、美琴」

「……うん」

美琴は恥ずかしそうに俯く。

恒一が笑う。

「ありがとう」

「またいつでも来てくれよ」

「……はい」

帰り道。

烈は。

今日のライブを思い出していた。

「……ライブ」

拳を握る。

「スゲーな」

隼人が笑う。

「気に入ったか?」

「当たり前だろ!」

烈は即答する。

「最高だった!」

美咲が笑う。

「完全にハマったね」

「うるせぇ!」

烈は笑う。

「でも……」

少しだけ。

真剣な顔になる。

「俺たちも」

隼人を見る。

美咲を見る。

「いつか、あんなステージに立ちてぇな」

隼人が笑う。

「もちろん」

美咲も頷く。

「そのためのNOIZ JACKでしょ?」

烈は拳を握った。

「よっしゃ!」

「やるぞ!」

三人は夜道を歩いていく。

この日。

朝倉烈は初めて知った。

音楽は。

ただ音を鳴らすだけじゃない。

人を熱くして。

人を笑わせて。

人を夢中にさせる。

そして。

いつか自分たちも。

あの場所に立ちたい。

そう思わせるものなのだと。

番外編「BURN BEAT」第10話「LIVEってスゲー!」――完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。