第七話 「会えない週」
## 第七話 「会えない週」
月曜の朝。
バックヤードに貼られた新しいシフト表を見て、春翔は「あ」と声を漏らした。
「……被ってない」
来週。
悠真とのシフトが、一日もなかった。
横で別のバイトが笑う。
「珍しくない?」
「ですね」
春翔は苦笑しながら返した。
でも思ったよりショックを受けている自分に、少し戸惑う。
別に、ただの社員とバイトだ。
毎回一緒じゃなくても普通。
なのに。
なんとなく、シフト表が味気なく見えた。
「春翔」
「うわっ」
急に後ろから声がして、春翔は肩を跳ねさせる。
「びっくりした……」
「何してんの」
悠真がコーヒーの段ボールを抱えながら立っていた。
「いや、シフト見てました」
「来週少ないね」
「テスト期間なんで」
「あー」
悠真は軽く頷いて、そのままバックヤードへ入っていく。
それだけ。
それだけなのに。
春翔はなぜか少し期待していた。
『被ってないな』
とか。
『珍しいな』
とか。
そんな一言を。
「……何期待してんだろ」
小さく呟いて、春翔はシフト表から目を逸らした。
その日の営業中。
悠真は妙に静かな春翔を気にしていた。
「春翔、ぼーっとしてる」
「してないです」
「いやしてる」
「ちょっと寝不足なだけです」
本当だろうか。
動きはいつも通りだ。
でも、どこか上の空に見える。
「……体調悪い?」
「大丈夫ですって」
春翔は笑う。
でも少し無理してる感じがした。
閉店後。
今日は春翔が先上がりだった。
「お疲れさまでしたー」
「おつかれ」
エプロンを外しながら、春翔が出口へ向かう。
そこでふと立ち止まった。
「あの」
「何」
「来週、あんま会わないっすね」
一瞬。
悠真の手が止まる。
「……あー、そうだね」
「なんか変な感じ」
春翔は苦笑した。
「毎週いたから」
その言葉が、妙に残る。
悠真はレジ締めの途中で、小さく視線を落とした。
「……まあ、すぐ戻るでしょ」
「ですね」
春翔は少し安心したように笑う。
「じゃ、お疲れさまです」
「気をつけて帰れよ」
「はーい」
ドアが閉まる。
店内が静かになる。
その瞬間。
悠真は思った。
——あ、今日ちょっと静かだな。
でもたぶん。
それは店内の話じゃなかった。




