第六話 「仲良いっすよね」
## 第六話 「仲良いっすよね」
土曜の昼。
休日の店内は、平日より少し騒がしい。
家族連れに、買い物帰りの客。
レジ前には小さな列ができていた。
「春翔くん、テイクアウトお願い!」
「はーい!」
カウンター越しに返事をしながら、春翔が袋をまとめる。
悠真はその横でドリンクを作っていた。
「アイスカフェラテお待たせしました」
「ありがとうございます」
自然と動きが噛み合う。
春翔が注文を流し、悠真が作る。
半年くらい一緒に働いているだけなのに、妙にテンポが合った。
「……なんかさ」
レジに入っていた大学生バイトの一人が、ぼそっと呟く。
「二人、仲良いっすよね」
その瞬間。
春翔の手が少し止まった。
「そう?」
悠真は特に気にせず返す。
「いや、見てたらわかりますって」
「わかるわかる」
別のスタッフまで乗ってくる。
「春翔くん、悠真さんいる日めっちゃ機嫌いいし」
「え、やめてくださいって」
春翔が苦笑する。
でも耳が少し赤い。
「悠真さんも春翔くんには甘いですよねー」
「それ前も言われた」
「だって明らか違いますもん」
「普通だって」
「普通じゃないっす」
即答された。
悠真は納得いかない顔でミルクをスチームする。
そんなに違うだろうか。
ちゃんと動けるから任せてるだけだ。
周りを見てるし、フォローも早い。
だから少し頼りにしてる。
……それだけ。
「ほらまた」
「何」
「今、“頼りにしてる顔”してました」
「顔でわかるわけないだろ」
「わかりますって」
春翔が横で笑う。
そのタイミングで客が増え、会話はそこで途切れた。
ピークが落ち着いたのは、二時間後くらいだった。
「つっかれたー……」
春翔がカウンターに体重を預ける。
「土曜やばすぎる」
「今日はまだマシ」
「嘘だ」
そう言いながら、春翔が冷蔵庫からペットボトルを取り出す。
一本、自分。
もう一本を、悠真の前に置いた。
「はい」
「……何これ」
「差し入れ」
「なんで」
「今日めっちゃ働いてたんで」
「お前もでしょ」
「俺は若いんで」
「腹立つな」
春翔が声を出して笑う。
その笑い方につられて、悠真も少しだけ口元が緩んだ。
「ほら」
春翔がすぐ反応する。
「また笑った」
「うるさい」
「今日絶対機嫌いいっすよ」
「普通」
「俺いるから?」
一瞬。
悠真の動きが止まった。
春翔は冗談っぽく笑っている。
でも、なぜか答えに詰まった。
「……知らない」
「否定しないんだ」
「仕事戻れ」
「はーい」
楽しそうに返事をして、春翔はホールへ戻っていく。
その背中を見ながら、悠真は渡されたペットボトルを開けた。
冷たい炭酸が喉を通る。
なんとなく。
今日は、いつもより疲れが軽かった。




