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『今日もシフト、被ってます。』  作者: ともり。


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第十五話 「ずっと、このままじゃいられない」

## 第十五話 「ずっと、このままじゃいられない」


 金曜の閉店後。


 店内には、食器を片付ける音だけが響いていた。


 今日は春翔と二人シフトだった。


 それだけで、

朝から少し気分が軽かった自分がいる。


「悠真さん」


「ん」


「今日なんか機嫌よくないです?」


「普通」


「最近それしか言わないじゃないですか」


 春翔が笑う。


 その笑い声を聞くだけで、

胸の奥が落ち着く。


 もう認めるしかなかった。


 自分は春翔が好きだ。


 後輩としてじゃない。


 ただ一緒に働きやすいからでもない。


 会いたいと思う。


 声を聞くと安心する。


 他の人と笑っているとモヤモヤする。


 シフトが被るだけで嬉しい。


 全部、恋だった。


「……悠真さん?」


「何」


「またぼーっとしてる」


「考え事」


「珍しい」


「失礼」


 春翔がくすっと笑う。


 洗い物を終えて、二人並んでロッカーへ向かう。


 静かな閉店後。


 この時間が、

最近いちばん好きだった。


「そういや」


 春翔がエプロンを畳みながら言う。


「俺、来月から就活本格的に始まるんですよね」


 その言葉に、

悠真の動きが止まった。


「……そっか」


「だから、シフトもっと減るかもです」


 わかっていた。


 大学生なんだから当然だ。


 卒業もある。


 いつかここを離れる。


 ずっと今のままじゃいられない。


 なのに。


 想像した瞬間、

胸が苦しくなる。


「悠真さん?」


「……何でもない」


「絶対なんかある顔」


 春翔が少し覗き込むようにこちらを見る。


 近い。


 最近ずっと、

その距離に慣れすぎていた。


「……お前さ」


「はい?」


「いなくなるの、普通に困る」


 ぽろっと出た。


 春翔が目を丸くする。


「店的に?」


 その聞き方が、

少しだけ怖かった。


 ここで誤魔化したら、

たぶん今までと同じに戻れる。


 でも。


 それは嫌だと思った。


 悠真は小さく息を吐く。


「……それだけじゃない」


 一瞬。


 空気が止まった。


 春翔の表情が、ゆっくり変わる。


「悠真さん」


 呼ばれる。


 優しい声で。


 その瞬間、

もう隠せないと思った。


「俺、たぶん」


 心臓がうるさい。


 逃げたくなる。


 でも春翔は、

真っ直ぐこちらを見ていた。


 だから悠真も、視線を逸らせなかった。


「……春翔が思ってるより、お前のこと好きかもしれない」


 言った瞬間。


 店内が静まり返る。


 数秒。


 本当に、数秒だけ。


 それから春翔が、

少し困ったように笑った。


「……それ、ずるいです」


「何が」


「俺、ずっと前から好きだったのに」


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