第十四話 「会いたかった」
## 第十四話 「会いたかった」
その日は、春翔のシフトが休みだった。
大学の就活セミナーがあるらしい。
店に入った瞬間、
悠真は少しだけ肩を落とした。
……いや、別に。
今日は普通に人手も足りている。
忙しくもない。
問題ない。
なのに。
「悠真くん、今日静かだね」
パートの女性に笑われる。
「普通です」
「春翔くんいないから?」
「関係ないです」
「はいはい」
最近みんなそればかりだ。
悠真は小さくため息をついた。
営業中も、妙に落ち着かなかった。
洗い物のタイミング。
ドリンク作る時。
ふとした瞬間に、
『悠真さん、それ先やります?』
とか、
『今日疲れてる顔してる』
とか。
春翔の声を探している自分がいる。
「……重症かも」
ぽつりと漏れる。
閉店後。
一人でレジ締めをしていると、スマホが震えた。
画面を見る。
春翔。
無意識に、少し口元が緩む。
---
春翔
『就活セミナー終わりました』
---
その一文だけなのに、
妙に嬉しい。
---
悠真
『おつかれ』
---
既読はすぐついた。
---
春翔
『今日そっちどうでした?』
---
その質問に、
悠真の指が止まる。
どうだった。
普通だった。
でも。
---
悠真
『静かだった』
---
送ってから、
少しだけ後悔する。
なんだその返事。
でも数秒後。
---
春翔
『俺いないから?』
---
思わず笑ってしまった。
ほんと、
こういうところだ。
---
悠真
『うるさい』
---
既読。
少し間が空く。
それから。
---
春翔
『……でも』
春翔
『俺はちょっと会いたかったです』
---
その瞬間。
悠真の呼吸が止まる。
画面の文字を、何度も見返す。
冗談っぽい文じゃない。
変にふざけてもいない。
ただ真っ直ぐだった。
胸の奥が熱くなる。
こんなの、
勘違いするに決まってる。
なのに春翔は、
たぶん無自覚だ。
---
悠真
『急にそういうこと言うな』
---
送信。
既読。
数秒後。
---
春翔
『嫌でした?』
---
その返事を見て、
悠真は思わず目を閉じた。
嫌なわけがない。
むしろ。
嬉しくて困ってる。
---
悠真
『……嫌じゃない』
---
送った瞬間、
心臓が跳ねる。
しばらく既読がつかなかった。
やばいこと言ったかもしれない。
そう思った頃。
---
春翔
『よかった』
---
たった四文字。
なのに、
その一言だけで今日はもう眠れそうになかった。




