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視える転生令嬢は悲劇のヒロイン(!?)なお父様を救う為に魔女様に弟子入りします!!  作者: 彩紋銅
四部

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91 パーガトリー君 

 ◇


 蜘蛛のような小型ゴーレムが一斉に襲いかかってくる。

 護衛の方々が応戦するが、数が多すぎる。


「『重力の枷グラヴィティ・シャックル』!」


 魔法師のキーリーさんが魔法を発動。

 分析魔法によると、重力で対象の動きを封じる、あるいは押しつぶす魔法のようだ。


 キーリーさんの魔法で小型蜘蛛ゴーレムの動きが封じられ、その隙に他の皆さんが対処していく。

 なかなかに連携が取れている戦闘スタイルだ。


 だけど、小型蜘蛛ゴーレムは次々に召喚されてキリがない。

 一体どこから送られてくるんだ!?


 こうなるともう、大本をなんとかしないと無理そうだ。


 私は大元の全身スーツの男性を分析魔法で視る。


 ──え?


 あの人、分類上はゴーレムなのか? 見た目は人間にしか見えないけれど……


 いや、それよりもなんとかこの状況を打破できる情報を……!


 どうやら、彼はいわゆる()()()()らしい。

 長い年月、休眠状態だったところに、いきなり魔力を流されたためにバグった的な感じだろうか?


 つまり、それを解決すればこの状況も収まるはずだ。


 でもどうしよう?


 混乱しているなら、眠らせるのが一番手っ取り早い。

 しかし、〝眠り〟は闇魔法の領分。

 私には使えないし、眠り薬なども持っていない。


 だけど、私には闇の精霊オレオールがいる!


 ゴーレムに効くかは不明だけど、やってみる価値はある。


 光の帯(ライトリボン)で拘束して、その隙にオレオールに眠りの魔法をかけてもらえれば……


 ……っと、いけない。一人で勝手に実行してはいけなかった。

 ついさっき、お父様に注意されたばかりだ。


 私は五歳の頃(むかし)の癖で、何でもかんでも自分ひとりで解決しようとしてしまうところがあるのだ……


 というわけで。


「お父様! あの方はどうやら、混乱状態にあるみたいです!」


「混乱状態?」


「なので、オレオールの魔法で眠らせてしまおうかと」


『なるほど』


「分かった。シンシア、オレオール頼んだよ!」


「はい!」


『はいよ』


 お父様に了承をもらい、光の帯を展開。

 それを周囲に気づかれないように、ゴーレムの彼に伸ばす。


 そして──


「──!?」


 その体を拘束することに成功。


 同時に、オレオールが睡眠の魔法を展開。


闇眠(ダークスリープ)!』


「──!」


 すると、ゴーレムの彼は意識を失い、その場に倒れた。


 周囲にいた小型ゴーレムも消える。


 眠りの魔法は効いたみたいだ。


「何とか、なったのか?」


 騎士のヒューゴさんの言葉で、一同は警戒を解いた。


「彼は?」


「気を失っています。その、彼はゴーレムのようで……えーと、この巨大ゴーレムの頭脳体、らしいです?」


 キャロルさんの言葉に、私は分析結果を伝える。

 頭脳体って何?


「なるほど。巨大ゴーレムも色々調べたいのは山々ですが、一旦戻りましょう。彼のことも調べたいので、一緒に連れて帰りましょう」


 こうして、私たちの遺跡調査は終わった。


 ゴーレムの彼は、冒険者のマヌエルさんが背負って運ぶことになったのだが……


「おや、皆さんこんなところにいたのか!」


 格納庫を出ると、どこかへ行っていたカンタロープ侯爵とリアムさんに合流。

 妙に上機嫌だ。


「おや、どこに行っていたんですか?」


 と、キャロルさん。


「いえいえ、ちょっと色々と見学をねぇ。そちらの方は?」


「格納庫で保護した方です。そろそろ、戻りますよ」


「そうですか! ではそうしましょう!!」


 ……なんだか怪しいな?


 まあ、いいか。

 なんだかとても疲れたし、早く帰りたいし。


 その後、私たちは拠点に戻った。

 エリカさんに事態を報告。


 保護したゴーレムの彼のこともちゃんと調べたいので、馬車でアンダースノウ侯爵領の宿泊施設に移動。

 カンタロープ侯爵とリアムさんは、そのまま帰って行った。


 エリカさんとお父様、そしてジャイルズ様は、もう少し現地で打ち合わせがあるので、残る。レオパルドプランタ伯爵領で仕事をしていた、アゲートの魔女の師匠がこのあと合流するらしい。

 私はキャロルさんと、魔法師のキーリーさんと共に宿泊施設へと向かった。


 ◇


 ホレイシオお祖父様に用意してもらった宿泊施設は、カプセラ伯爵領の調査をする方々のために作られたもので、研究室や実験室、護衛の方々のための訓練場なども併設しており、小規模の砦のような施設になっている。


 つまり、調査用に新しく作られた場所なのだ。


 といっても、できたのは数年前だし、避暑地のホテルのような外観にして、カプセラ伯爵領の調査が済んだら、一般客用にも開放する予定だとか。


 そして、キャロルさん達は、それぞれ研究室を私物化しているらしい。

 調査器具も持ち込んでおり、そこで簡易的な調査分析もできるとか。


 そこでゴーレムの彼のことを、私の分析も使って詳しく調べてみた。

 すると彼は、生体を使ったゴーレムであることが分かった。

 しかし、機械部品みたいな生身ではないモノも使われているので、生物と無機物の合成された肉体を持つ、ハイブリッドなゴーレムということになるらしい。


 眠らせて倒れた時に、少し怪我……いや、破損をしたらしく、キャロルさんは何か迷っているようだ。


「もしかしたら、生物に作用する治癒魔法が効きにくいかもしれませんねぇ。あるいは両方効くか……

 いや、でも、闇眠り(ダークスリープ)は効果があったんですよね?

 こういうのは、ジャイルズ様の方が詳しいのですが……」


 そのジャイルズ様は現在、ボールドウィン様達と打ち合わせ中だ。


「そうですね。じゃあ、私の修復魔法はどうですか?」


「ああ、それでしたら! やってみましょう」


「はい!」


 私は、分析魔法を使いつつ、修復魔法をゴーレムの彼にかけてみる。

 といっても、深刻な破損箇所はなく、体の表面についた傷は直すことができた。

 内部も損傷はなさそうだ。


「直りましたね! 生体部分があるとはいえ、彼はゴーレム()という分類なのでしょうねぇ」


「なるほど〜」


 その後、私たちも疲れたので休むことにした。

 エリカさん達はその日の遅くに戻ってきたみたいだけど、私はぐっすり眠っていて気づかなかった。


 ◆


「あるじどのーーっ!!」


 そんな叫び声と共に、部屋のドアが破壊され、誰かが飛び込んできた。


「──わぎゃっ!?」


 騒音で飛び起きたと同時に、視界が、金色で埋め尽くされた。


 何かが覆いかぶさっていて、身動きが取れない──!?


 あ、新手の金縛り、か……?


「あるじどのっ、あるじどの〜〜っ! ()()()()()()()()〜〜!!」


「何何何何〜〜!?」


 誰かに思い切り抱きつかれて、頭をすりすりされている!?


「こら、パーガトリー君! 素っ裸で女の子に抱き付いてはいけない!!」


 と、キャロルさんの声!


 って、素っ裸!? 何? どういう状況!? 怖いんだけど!!


「あるじどの〜」


 泣き声と共に、私に覆い被さっていた金色が引き剥がされる。


「な、何事ですか、朝から……」


「いや、すまない。パーガトリー君。えー、ゴーレムの彼のことなんだが、色々調べていたら全身スーツが解除されてしまってね。

 同時に目を覚ましたので、服を準備している間に話を聞いていたのだ。

 そこで、名前を聞いたまではよかったものの、いきなり『主殿』と叫んで研究室を飛び出してしまったのだ」


「それで、この状態ですか……」


「あるじどの〜、あるじどの〜」


 私はベッドの上に身を起こしているのだが、そこにゴーレムの……パーガトリー君だっけ? が抱き付いている状態だ。

 一度引き剥がしたのだが、どうしてもこうなってしまうのだ。


 近くでみると、まつ毛も金色で長くて、とても整った美しい顔をしている。瞳の色も少し色合いの違う、金色だった。

 そんな人物に裸で抱きつかれるのは、色々まずいと思うのだが……


 いや、それよりも──


「あるじどのって、主人殿? ご主人様ってこと? 私が? 君の?」


「はい! 主人殿は自分のご主人様です!!」


「え? なんで?」


「昨日、契約をしました!」


「え? そんなことした?」


 魔力を流して、少し怪我を直したぐらいしかしていないけど?


「いや、そんなことより。少し離れて欲しい。あと服を着て!」


「はい!」


 パーガトリー君は、パッと私から離れると、床の上に正座した。


「私も着替えたいから、キャロルさんの言うことに従って待っていて。そして、服を着て! いい? 分かった?」


「分かりました! ウフフ、主人殿もお変わりない様で!」


 そう言って、パーガトリー君はキャロルさんを引きずって私の部屋を後にした。


 どうやら、誰かと勘違いしているみたいだな……


「なんだったんだ……」


 とりあえず、身支度をしてから、キャロルさんの研究室へと向かった。


 ◇


「えーと、名前はパーガトリー君で、君はあの巨大ゴーレムの頭脳体なんだね?」


「そうです! 主人殿!! あ、名前は自分たちのシリーズ名ですが、同シリーズはもう自分しかいないので、それが名前でいいです!」


 ちゃんと服を着たパーガトリー君は、目をキラキラ輝かせながら語る。

 まるで遊びたがりの大型犬のようだ……


「私は君の主人殿なの?」


「はい!」


「契約した覚えはないんだけど……」


「自分に魔力を直接流してくださいました! その時に契約は完了しています!!」


 確かに、格納庫で声が聞こえたときに、何故か分からないが、その声に従って、巨大ゴーレムに魔力を流してしまったのだ……


「あの時か〜」


 私は、キャロルさんを見る。


「まあ、その方が話がスムーズに進んでいいのではないですか? さて、エリカ様たちもご起床したので、続きは朝食の後に行いましょう」


「そうですね……えーと、パーガトリー君は食事は取れるの?」


「食べなくても魔力があれば平気ですが、そういった機能もあります!」


「じゃあ、一緒に朝食だ」


 とりあえず、そういうことになった。

 面倒なことは、朝食後の私がなんとかしてくれるだろう……







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