90 巨大な大発見!?
◇
準備ができたので、私たち一行は、カプセラ伯爵領の山の内部から見つかった、遺跡の中へ足を踏み入れた。
調査済みの部屋には、魔獣除けの効果がある灯りが灯されている。
少し緑がかった魔導ランプの光は不思議な感じだ。
遺跡の中は意外にも広く、天井が高い。
地下にあるので、ジメジメしているのかと思ったけど、意外とそうでもなかった。
土というか、埃っぽい匂いはするけど不快というほどではない。
考古学者のキャロルさんが部屋を一つ一つ案内してくれるが、どの部屋も家具などは何もなく、精霊らしきものもいない。
たまに、小さな虫がカサカサしているけど、まあそのくらい。
というか、一部屋一部屋が広い。
本当に、ほぼ調査は済んでいるらしい。
「ここは恐らく武器庫、こちらは武器以外の倉庫ですね」
「何もないのに、よく分かりますね? というかここは、軍事施設なのですか?」
と、ジャイルズ様。
「ええ、そうです。各部屋についてですが、部屋の広さと現在の軍事施設と照らし合わせて、推測しています。
あ、こちらは訓練場ですね!」
奥に進むと、小型の魔獣が潜んでいた部屋もある。
魔獣除けのランプが、間に合わなかった部屋だ。
その魔獣は、一言で言うと黒い毛玉のように見えた。
四十センチほどの黒い毛玉に、トビネズミのような後ろ足と尻尾が生えた奇妙な魔獣だ。
頭のない一頭身だが、毛玉の奥に緑に微かに輝く二つの目が見える。
なんというか、可愛らしさよりもぞわぞわした不快感や恐怖心が勝つのは、魔獣だからだろうか?
ネズミが魔素の影響で変異した魔獣らしく、痺れる系の毒を持っているので討伐対象らしい。
そいつらは護衛の皆さんが倒してくれた。
私やお父様はその他の皆さんを守るために、一応、光属性魔法で防御壁を展開していた。
次の部屋に進む。
「この遺跡って、どれくらい前のものなのですか?」
「恐らく、神代のものでしょう」
私の問いに、キャロルさんが答えてくれる。
「え? そんな昔なのですか?」
神様のいた時代にも、そういうものはあったんだな〜。
そういえば、昔読んだ神話の本には、神様以外にも様々な種族がいると書いてあった気がする。
そのほとんどは、悪神によって滅ぼされたんだっけ?
ちょっと、うろ覚えだけど……
「ええ。その昔、この辺りは神々と瘴魔の大規模な戦があったという伝説があります。それを証明する手掛かりになるかもしれません。
ですからこれは、歴史的発見なのですよ!」
「なるほど〜」
私とキャロルさんの会話を、皆微笑ましげに聞いている。
瘴魔は、魔物が進化(?)したものだっけ?
人の姿をとり、世界を滅ぼすために暗躍しているとか。
でも、それに水を刺す男が一人。
「おい、まだ歩くのか? 俺は疲れたんだが?」
カンタロープ侯爵だ。
なんというか、
空気の読めない人だな〜。
いや、気持ちは分からなくはないが、もう少し心に余裕を持つべきだと思うよ?
というか、まだ歩き始めて十分くらいしか経っていないんだが……
「ええ、もうすぐです。行きましょう」
キャロルさんは特に気にした風でもなく、一同はさらに奥へと進んだ。
◇
そうして数十分ほど歩くと、目的の部屋の前に到着した。
その間も、カンタロープ侯爵がうるさかったけど、みんな特に気にしていなかった。彼の護衛のリアムさんは、そんな彼をずっと宥めていた。
かなり大きな扉で、物々しい雰囲気だ。
扉のそばに、画面と文字を打ち込むためのボタンが設置されている。
……なんか、ファンタジー世界なのにSFっぽい気配があるな。今更だけど。
いや、国境を囲んでいる結界発生装置も、こんな感じだったか。
「ショーン様、シンシア嬢。分析で扉を開けられますか?」
「やってみます」
キャロルさんの言葉に、お父様が応える。
お父様も、私と同じ分析の特異魔法の持ち主だ。
私の分析とは少し得意な部分が違い、そのものの状態や的確な組み合わせが分かったりするらしい。
お父様は分析の特異魔法で、扉の状態を視る。
「……へえ、凄いですね。この扉、魔力がまだ生きている」
「え?」
「ただ、かなりの年月使われていないから、呼水となる魔力が必要ですね。どうしますか?」
お父様の言葉に、キャロルさんは「分かりました、お願いします」と言った。
そしてみんなの方を向いて、言葉を続ける。
「この先は、まだ調査がされていません。魔力調査で危険な魔獣などはいないことは分かっていますが、警戒してください」
その言葉に、護衛組と冒険者組も警戒心を高める。
そして、お父様が自分の魔力を流して、扉の魔力を再起動させた。
すると、扉に青白い光が走り、そのそばにあった画面に視たことのない文字を映し出す。
「古代文字ですね。……パスワードが必要のようですが……入力しても?」
「分かるのですか?」
「文字の意味までは分かりませんが、必要な文字の形は分かるので……」
「お願いします!」
お父様は、パネルに触れて、パスワードを入力していく。
そういうことも分かるんだ、お父様。
私にはちょっと無理かも?
いや頑張ればできる? いや、面倒だからやらないかな。
そして、入力が終わると、扉に一際強く青白い光の線が走る。
魔力が流れたようだ。
「では、行きますよ──」
扉が開く。
といっても、内部は未調査なので薄暗い。
そして、他の部屋よりも肌寒かった。
「魔獣の気配はないですね」
『精霊もいないな』
冒険者のマヌエルさんとオレオールが言った。
「灯をつけてもいいですか?」
「お願いします」
魔法師のキーリーさんがキャロルさんに許可をもらい、光属性魔法で辺りを照らす。
光属性魔法の灯りなら、引火することもないね。
そして──
「──これはっ!?」
「な──!?」
目の前に、巨大なゴーレムがいた……
◇
「これは……」
「ゴーレム、ですね。巨大な……」
エドガーさんとお父様が、困惑している。
お父様は、分析の特異魔法で視ているらしい。
私の特異魔法にも、目の前の巨大な人型がゴーレムだと表示されている。
「ゴーレム、ですか……」
「これが……」
分析によると、大きさは約二十メートルくらい。
前世の巨大ロボットアニメ宜しく、直立状態で格納されている。
そんな巨大ロボ……いや、ゴーレムが収まっているので、この部屋もかなり広くて天井が高い。
学者さん二人とジャイルズ様は大発見に湧いており、お父様と共に、巨大ゴーレムの近くにある装置に向かった。
分析によると魔動装置は、巨大ゴーレムの調整用の機器らしい。
他の方々は驚きつつも周囲を警戒している。
「ふむ、ここは格納庫のようですね。神話の中に巨大ゴーレムを使って戦ったという、記述もありますし……」
そんな伝説があるんだ。
神話系の話は、五歳の時に少し読んだきりだな〜。
……あれ? カンタロープ侯爵がなんか静かだけど、いない? どこに行った?
『──』
「え?」
その時、何かが聞こえた気がして、私は巨大ゴーレムを見た。
だが、大人たちが騒いでいる以外の声は聞こえない。
「?」
気になった私は、特異魔法でさらに周囲を見渡し、最後に巨大ゴーレムに目を止めた。
ん? 内部になにか──
『主──魔力を──』
「え?」
『魔力を……』
「……魔力?」
……なんだ? 魔力を? 流せばいいのだろうか?
その時の私は、何故か疑問にも思わず、巨大ゴーレムにつながる魔力配線を見つけると、そこから自分の魔力を流した。
ついでに、巨大ゴーレムに修理箇所があったので、私のもう一つの特異魔法〝修復〟で直せる範囲を修理してみる。
すると、その巨大ゴーレムの目に光が灯り──起動した。
◇
「なっ!? これは……」
「シンシア? 何かしたのかい?」
「──え? あれ? えーと?」
お父様に言われて、自分のしたことに気づく。
「えーと、その、声? が聞こえて……魔力を欲しがっていたので、私の魔力を巨大ゴーレムに流したのです……何故かそうしないといけないような気がして……」
「起動しているね。シンシア、何かするときは事前に報告しなさい」
お父様に叱られてしまう。
でも、正直、いまだに美少女感が抜けていないので、あんまり怖くはないのである。筋トレのおかげで、昔よりムキムキにはなっているけど。
「申し訳ありません〜」
「まあまあ。結果的には良い感じですし!」
と、キャロル様が宥める。
「おお〜、素晴らしい。このゴーレムは古代の兵器だったみたいだね。見た目通りだけど」
ゴーレムを製作している商会のジャイルズ様は、大興奮だ。
確かに巨大なゴーレムは、赤色をメインカラーにクリーム色の差し色が入った甲冑を纏っている騎士のように見える。
『……あ、ああああ!!』
「え?」
「誰の声!?」
我々の前に、魔法陣が出現し、そこから何者かが現れる。
長い金髪の……男性?
首から下は、前世のロボットアニメに出てきそうな、黒い全身スーツを着ている。
「6前qaf誰q@? 何t@起gwe.?」
「え?」
「答5\! 侵入者w@3.uof@、排除r.!!」
分析によると、古代の言葉らしい。
えーと、意味は……ダメだ。私に古代語の知識がないから、解析できない!
でもなんか、敵意は伝わる!
「皆さん、我々の後ろに!」
「防御壁を張ります!」
護衛の方々が武器を構えて、臨戦態勢に入る。
お父様が光属性魔法で、防御壁を張る。
『あいつ、あの大きなゴーレムの一部だな』
と、オレオール。
「え?」
全身スーツの男性の周囲に、小さな魔法陣が展開され、そこから小型犬サイズのゴーレムが現れる。
その姿は足がやたら長い蜘蛛のような造形で、動きも蜘蛛そのものだ。
その蜘蛛型ゴーレムは素早い動きで、私たちに向かってきた──
単位について。
グラム(g)→グラマ(g)
メートル(m)→メトラ(m)




