88 領地・遺跡発見!①
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どうも、転生令嬢シンシア・カプセラです!
現在、うちの領地であるカプセラ伯爵領が、大変なことになっているんですっ!
ショーンお父様と再婚したエリカさんが女伯爵を務めるカプセラ伯爵領は、この国の最北に位置する、ほとんど山しかない土地だ。
強いていうと、エリカさんのご実家のアンダースノウ侯爵領と、お父様のご実家であるレオパルドプランタ伯爵領、そして、北西の辺境伯領と隣り合っている事くらいしか自慢(?)のない土地だった。
しかしなんと、領地内の山の中から〝古代の遺跡〟が発見されたのだ!
発見されたのは今年の夏。
国の方では以前からその山周辺に何かがあると踏んでいたらしく、エリカさんが領主になってからは、その調査が本格的に進められていた。
しかし、山に住む精霊の妨害や、冬には雪深くなる土地柄ゆえ、なかなか調査が進まなかったので、発見までにかなりの時間がかかったらしい。
「というわけで明後日、私もお父様も領地に行かなければならないのよ!」
私とお父様が領地に行く理由は、分析の特異魔法が必要だから。分析魔法はお父様の一族に現れる『特異魔法』だ。
他にも、国所属の学者さんと護衛の騎士や冒険者と出資者の方が一緒に内部に入る予定。
もちろん、普段からお世話になっているチランジア公爵──今はご長男様に当主の座を譲っているので、ボールドウィン様とお呼びししている──も一緒だ。
もう、五十代半ばだけど、いまだに元気というか、ますます元気だ。
ご本人曰く、宰相や公爵家当主という重圧から解き放たれた結果らしい。
その分、ご長男で現宰相のダライアス様は、色々と大変そうだけど。
さて、実は私、自分の家の領地に行くのは初めてだ。
だって、山しかないし、誰も住んでいないから。
調査員たちの仮設事務所はあるけどね。
その隣のレオパルドプランタ伯爵領と、アンダースノウ侯爵領には毎年お邪魔してるけど。
ちなみに、レオパルドプランタ伯爵領はこの七年間で、ほぼ完全に師匠であるアゲートの魔女の手によって、理想的な魔術都市へと生まれ変わっていたりする。
記憶水晶が産出される双子山周辺も、自然を残しつつ採掘などしやすいように整備され、警備も厳重。今ではこの国で上位の裕福で発展した領地となった。
あと、従姉妹のシャノンはアンディ君のご家族の、ドウェイン様と本当に婚約してしまった。
シャノンの方からグイグイ行ったらしい。シャノン、スゴイ!
『へえ、大変だ。ロイ君はどうするの?』
空中に浮かぶ画面の向こうで、アンディ君が応える。
魔王国に武術留学してから約二年、アンディ君も結構男らしくなった気がする。昔は、もっと可愛かったのになぁ〜。
最近は、ジョニーさん達と冒険者としても活躍しているそうだ。
まだ十二歳なのに、アンディ君もスゴイ!
「しばらくは、エリカさんの実家で預かってもらうらしいわ。領地に連れて行くのは、まだ危険だからね」
『それ、ロイ君納得するのかな……?』
「う〜ん。昔みたいに泣き叫ぶようなことは、ないとは思うんだけど……」
でも最近は言葉の使い方が分かってきたのか、チクチク文句を言ってくるようになった。
たまに本当に四歳児? って思うような語彙を使うことがあるけれど、私も年相応じゃない五歳児だったしな……
いや、私の場合は絶望の未来を変えるために、必死だっただけだけど。最近は年相応よ? 多分。
正直、前世の記憶も原作に関すること以外は朧げになってきている。その原作に関する記憶も、キッカケがないと思い出さないし……
いやでも、原作の『リザンテラ』に、山から遺跡が見つかったというエピソードは無かったから、私の前世の知識が通用しない案件なんだけどね。
「多分、ちゃんと説明すれば分かってもらえるとは思うけどね〜」
『まあ、ロイ君は賢いからね。そろそろ僕のことも、認めてくれると嬉しいんだけど……』
と、遠い目をするアンディ君。
私の弟のロイはイヤイヤ期が終わった現在でも、なぜかアンディ君にだけ辛辣なのだ。
私とアンディ君の婚約を知ったときは、それはもうこの世の地獄のように泣き叫んでいた……
ん? つまり、〝婚約〟がどういうものか理解していたってこと?
もしかして、ロイって……天才なのかもしれない!?
「……」
『シンシア? どうかした?』
「ううん。もしかしたら、ロイが天才である可能性に思い至っただけ!」
『そ、そうか。それで、今週末はそちらに帰れると思うから、その、よろしく!』
「う、うん! 私も週末には王都に戻ってきていると思うから、大丈夫よ!」
私は、何となく赤くなってしまう。
アンディ君のいる、ユウオウ魔王国は魔族が主な種族であり、魔法や魔法技術の最先端を行く国だ。
なので、どんな場所にでも正確に、素早く転移することができる。
そんな国にいるアンディ君も、好きな時にこちらへ戻ってこられる。
あの感動(?)の別れは何だったのかと思うくらいに!
それで週末は基本的に、私と一緒に魔女工房で過ごすことが多いのだけど……
十二歳にもなると、お互い男女の体になってくるわけで、その、一緒に寝るのはまだいいとしても、一緒にお風呂はそろそろよろしくない気がするのだ。
だけど、自分から言うのは相手を傷付けるような気がして、言い出せずにいる。
そんなわけで、ちょっと恥ずかしいのだった。アンディ君にバレてないといいけど。
『さて、そろそろ寝る時間だね』
「そうね。それじゃあ──」
『おやすみ、シンシア』
「おやすみ、アンディ君」
そうして、魔動画通信を切った。
この瞬間は、なぜかいつもちょっと寂しい……
さて、さっさと寝よう。
明日は領地に行くために荷造りしないと。
もっと早くしとけよって感じだけど、実は今日まで修理の依頼を必死にこなしていたのだ。
魔女工房はしばらくは休業にするので、残っている仕事はその前にすべて終わらせたいというのは、人の心理だからね。
頑張ったおかげで修理はすべて完了。
今日までに修理品を取りに来れない人は、すべて送料ウチ持ちで配達になった。
そうして、私は魔動ランタンの灯りを消して、ベッドへと潜り込んだのだった──
◆◇◆
「おやすみ、シンシア」
『おやすみ、アンディ君』
魔動画通信の通信が切れると、途端に部屋の中が静かになる。
僕に取り憑いている──いや、今は契約している、二等身ドラゴンのネロは薄情にも、すでに寝入っていた。
明日はまた、武術の修行と冒険者として依頼を受ける予定が入っている。
僕も早く寝ないといけないのでベッドに潜り込むが、シンシアと話した夜は気分が高揚して、なかなか寝付けなくなる。
彼女のことを考えるのは楽しいけど、次第に内容がその……なぜか際どいものになってしまうので、夜寝る時などには考えてはいけない。
別のことを考えよう。
魔族が治めているユウオウ魔王国に留学して早二年。
十二歳になってようやく、冒険者として実践経験を積めるようになった。十二歳にならないと、冒険者の資格がもらえないのは、全国共通らしい。
成人しないと昇級できないのは難点だけど、それでも上位冒険者と組めば様々な依頼を受けることができるのは大きい。
ちなみに、師匠であるジョニーさんはS級ランクの冒険者らしい。
ジョニーさん、実はかなり凄い人だった。
最近は魔王国で知り合った、先輩冒険者のブルースさんと三人でパーティを組んで、依頼を受けるのが日課だ。
それ以外は、ドライエックさんの伝手で来てくれる、魔王国の武人たちに手合わせをお願いしている。
おかげで修行には事欠かないけど、生傷は絶えないのだ。
シンシアはいつも塗るタイプの回復薬を用意してくれる。本人は治癒魔法が使えないのを、残念がっていたけどその心だけで十分だ。
一緒にお風呂に入ると、傷を労わってくれるし……っと、眠れなくなるから、シンシアのことは考えないようにしないと!
現在の目標は、邪竜ネロの身体を加工して作られた武器たちに認められること。
魔力の源の魔法珠と甲冑の姿になる盾には認められたけど、この二年間はその扱いを習得するために使ったので、新たな武器はまだ扱えいない。
二年前、シンシアの救出時に扱えたのは、ドライエックさんの協力があったからで、僕自身がちゃんと魔法珠と盾を扱えたわけではなかったからね。
今は、その二つはなんとか扱えるようになったので、そろそろ新しい武器を扱えるようになりたいけど、ネロはその辺りどう思っているのか……
あ、そういえば、剣も使えるけど、まだ仮契約なんだよな……
隣で涎を垂らしながら、『もう食えねぇ〜よ〜』と寝言を言っている姿を見ると、少し不安になる。
コイツ、本当に邪竜の化身なのだろうか。
『にゃははははっ』
寝言で笑い出すし……
うん、コイツは多分、何も考えてはいないのだろう。
悩むのがバカらしくなったので、本格的に寝ることにした。
翌日の目覚めはバッチリだった。




