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転生した少年エトは、魔法の銃で無双する! ~未亡人のママさん冒険者(娘あり)と一緒に甘く楽しい冒険生活、送ります!~  作者: 月ノ宮マクラ


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007・ギルド登録

 青い目を丸くしながら、僕は声の方を振り返った。


 そこに、3人の男たちが立っている。


 1人は金属鎧に大剣を負った剣士風の男、もう1人は革鎧に短剣と盗賊風の男、もう1人も革鎧に弓と矢筒を背負った男――全員、冒険者の格好だ。


(というか、冒険者だね)


 全員、僕より体格が良く、赤ら顔、そして、酒臭い。


 ああ、酔っ払いだ。


 理性が薄れた彼らは、据わった目で僕を睨む。


「どけ、ガキが」


「目障りなんだよ、家帰って、ママのおっぱいでも飲んでろ、ぎゃははっ」


「……おい、何だ、その目は? ぁあ?」


 ドン


 軽く突き飛ばされる。


(おっと、手を出したな?)


 無力な時なら怖かったかもしれないが、あの角熊に比べたら、人間の迫力などたかが知れている。


 そして、今の僕には『マギ・ブラスター』がある。


 全員、撃ち抜いてやろうか?


(な~んてね)


 余計な労力を割きたくない僕は、無言のまま両手を軽く広げ、後ろに1歩下がった。


 でも、相手は酔っ払い。


「おい、テメェ、何黙ってんだ?」


「くそ、澄ました顔しやがって。俺らを馬鹿にしてんのか?」


「この野郎……教育してやらぁっ」


 勝手に怒りを増幅し、3人とも拳をバキバキ鳴らす。


(わぁ……)


 マジ迷惑人間。


 周囲に人はいるけれど、全員、遠巻きに見ているだけだ。


 う~ん、正直、無駄な争いはしたくないけど、意味なく殴られるのも嫌である。


 ここは、本気で『マギ・ブラスター』の出番かもしれない。


 さすがに殺しはしないけど、


(でも、足を撃ち抜くぐらいなら――)


 と、覚悟を決め、



「――何をしているのです」



 瞬間、美しく、氷のように冷たい声が響いた。


 その静かな声は、けれど、重く場に広がり、3人の男たちは全員、動きを止めていた。


 声の方を見る。


(マルティーナさん?)


 あの美しい未亡人さんがいた。


 驚く僕に、彼女は優しく微笑む。


 けれど、3人の男を振り返った美貌は、まさに凍てつくような氷の感情が宿っていた。


 その手には、照明に妖しく輝く槍がある。


 キシッ


 彼女は1歩、男たちに近づく。


 突然、現れた美しい獣人の女の存在に、酔っていた男たちは一斉に表情をしかめた。


「風槍(かぜやり)の狼(おおかみ)……」


「ちっ」


「お前には関係ねえだろっ?」


 と嫌そうに言う。


(風槍の狼?)


 多分、マルティーナさんの事だと思うけど、彼女、有名人なのかしら?


 と、彼女の紅い唇が動く。


「いいえ、この子は私の連れです。何かあるなら、私が相手をしましょう」


「は? 連れ?」


「マジかよ……」


「くそ、白けちまったぜ」


 男たちは悪態を吐(つ)き、暴力の気配を霧散させる。


 やがて、周りの人たちを一睨みし、「おら、見世物じゃねえぞ」「どけっ」「ちっ、くそがっ」と威嚇しながら、足音荒くギルドの建物を出ていった。


 それを見届け、美しいお母様は息を吐く。


 よく見れば、槍を持つその白い手がかすかに震えていた。


(…………)


 僕はその様子を見つめ、


 キュッ


(ん?)


 いつの間にか、幼女が僕のそばにいて、心配そうな表情で僕の右手を小さな指で軽く摘んでいた。


「だ、大丈夫、お兄様?」


「え? あ、うん」


「そ、そう」


 と、少し安堵した表情になる。


(……もしかして、僕が怖い思いをしたと気遣ってくれたのかな?)


 触れる小さな手は、とても温かい。


 そして、マルティーナお母様が僕の方へ来ると、幼女はスルッと指を離した。


「ご無事ですか?」


「あ、はい。あの、ありがとうございました」


「いえ、エト君が無事でよかったです」


 彼女は安心したように微笑む。


 男たちに見せた、あの冷たい雰囲気とは真反対だ。


(……うん)


 武装した3人の男を相手に、僕のために1人で立ち向かってくれたのだと思うと少し胸が痺れる。


 そして、ふと思い出す。


「あの……マルティーナさんって有名人なんですか?」


「え?」


「いえ、ほら、『風槍の狼』って」


「ああ」


 彼女は苦笑し、


「私の異名です。実力的には中堅ぐらいなのですが、オルガランテではそこそこ長く活動していますので……」


「へ~?」


 僕は青い目を輝かせる。


(つまり、『知る人ぞ知る』って感じなのかな?)


 でも、あの酔った3人の男が退くぐらいだし、中堅とはいえ、やはり確かな実力はあるのかもしれない。


 僕は頷き、


「そういうの、格好いいですね」


 と、素直に笑った。


 マルティーナさんは紫色の目を丸くし、やがて、「そうですか」と少し赤くなりながら苦笑する。でも、その長い尻尾は嬉しそうに、左右に少し揺れていた。


 と、その時、


 クイ クイ


 服の袖を、幼女に引かれる。


(ん?)


 身を屈めると、幼女は小声で、


「あ、あのね? お父様は、オルガランテで1番の人だったの」


「え?」


「『雷剣の狼王』って言って、お母様と2人でいっぱい強い魔物を狩ったんだって……」


「…………」


 マジで?


 その『狼王』の娘ちゃんの言葉に、僕はもう1度、お母様を見る。


「?」


 僕の視線に、美しい未亡人さんは長い金髪を揺らしながら、上品に小首をかしげていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「おお、これが『登録カード』!」


 真新しい金属プレートを手に、僕は青い目を輝かせた。


 マルティーナさんの付き添いの元、僕は無事、冒険者登録をすることができた。


 実は、登録自体は簡単で、専用の用紙への記入と登録料50リドで済むんだけど、僕の場合、身元が不確かで、当たり前だけど、この国の『戸籍』もなかった。


 ギルド職員さんも困った顔で、


(え……駄目?)


 と、登録不可になりそうだったんだけど、


「私が保証人になります」


 なんと、お母様がギルドと交渉してくれて、無事、登録カードを入手できたんだ。


(マジ感謝!)


 目の前の母娘に頭を下げ、


「ありがとうございますっ。おかげで冒険者になれました!」


「ふふ、よかったです」


「お、おめでとう、お兄様」


 彼女たちも笑顔で祝福してくれた。


 尚、手元の金属プレートを見ると、文字が淡く光っている。


 書かれた文字は、



 名前・エト


 人種・人間


 年齢・14歳


 所属ギルド・オルガランテ



 で、光る文字は黒っぽい灰色だった。


 実は、この文字の色が『冒険者ランク』を示すらしい。


 ランクは7段階で、下から、無印級、赤印級、青印級、緑印級、白印級、銀印色、金印級となるそうな。


(僕は『無印級』だから、灰色か)


 前に見た幼女の登録カードは、淡い青色の文字だった。


 つまり、青印級――2階級も上である。


(……幼女に負けた)


 ま、まぁ、仕方ない。


 一応、年下だけど、レイナちゃんは先輩なのだ。


 ちなみに、マルティーナお母様の登録カードも見せてもらったら『白色』の文字だった。


「おお、白印級」


「はい。昔は銀印だったのですが、活動休止していた時期があったので……」


「え、活動休止?」


「はい、5年ほど」


 と、娘を見る。


(あ、出産、子育てでね)


 納得の理由である。


 あと、カードに書かれたお母様の年齢、なんと『27歳』でした。


(思ったより若いね)


 つまり、18歳で出産したらしい。


 正直、前世の感覚では早く感じるけど、『異世界知識』によれば、この世界では普通の範疇なんだとか。


(さすが、異世界だなぁ)


 と思いながら、細い鎖で繋がれたプレートを首から提げ、服の下にしまう。


 ポンポン


 服の上から、2度叩く。


 ……うん。


(――これで僕も『冒険者』、か)


 その感慨が、じんわりと心に沁みてくる。


 その様子を眺め、お母様は優しく微笑んでいる。


 そして、初心者の僕に教えてくれる。


「仕事の依頼は、基本、掲示板に『依頼書』が貼ってあります。ランク内の依頼は自由に受けられので、自分に合ったものを選んでくださいね」


「あ、はい」


「それと、もう1つ」


「?」


「ここは、『迷宮都市オルガランテ』です。その名の通り、近くに幾つか『魔窟迷宮(ダンジョン)』が存在しますので、そこで稼ぐ方法もありますよ」


「え、魔窟迷宮(ダンジョン)?」


 異世界らしい単語を聞き、僕は目を瞠る。



 ――魔窟迷宮。魔素が溜まり、世界の法則が歪んだ空間。大量の魔物や希少素材が存在する。



 と、『異世界知識』が教えてくれる。


 更に詳しい内容を求めれば、魔窟迷宮は、高濃度の魔素を吸収した魔物や動植物、鉱石などの希少素材が採取でき、現代の魔力科学の文明を支える資源庫なのだとか。


 また地下に行くほど魔素が濃くなり、より希少な素材が手に入る。


 ただ、魔物も強力になるので、死亡率も跳ね上がるらしい。


(ほほう?)


 いいね、まさに『マギ・ブラスター』が活躍できそうな面白い場所じゃないか。


 冒険を求める心が強く疼く。


 マルティーナお母様は、隣の娘を見て、


「私たちは『魔狩人』ですので、その時々で『地上』と『魔窟迷宮(ダンジョン)』を行き来しながら、魔物を狩って生計を立てています」


「う、うん、そうなの」


 一緒に行く娘ちゃんも、コクコクと繰り返し頷く。


(へ~?)


 魔物を狩るだけで生計が立てられるのか……うん、ますます悪くないね。


 より興味が湧き、


「よし、僕も『魔窟迷宮(ダンジョン)』に行こう!」


 と、宣言する。


 途端、母娘は揃って「え?」と驚いた顔をした。ん?


「あの、今からですか?」


「はい」


「本気ですか?」


「……えっと、何か問題が?」


「いえ、その、もう日暮れです。もし『魔窟迷宮』に行くなら、明日の朝にした方が良いのではないでしょうか?」


「え、日暮れ?」


 建物の窓を見る。


 空は赤く、見える街並みは影絵のように真っ黒で、通りの街灯がポツポツと灯り始めていた。


(わ、忘れてた……)


 そんな自分に呆れる。


 お母様は苦笑し、


「やめておきますか?」


「はい……そうします」


「ふふ、賢明な判断だと思います。偉いですよ、エト君」


「あはは」


 まるで小学校の先生みたいに、お美しいお母様に優しく褒められてしまった。


 ともあれ、


(今夜の宿、探さないとな)


 じゃなきゃ、路上で寝ることになってしまう。


 と、その時、


 クイ クイ


 幼女の指が、お母様の服の裾を引く。


(ん?)


「レイナ?」


 身を屈める母親の耳元に、彼女は何事かを囁く。


 マルティーナお母様は少し驚き、一瞬、僕を見て、再び娘の言葉を聞く。


(? 何、今の視線?)


 やがて、お母様は頷き、幼女も離れた。


 美人の母娘が揃って、僕の方を向く。


「エト君」


「はい」


「もしよろしければ、ですが……」


 彼女は1度、言葉を切る。


 何だろう……? 何となく、今のマルティーナさんは妙に艶っぽく感じてしまう。


 その美しい未亡人さんは、短く息を吸い、



「――今夜は、私たちの家に泊まっていきませんか?」

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中堅の狼親子からのお泊りお誘いイベント!暫くはお世話になる感じかな?
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