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転生した少年エトは、魔法の銃で無双する! ~未亡人のママさん冒険者(娘あり)と一緒に甘く楽しい冒険生活、送ります!~  作者: 月ノ宮マクラ


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004・獣人の母娘

 ヒィン


 亜空間から僕の手の中に、銀色の魔法の銃――マギ・ブラスターが出現する。


 狙いは、女の子を引き摺る森林狼。


 奴は、女の子の腕を咥えている。万が一、誤射があってはいけないので、


(ロックオン)


 赤い照準を、狼の頭部へ表示。


 丘の中腹で走る足を止め、射線上に女の子の身体が入らないよう上方に少し角度をつけ、1度、深呼吸してから引き金を引いた。


 ドッ


 光の弾丸が放物線を描き、


 パァン


 青い空から落ちるように、走る森林狼の頭部を貫いた。


 紫の鮮血が散り、女の子の腕を離した身体が走っていた勢いのまま前方へと転倒する。


(よし!)


 僕は心の中でガッツポーズ。


 女の子は1人、地面に取り残される。突然、目の前で魔物が死に、何が起こったのかと茫然とした表情だった。


 同じように、


「え……?」


 槍を持った女の人も唖然とし、思わず動きを止めてしまっている。


 彼女を包囲していた他の森林狼たちも、突然の仲間の死に驚いた様子だった。


(――まだだ)


 魔物の数は多い。


 ここで一気に形勢を変えないと、また別の狼が女の子を連れ去るだけで同じことの繰り返しになってしまう。


 僕はマギ・ブラスターを構える。


(――多重ロックオン)


 目に力を込め、槍を持った女の人を囲む森林狼と、馬車周辺の視界に入る森林狼の全頭に赤い照準を表示させた。


(喰らえ!)


 引き金を連続で引きまくる。


 ドッドッドッドッドッ……


 残弾表示が一気に減っていく。


 銃口から魔力の光弾が止まることなく射出され、上空から雨のように森林狼の頭部へと降り注ぐ。


 パパパァァン


 正確無比な射撃は、緑色の巨大な狼たちの頭部を撃ち抜き、その生命を次々と奪っていった。


 射撃停止。


 残弾は『7』の表示。


(リロード)


 約5秒の無防備な時間。


 でも、森林狼の群れはほぼ全滅し、生き残った僅かな数頭も、僕を襲う以前に何が起きたのか理解できていないようで、


(あ、逃げた)


 生き残りは皆、蜘蛛の子を散らすように森の中へと消えていった。


 ふぅ……と、息を吐く。


 顔を上げ、


(うん、勝利!)


 と、マギ・ブラスターを片手に笑った。


 やっぱり、この距離だね。


 角熊の時は至近距離で危なかったけれど、本来、マギ・ブラスターは銃なのでこのぐらいの離れた距離が適正なのだ。


 今回の戦果で、そのことを改めて痛感する。


 見れば、魔力の弾丸が連続射出されたマギ・ブラスターの銃口からは、白い蒸気が熱く立ち昇っていた。


 と、その時、


「レイナ!」


(ん?)


 丘の下で、槍を持った女の人が攫われかけた女の子の方へと駆けていた。


 馬車の方では、中にいたらしい人たちが恐る恐るといった様子で外を確認しようと顔を出している姿が見える。


 そして、女の子は、


(あ……血だ)


 噛まれた腕が血塗れで、苦悶の表情だった。


 ああ、そうだよね……。


 成人男性より大きな狼の魔物が、あの鋭い牙の生えた口で獲物として本気で噛み、引き摺っていたのである。


 皮膚が破けるのは当然、最悪、腕の骨が砕けていてもおかしくない。


(これは大変だ)


 僕も焦り、女の子の方へと丘の斜面を駆け下りていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「ああ、レイナ、しっかりして……っ!」


 傍らの地面に槍を置き、その女の人は傷ついた女の子を抱きかかえていた。


(わ……凄い美人)


 年齢は20代後半ぐらいかな?


 西洋風の整った顔立ちで、真っ直ぐな長い金髪は陽光に煌めきながら、地面まで届いている。瞳は、紫水晶の宝石みたい。


 日本人とは違う肉感的なスタイルで、海外女優のように背も高く、足も長い。


 その見事なプロポーションの肉体を、稼働箇所の多い白い金属鎧――多分、防御力より機動性重視といった装備――で覆っていた。


 騎士……あるいは冒険者だろうか?


 そして、


(っ、獣耳っ!)


 その事実に、僕は衝撃を受ける。


 綺麗な金髪の中から、白い垂れ耳が2枚、煌めく髪の上に乗っている。


 更にお尻の部分からも、毛足が長く、金毛に毛先だけが白いフサフサの尾が柔らかく伸びていた。


 ――獣人。獣の特徴を宿した人種で、彼女は犬か狼の特徴がある模様。


 頭の中の『異世界知識』が教えてくれるけど、それ以前に前世の僕が知っていたらしく、憧れの種族を前にして、何というか魂が歓喜している感じだった。


 ドキドキドキ


 鼓動が急に早くなる。


(うん、落ち着け、僕)


 必死に前世の僕を宥める。


 彼女は傷ついた女の子の傍らに膝をつき、壊れ物を扱うように抱きかかえ、その清楚な美貌を悲痛に歪めていた。


 僕も女の子を見る。


 まだ幼く、7~8歳ぐらい?


 多分、10歳にはなってないと思う。


 そばの女の人と同じ髪と目の色で、そのおかっぱの金色の髪からは、やはり垂れ耳が生え、お尻からもフサフサ尻尾が伸びている。


(きっと母娘だ)


 その可能性に、すぐに思い至る。


 女の子は旅人用らしい厚手の布服の上下を身に着けている。


 そして、左腕の生地は引き裂かれ、見える肌には複数の牙の穴が開き、見えるピンクの肉から大量の赤い血が流れていた。


 素人の僕でもわかる。


(これ、まずい)


 血が止まってない。


 しかも、野生動物の……いや、野生の魔物の牙だ。雑菌だらけ、つまり、毒牙と思っていいだろう。それが肉の深くまで食い込み、菌が体内に侵入しているはずだった。


 致命傷とは言わない。


 でも、生命に関わる大怪我だった。


「お母様……痛い、痛いよぅ」


 金髪の幼女は、泣きながら訴える。


 助ける手段がないのだろう、美しい母親は苦しげに「レイナ……っ」と娘を抱き締めるしかなかった。


 僕は声をかける。


「あの」


「!」


 ピクッ


 娘を片手に、もう一方の手で素早く槍を取り、僕に構える。


(わっ?)


 あまりの早業に、僕は対応できない。


 でも、彼女はすぐに「あ……」と声を発し、陽光を反射する物騒な槍の穂先を下げた。


「貴方は、先程の光魔法の……?」


「あ、うん」


 僕の狙撃に、彼女は気づいていたらしい。


(視野、広いな)


 あの時、彼女も大変な状況だったろうに……と、その感想はあとでいいや。


 僕は、鞄から金属容器を取り出す。


 そして、本題を告げる。


「これ、飲ませてください」


「え?」


「万能薬。怪我や病気が治せます。――さ、早く」


 例の丸薬を1粒、


 ポトッ


 と、彼女の白い手のひらに落とした。


 彼女は紫水晶の瞳を大きく見開き、その丸薬を……そして、それを渡した僕を見る。


 その目を真っ直ぐ見返し、僕は頷く。


 彼女も覚悟を決めたように、長い金髪を揺らして頷き返してくれる。


「レイナ、これを飲んで」


「お母、様……?」


「さぁ、がんばって……ね?」


「う、ん」


 娘の口に、丸薬を含ませる。


 苦いのか、泣き顔の幼女は一瞬だけ顔をしかめ、


 コクン


 その小さな白い喉が動いた。


 数秒の空白があり、けれど、そのあとの変化は劇的だった。


(お……!)


 女の子レイナちゃんの左腕に開いていた無数の牙の穴が虹色に光り、その輝きの中で肉が盛り上がり、傷が塞がり始めたのだ。


 シュウウ……と音がする。


 病気も治す丸薬なので、毒素も浄化しているのだ――と『異世界知識』が教えてくれた。


 僕らが見守る中、幼女の腕は白い肌を取り戻す。


 出血も傷も何もない、綺麗な肌だ。


 この間、約10秒。


 その効果の高さに、僕も、お母様も驚きの表情で、幼女本人は突然の痛みの消失に『あれ?』と不思議そうな表情になる。


「痛いの……消えた……」


 と、呟く幼女。


 途端、そんな娘を、ムギュッとお母様が強く抱き締めた。


「ああ、レイナ、レイナ……っ!」


「ふぎゅ?」


「よかった……無事で……本当に、本当に……うぅ」


 と、涙をこぼす。


 幼女はポカンとし、けれど、母親の温もりが嬉しかったのか、その尻尾がパタパタと揺れ出した。


 小さな手が母の背中を抱き返し、お母様も泣き笑いである。


(うん、よかったね)


 グスッ


 思わず、僕ももらい泣き。


 思わぬ形となったけど、これが僕と異世界人との初遭遇になったんだ。

ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました。


明日から1日1話更新です。

しばらくの間は毎日更新、頑張ります!


また、もしよかったら、ブクマ、評価などして頂けると嬉しいです。どうぞ、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
此処で使われるのが万能薬か・・・そしてヒロインは、どっちだ? 親子丼いっちゃう?
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