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転生した少年エトは、魔法の銃で無双する! ~未亡人のママさん冒険者(娘あり)と一緒に甘く楽しい冒険生活、送ります!~  作者: 月ノ宮マクラ


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003・襲われる馬車

 マギ・ブラスターは優秀な武器だ。


 あんな怪獣みたいな巨大な角熊を、素人の僕でも倒せる力があった。


 だけど、使い方を誤れば、充分な能力を発揮できず、きっと僕の方が簡単に殺されていただろう。


 でも、敢えて言う。


(――そこがいいんだよ!)


 異世界転生すると、神様みたいな万能な力を得て無双する物語もある。


 けど、そんなのつまらない。


 ある程度の力はあっても、本人がしっかりがんばることで勝利が成立するような、そういう絶妙のバランスがいいんだ。


 きっと前世の僕もそれを望み、だからこそ、優秀だけど万能ではない『マギ・ブラスター』を武器に選んだのだと思う。


(ふふ、わかってるね)


 さすが前世の僕、いい好みだ。


 そんな僕は今、マギ・ブラスターの威力により魔物の返り血を浴び、汚れている。


 ……少し生臭い。


 幸い小川もあるので、汚れた手や顔、外套などを洗うことにした。


 バシャバシャ


 透明な水に、紫の色が溶けていく。


(ふぅ、すっきり)


 タオルはないので、服の袖で顔を拭く。


 森の中の小川は冷たく、透明度も高くて、水中を泳いでいる小魚の姿が何匹も目視できた。


 と、その時、水面の反射に気づく。


(あ……)


 黒髪の少年がいた。


 まだあどけなさを残す少年で、人の良さそうな雰囲気がある。


 髪は前世日本人だった僕には馴染深い黒色で、けれど、目の色はゲームで見るような綺麗な青色だった。


 へぇ……これが、今世の僕か。


 顔を上下左右に動かし、口を開いたり、眉毛を指で持ち上げたり、色々と確かめる。


 当然、水面の彼も百面相をして、


「ぷっ……あはは!」


 僕は何だか可笑しくて大笑い。


 少年も楽しそうに笑っている。


(うん)


 僕は頷き、


「これからよろしく、今世の僕」


 その言葉に、彼も笑顔で応えてくれた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 その後も僕は、樹林の中、南下を続けた。


 幸い、あれから魔物に遭遇することもなく、安堵と少しの物足りなさを感じつつ、時折、休憩を挟みながら歩いていく。


 休憩中は、鞄にあった食料と水を摂取した。


 スティック状の食料は、甘さと塩味のバランスが絶妙で、意外と美味しかった。


 水筒の水は少し生温く……うん、まぁ、仕方ないね。


(でも、あってよかった)


 長く歩くのはやはり体力が必要で、エネルギーと水分の補給ができるのはありがたかった。


 特に水分は重要で、なければ脱水症の可能性もあったろう。


 小川もあったけど、


(さすがに、生で飲むは怖いよね?)


 もし腹を下したら、摂取するより出ていく水分の方が多くなる。


 水筒の水がある内に、何とか目的の『オルガランテ』の街に辿り着き、安全な水の入手方法を確立したいものである。


 などと考えながら、僕は目の前に現れた樹林の丘を登っていく。


 丘の頂上に着き、


「あ……」


 そこから見下ろす斜面の先に、草木のない土の道があった。


 ――街道だ。


 異世界管理神霊フィーゴ・アルモランさんの手紙にあった街道だろう。この道を辿っていけば、異世界の人々の住む街『オルガランテ』に辿り着く。


 ブルッと身体が震える。


(ようやくだ)


 ようやく、異世界人と会える。


 どんな人たちなのかな?


 そして、その出会いから、きっと僕の本当の意味での異世界転生の人生が始まるのだ。


 ああ、楽しみだ。


(よし、行くぞ!)


 と、丘を降りようとした時、


 ギャン ギャオン


 風に乗り、何か獣の叫び声のようなものが聞こえた。


(? 何だ……?)


 耳を澄ます。


 その声は街道の奥から聞こえ、僕は視線をその方向へと向けた。


「あ」


 曲がった街道の先で、馬車が1台、横転していた。


 馬車の周囲を、緑色の体毛をした狼の群れが包囲し、馬車の人々を襲っているみたいだった。


 狼は1頭1頭が成人男性より大きく、額に大小の角がある。


 魔物?


 思った瞬間、


 ――森林狼。自分より大きな獲物も群れで狩る危険な肉食の魔物である。


 と、僕の『異世界知識』が教えてくれる。


(なるほど)


 見れば、馬車を引く2頭の馬の内、1頭は首から血を流して地面に倒れていた。


 そして、馬車のそばには『槍を持った女の人』がいて、馬車を守るように森林狼の群れと1人で戦っていた。


(あ……異世界人)


 遠目だけど、初めて見た姿は地球人類とそう変わらない感じ。


 いや、結構、美人かも?


 なんて思っている間にも、


 バシュッ


 緑の狼の1頭がその女の人の槍に斬られ、地面に倒れた。


(おお、強い)


 よく見たら、馬車の周囲には何頭かの魔物の死体も転がっている。全部、あの女の人がやったのかな?


 だけど、森林狼の数はまだまだ多い。多分、20頭ぐらいの群れだ。


 まさに、多勢に無勢。


 女の人も肩で息をしている。


 と、その時、巨大な狼の1頭が馬車後部の木製扉をバキッと突き破り、馬車内部に侵入した。


 複数の悲鳴が上がる。


 槍を持った女の人も気づき、けれど、複数の他の森林狼に阻まれ、すぐに近づけない。


 数秒後、馬車から狼が出てきた。


(あ!)


 狼の口は、小さな女の子の腕を咥えていた。


 女の子は必死で抵抗する。


 だけど、女の子よりずっと大きい森林狼は、その子を物凄い力で引き倒し、街道の奥の茂みへと引き摺っていく。


「レイナ!」


「お母様……っ!」


 槍を持った女の人が悲壮な顔で叫び、女の子は泣きながら必死に手を伸ばす。


 だけど、2人の距離は離れていく。


 焦る槍の女の人に対し、4~5頭の森林狼が足止めし、むしろ強引さで生まれた隙を衝かれて、彼女の方がやられそうになっていた。


(これは、あかん!)


 考えるより先に、僕の足は目の前の丘を駆け下っていた。


 全力で走りながら、叫ぶ。



「――来い、マギ・ブラスター!」

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