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少年エトと魔法の銃 ~未亡人のママさん冒険者と甘く楽しい冒険生活送ります!~  作者: 月ノ宮マクラ


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002・初めての勝利

(――亜空間収納)


 心の中で念じると、


 シュッ


 手の中の『魔法の銃』マギ・ブラスターが消失した。


 おお……本当に亜空間にしまえるんだね。


 感動しつつ、今度は『出現』と念じると手の中に銀色の銃が現れる。


(うん、これは便利だ)


 普段、手ぶらで邪魔にならないし、一見、非武装にも見える。いざという時には、即、武装も可能という訳だ。


 思わずにやけながら、


(今の内に、他に荷物も確認しよう)


 僕は、マギ・ブラスターと一緒にあった肩提げ鞄を開けてみる。


 まずあったのは、銀紙に包まれたスティック状の食べ物――何となく、保存食っぽい。次は革袋の水筒、中には透明な水が入っていた。


 食料と水、か。


(この布袋は何だろう?)


 口元の紐を解くと、


 ジャラッ


(お、硬貨だ)


 中に20枚ぐらいの硬貨が入っている。


 この世界のお金か。


 でも、見たこともなく、価値もわからない。日本円でどのくらいなんだろう?


 と思った時、


(ん……『リド硬貨』?)


 ふと頭の中に、そんな単語が浮かんだ。


 あ、これ、転生した肉体の脳に記憶された『異世界知識』だ。


『リド』は、この世界の共通通貨単位で、1リドは約100円の価値。


 財布の中の硬貨を見ると、あるのは『100リド硬貨』が9枚と『10リド硬貨』が10枚で、合計1000リド――日本円で約10万円だ。


(ありがたいや)


 異世界生活を始めるための初期資金として充分だろう。


 財布の紐を、固く締め直す。


 最後、鞄にあったのは円形の金属容器だった。


 蓋を開くと、


(……黒い粒?)


 が、3つ、入っていた。


 触ると多少の弾力がある。


 丸薬……かな?


 そう言えば、手紙に『万能薬』とか書いてあったけど、それだろうか?


 でも、万能薬って何だろう?


 思った瞬間、


(あ……)




 ――万能薬とは、怪我、病気を治す高価な薬。これは王侯貴族が服用するような品物である。




 と、頭の中に『異世界知識』が思い浮かんだ。


(へぇ~、便利な薬だね?)


 前世にもない魔法薬らしい。


 それにしても、マギ・ブラスターだけでなく、この『異世界知識』もなかなかのチートかもしれない。


 そう思いながら、確認した荷物を鞄にしまい直す。


 肩に提げ、立ち上がった。


(よし)


 僕は、顔を上げる。


 今いる石の円盤が手紙にある『古代神事祭場跡』なら、この南に街道があり、その先に『オルガランテ』という街があるはずだ。


(まずは、そこを目指そう)


 僕は、転生した。


 それを望んだ前世の僕は、きっと『楽しい異世界生活』を求めていたのだろう。


 そのための新しい身体、そして、力は用意されている。


 青い空を見る。



 ――うん、その望み、叶えるよ、前世の僕。



 そう伝え、笑う。


 そして、目の前に広がる美しい樹林へと、今世の僕はその第1歩を踏み出したんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 木々の葉の隙間から、木漏れ日が落ちる。その差し込む光にまばらに照らされる大地を、僕は歩いていく。


(綺麗だな……)


 景色を眺め、思わず瞳を細めてしまう。


 人の手の入らぬ大自然の空間、その寂しくも涼やかな空気は、何だか気持ちを透明にしてくれる気がした。


 ふと振り返る。


 唯一の人工物だった石の円盤はもう見えず、代わりに木々の向こうに尾根の一部が削られた青い山脈が見えた。


 ええ、はい、マギ・ブラスターの最大『魔力充填射撃』の結果です。


(山さん、ごめん)


 今後、使う時には注意します。


 そして、『異世界知識』によれば、あの山は大陸の北部にある『アルカナ大霊峰』という場所で、つまり、南を目指すならあの山に背を向けて進めばいいらしい。


 異世界知識、マジ便利。


 そうして僕は、草土の地面を歩くのだけど、


(なんか違和感あるな~)


 前世と体格が違うのか、歩幅や自分の歩く動きに対して若干戸惑いがある。


 多分、今の僕は子供だ。


 いや、子供というか少年ぐらい……?


 感覚的に、14、15歳の『中学生』ぐらいに思う。


 服装は厚手の布で作られた長袖長ズボンの上下に、丈夫そうな革靴。その上から肩提げ鞄、更に革の外套を羽織っている。


 所謂、『旅人』みたいな格好だ。


 肌は白人種か、色白な黄色人種って感じで、髪とか目の色は鏡がないのでわからない。


(今の僕、どんな顔なのかなぁ)


 ペタペタ


 手を触った感じ、そんなに悪くない気もするんだけどね。


 知るのが怖いような、楽しみのような……おや?


 そんな風に歩いていると、木々の奥、草地の向こうに流れる小川があった。水面が陽光を反射し、キラキラと輝いている。うん、綺麗だ。


(あ……水面で顔、見れるかも!)


 思いついた僕は、小走りに小川に向かい、


 ガサッ


「!?」


 突然、小川近くに茂みが大きく揺れ、巨大な赤い熊が姿を現した。


 慌てて、急停止。


 その赤毛の熊を見つめ、


(え……角?)


 前世の僕が知る熊と違い、頭に捻じれた黒い角が生えている。


(あ……魔物)


 咄嗟に気づき、同時に『異世界知識』が『角熊』という名称と、恐らくあの魔物も水を飲むためにこの川辺に現れたのだろうという予想を教えてくれた。


 赤い角熊も、僕の存在に気づく。


『ゴガァアアッ』


 と、咆哮し、全身の毛を逆立てて威嚇してくる。


 ビリリッ


(……っ)


 その強烈な害意に、肌が泡立つ。


 角熊の体長は約3~4メートル、前世の軽自動車並の巨体だ。それが全身の筋肉を膨らませ、足元の水と地面の土草を吹き飛ばしながら、突然、僕へと突進してきた。


(! こ、来い、マギ・ブラスター!)


 ヒィン


 右手に『魔法の銃』が出現する。


 即、角熊に銃口を向け……うっ?


 迫る巨体に、一瞬、どこを狙えばいいか迷う。


 胴体? いや、小径の銃弾じゃ、当たっても止まらないかも。なら、頭? でも、走り揺れる頭に当てるのは難易度が高そうで――迷っている数秒で、角熊の巨体はもう目の前だ。


(ええい、とにかく撃ち込め!)


 銃口だけを奴に向け、運に任せて引き金を引く。


 ドッドッドッ パパパァン


 前腕に1発、頭部に2発、命中する。


 光る魔力の弾丸が破裂し、光の粒子と紫色の血飛沫が空中に散った。


『グルアッ!?』


 突然の痛みに、魔物も驚く。


 でも、止まらない。


 突進してくる巨体に、


(おわぁっ!?)


 僕は慌てて、横に跳んだ。


 ドゴォン ベキベキ……ッ


 足元を掠め、通り抜けた巨体は近くの樹木に噛みつき、その幹を簡単に引き千切る。背の高い樹木は周囲の木々にぶつかりながら落葉を振り撒き、森の大地に倒れていった。


 その威力に、僕は青褪める。


(やば……噛みつかれた、即アウトじゃないか!)


 ズシン


 角熊が振り返る。


 魔力の弾丸で、右目が潰れ、頬が削れて犬歯が剥き出しになっていた。


 酷い顔……。


 でも、闘志は消えていない。


 むしろ、激痛が怒気に変わり、僕への強烈な殺意が湧き上がっているみたいだ。


 それを見て、僕も覚悟が決まる。


(リロード)


 不思議と冷静になり、魔力弾の補充を1秒で。


 そして、補充終了と同時に、


(魔力充填射撃)


 と、充填を開始する。


 遠距離主体の僕と近距離主体の角熊……今の間合いは、僕が圧倒的に不利だ。


 ――だから、1発で仕留める。


 7秒の溜め時間。


 日常なら短い数秒が、今は異常に長く感じてしまう。


 ジャキッ


 銃口を向け、魔物を牽制。


 角熊も自分に与えられた激痛を学習してか、警戒した様子を見せ、迂闊に突進してこない。


 よし、よし……。


 早く充填完了しろっ。


 ドォッ


 その瞬間、覚悟を決めたのか、角熊が突進してきた。


 同時に、


 ヒィン


 銀色の銃口の先に、光る魔法陣が展開する。


 第1段階、充填完了。


 まだだ、落ち着け。


(ロックオン!)


 2度、同じ失敗はしない。


 忘れてた機能を使用し、赤い円形の照準が魔物の大きな角の間、眉間部分に固定表示される。


 今度こそ……っ。


 巨体が2本足で立ち上がり、両前足の鋭い爪を閃かせながら飛びかかってくる。


 同時に僕は、


「当たれぇっ!」


 マギ・ブラスターの引き金を引く。


 カォン


 魔法陣の直径と同じ、太さ約30センチの魔力のレーザー光線が射出された。


 ジュオ……ッ


 その光線は、赤い照準を追尾し、僅かに曲がりながら角熊の額に命中――その大きな頭部を丸ごと吹き飛ばし、光線の中で蒸発させた。


 残された巨体が惰性で僕へ、ドカンとぶつかる。


(のわっ!?)


 思った以上の重量に弾かれ、僕は後方にひっくり返り、何度か転がって停止した。


 いてて……。


 魔物の血と泥に汚れながら、近くの木を支えに立ち上がる。


 足元を見れば、


(あ……)


 地面の上に、首なしの巨大な死体が転がっていた。


 断面から溢れた紫色の血液が水溜まりを作り、そばの小川へと流れ込んでいく。


「…………」


 動かぬ巨体に、数秒、銃口を向けておく。


 やがて、


(……うん、死んでるね)


 万が一の可能性への警戒を解き、僕は息を吐く。


 そして、マギ・ブラスターの残弾表示が『0』なのに今更気づいた。


 自分に苦笑し、即リロードする。


 ふと見れば、銀色の美しい銃を握る手が震えていた。


 恐怖、興奮、武者震い……わからない。


 わからないけど、


「ふ、ふふ……あははっ!」


 笑いが込み上げた。


 強く感情が溢れて止まらない。


(ああ、うん、これだ。これだよ、きっと前世の僕が求めていたのは……っ!)


 角熊の死体を見る。


 恐ろしく巨大な敵だった。


 でも、勝ったのは僕。


(――僕が勝ったんだ!)


 マギ・ブラスターを両手で握り、額に押し当てる。


 異世界で体験した初めての勝利、1つの生命として勝ち取った生存という報酬を、僕はしっかりと味わったんだ。

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― 新着の感想 ―
初めての実戦で無事に勝利。とはいえ、力を使う事の大事さを説く人が今の所いないが大丈夫かな・・・
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