001・転生と魔法の銃
新作になります。
よろしくお願いします。
(ここは、どこ……?)
気づけば、森の中にいた。
日本ではあまり見られない背の高い樹林で、まるで北欧の森である。僕は、そんな森の中にある石の円盤の上に座っていた。
円盤の直径は、約1・5メートル。
表面には魔法陣のようなものが彫られているけれど、古い物なのか、溝は丸く風化し、一部は削れている。
(何、これ?)
石の円盤の表面を触る。
ザリザリした感触で……ん?
触っている自分の手――その見える5本の指が、妙に若く感じた。
え? あれ?
(これ、僕の手じゃない?)
と、気づく。
驚き、同時に違和感を覚えた。
いや、待って……僕、誰だ?
日本人だった。
だけど、それ以外、何も思い出せない。
名前、年齢、性別、家族、友人……そうした自分自身の記憶が一切なく、ただ『日本人だった』という感覚だけが残っている。
困惑し、混乱し、それが恐怖に変わろうとする――その時、
コッ
(いてっ?)
身動ぎした僕のお尻が、何かに当たった。
振り返る。
円盤の上、僕の背後に『銀色の銃』が転がっていた。
片手用の小さいサイズ。
(――拳銃だ)
ただ現実の銃とは違い、銀の下地に金の紋様が刻まれ、まるでゲームの装備品みたいな外観だった。
銀色の拳銃のそばには、肩提げの革鞄もある。その横には、1枚の封筒が小さな丸い石を重しに置かれていた。
封筒は、金の刺繍が施された上質な紙だ。
「…………」
小石をどけ、封筒を手に取る。
花のようないい香りがする。
丁寧に開き、中の便箋を取り出した。
達筆な、けれど、読み易い綺麗な文字が並んでいる。ただ、日本語ではない。なのに、なぜか僕はその文字が読め、内容が理解できてしまった。
―――――――
転生した貴方へ
突然ですが、貴方は死にました。
そして、生前の貴方の積み重ねた善行、また死後の面談による希望により、異世界への転生が行われました。
規定により、前世の記憶などは消えております。
尚、現在、貴方がいらっしゃるのは、剣と魔法、そして魔物の存在する世界です。
前世に比べ、非常に危険な場所です。
そのため、前世の貴方の希望により『魔法の銃』をご用意しました。
使用方法については、別紙をご覧ください。
また、新しい世界に馴染むまでの当面の生活のため、鞄の中に、食料、水筒、万能薬、多少の金銭もご用意してあります。
また新しい肉体の脳には、異世界言語と基礎的な異世界知識も記憶させてあります。
以上、混乱されているとは思いますが、現在の貴方の状況を把握、理解して頂くため、書面にてお伝えさせて頂きました。
今後の新しい人生に、良き出会いと幸運がありますようお祈りいたしております。
第876308異世界管理神霊 フィーゴ・アルモラン
追伸
古代神事祭場跡より南に街道があり、オルガランテという街に通じております。約半日で到達できますので、まずはそこを目指すのがよろしいでしょう。
―――――――
(……おいおい)
異世界転生って……え、嘘でしょ? 本当に?
僕は茫然と手紙を見つめてしまう。
驚くけれど、でも、周囲の環境、自分の状況を思うにあり得なくない。
何より、
(心の中で、妙に納得してる自分がいる……)
欠けたパズルのピースが填まった感じで、だからこそ、それが事実だとわかってしまう。
同時に、楽しんでいる自分を感じる。
――異世界転生。
物語や空想に思っていた出来事が現実に、しかも自分の身に起きた。
(うん、何かワクワクする!)
記憶はないけれど、きっと前世から僕はそういう人間だったのだろう。
そんな前世の僕が望んだ武器――銀色の『魔法の銃』を見る。
カシャ
手を伸ばし、グリップを握った。
金属製の確かな重さがあり、
ヒィン
(!?)
同時に、銀色の表面に光る魔法陣が生まれた。
何だ?
驚きに目を瞠り、同時に頭の中に『魔法契約』というイメージが湧き上がる。そして、このイメージが与えられた『異世界知識』によるものだというのも理解できてしまった。
(なるほど、これが手紙にあったのだね)
納得し、そして、僕は今、この銃を握ったことで『魔法の銃』を自分専用としたのだ、と同じく理解する。
つまり、もう他人には扱えない。
僕だけの、僕のための武器……うん、なんか浪漫だ。
何だか気分が高揚する。
(あ、別紙があるって手紙にあったよね)
封筒の中を確認すれば……うん、もう1枚あった。
―――――――
『魔法の銃』の使用説明書
・グリップを握り、引き金を引けば発射されます。
・発射されるのは、『魔力の弾丸』です。物質ではなく魔力の塊なので、霊的な敵にも有効です。
・弾数は30発。
・リロード時間は約5秒。大気中の魔素を吸い、弾倉内で『魔力の弾丸』を生成します。
・威力は、前世の拳銃並みです。
・対人、対魔物として充分な威力がありますが、対竜種などの大型魔物に対しては、通常射撃では通用しない場合もあります。その際には、『魔力充填射撃』を利用してください。
・『魔力充填射撃』とは、弾丸に使用する魔力量を圧縮、増加することで威力を高める射撃法です。
・充填時間は約7秒。
・威力は最大3段階分高められ、最大充填時間は21秒です。
・最大の場合、かなりの高威力になりますので周囲に充分な注意を払ってください。
・また、この『魔法の銃』は亜空間に収納できます。
・貴方の自由意思で、自由に出し入れ可能です。落としたり、盗まれた時には1度、亜空間に収納し、再び手元に出すと良いでしょう。
・また破損時に備え、自動修復機能もあります。
・損壊状況にもよりますが、大抵は数秒で直ります。小さな破片1つからでも、約3時間あれば完全復元されます。
・射撃に自信がない場合は、ロックオン機能もあります。ご活用ください。
・以上、強力な武器ですので、ご使用には充分な責任と注意を持って行って頂けますよう、よろしくお願いいたします。
―――――――
(おお……)
思った以上に多機能で優秀だ。
多分、前世の僕は『異世界管理神霊フィーゴ・アルモラン』さんと徹底的に交渉し、こだわりの武器を勝ち取ったのだろう。
(よくやったぞ、前世の僕)
少し変な形だけど、自画自賛をしてしまう。
僕は、手にある銀色の『魔法の銃』を見つめ、そして、正面に構えてみる。
試しに1度、撃ってみよう。
両手で持ち、反動が怖いので、力は抜き気味にしておく。15メートルぐらい離れた樹木の幹を狙い、銃口を向けた。
ヒィン
(お……後端に数字が表示されたぞ?)
表示されたのは『30』、つまり残弾数だ。
納得し、僕は短く息を吐く。
前を見据え、引き金を――引いた。
ドッ パァン
思ったより軽い反動。
銃口から光る弾丸が射出され、目標の樹木の幹に一瞬、光の火花が散り、黒い穴が穿たれた。
(おお、本物の銃だ)
なんか感動である。
見れば、弾数表示は『29』になっていた。
納得し、もう何度か撃つ。
ドッドッドッ パパパァン
連続し、幹に穴が開く。
なるほど、思った以上に連射できるし、狙いも正確だ。
(今度は、あの葉を狙って……)
と、更に細かく精度を求める。
ただ風に枝全体が緩く揺れていて、狙いが定め辛い――と思った瞬間、
ピン
視界の中、狙った葉に『光の赤い円』が表示された。
ロックオン機能?
理解し、引き金を引く。
ドッ パシュッ
光る『魔力の弾丸』は途中、クンッと軌道を変え、揺れる葉の中心に正確に命中した。
(凄い……)
多少のホーミングもできるのか
さすが、魔法の銃と弾丸だ。
僕は感動し、1度、リロードをしておく。
(リロード)
意識すると、残弾表示の数字が増え、1秒程で『30』に戻った。
ふむ?
30発の完全リロードが5秒で、1秒で6発のリロードが可能って感じかな。
(よし、最後は『魔力充填射撃』をしてみよう)
離れた樹木へ、僕は再び銃口を向ける。
ヒィン
(お?)
7秒後、銃口の先の空中に魔法陣が生まれた。
ジジ……ッ
何か目に見えない力が溜まっていくのを感じる。
更に7秒後、
ヒィィン
魔法陣が拡張され、より大きくなった。
第2段階だ。
(折角だし、最大威力で――)
僕は思い、更に7秒待つ。
ヒィィィン
魔法陣が更に拡張され、直径1メートルぐらいのサイズになった。
凄い力が溜まっている、と感じられる。
同時に、これ以上、力が増えていない感覚もあった――うん、最大充填できたらしい。
(よし)
僕は前を見据え、引き金を引いた。
ボッ
瞬間、巨大な魔法陣から光の柱が巨大なレーザー光線のように射出され、
ドパァアアアン
(!?!?!?)
目標の樹木どころか、周辺の木々や大地を抉り取る。
ぶっとい光線はそのまま真っ直ぐ飛び、遥か遠方の山脈の一部を削り取ると、青い空の彼方へと抜け、そして空間に残光を散らしながら消滅していった。
一泊遅れ、爆風が吹き荒れる。
「おわぁっ!?」
ドタン ゴロゴロ
風圧で後ろにひっくり返り、2回転して停止した。
驚きと共に、顔を上げる。
目の前の森と地面は円柱状に遠くまで消え去り、その木々と地面の断面は赤く灼熱して、熱そうな蒸気が白く立ち昇っていた。
茫然と、その光景を見つめる。
やがて、
「あは……あははっ」
僕の口から笑いがこぼれた。
何だこれ?
(最高じゃないか!)
まさにチートの威力、これぞ異世界転生!
これこそが、前世の自分が求め、望み、手に入れた力なのか……っ!
銀色の『魔法の銃』を見る。
残弾数は『0』……ああ、『魔力充填射撃』は全エネルギー放出系なんだね。
でも、5秒でリロードできる。
(ふふっ……)
僕は瞳を細めた。
この素晴らしい『魔法の銃』のことを『マギ・ブラスター』と名付けよう。
中二病?
構わない。むしろ、この威力を見て患ない奴が異世界転生なんて望むはずないだろう?
僕はマギ・ブラスターを目の前に持ち上げ、
「これからよろしく、相棒!」
と、声をかける。
まるでその声に応えるように、銀色の銃は陽光を反射し、その美しい表面で7色の光を散らしたんだ。
ご覧頂き、ありがとうございました。
本日、4話まで更新いたします。よかったら、どうか読んでやって下さいね。よろしくお願いします。




