023・順調な日々(※前半マルティーナ視点・後半エト視点)
タイトル、少し変更しました。
また今話は、前半マルティーナ視点、後半エト視点となっています。
どうぞよろしくお願いします。
~マルティーナ視点~
「ん……ああっ!」
その夜の私は、エト君と同じベッドの上でいつも以上に乱れていました。
自分が酷く発情している……その自覚があります。
(はしたないっ)
冷静な自分が告げ、けれど、その思考も抑えられない感情の波に呑まれてしまいます。
――この少年が愛おしい。
その日の昼間、私たちは冒険者紛いの強盗を撃退し、地上へと帰還、すぐにギルドに顛末を報告しました。
証言は私たち側のみ。
真偽を疑われるかと思いましたが、ギルドは驚くほど簡単に信じてくれました。
聞けば、連中は素行の悪さで有名で、ギルド側も再三の注意を行っていたらしいのです。
また、彼らと揉めたり、あるいは行動を諫めた冒険者が何人も『魔窟迷宮』で消息を絶っているらしく、ギルドも調査に入る矢先だったとか。
(つまり、常習犯でしたか……)
その悪質で短絡な精神には、ただ呆れと嫌悪を覚えます。
彼らの所持金や荷物を換金した代金を『慰謝料』として、ギルドから正式に頂く事にもなりました。3万リド程になり、多少、溜飲も下げられますが……。
…………。
ですが、あの時は本当に危険な状況でした。
娘を人質にされ、私自身、足の自由を奪われ、凌辱されそうになったのです。
その状況下で、
(何としても、娘とエト君だけでも逃がさなければ……っ!)
と、心中は必死でした。
私が凌辱されている隙に2人だけでも、と悲壮な気持ちでいたのです。
なのに、
ドッ パァン
(え……)
エト君の『グレイシスの遺産』が美しい光と共に全てを覆しました。
6人の悪漢を一瞬で殺害……そして、最後の1人も容赦なく殺してしまったのです。
鮮烈な光景……。
その黒髪の少年の生み出した光景を、私は忘れる事ができません。
貴重な薬で私の足も治されました。
彼の表情は、いつも通りで……だからこそ『殺人』の重さから自分を守るため、心が麻痺しているのだとわかりました。
(ああ……)
私は、その少年を抱き締めました。
本来、守るべきはずの年長の私が情けないばかりに、この黒髪の少年の無垢な手を汚させてしまったのです
けれど、
(……全て……私のために……っ!)
その甘美な背徳感に、下腹部の芯が熱く潤み、私の『女』が悦びの涙をこぼしてしまっているのです。
ああ、なんと醜く、浅ましい……。
罪悪感と充足感、2つの熱が私の内側で溢れます。
だからこそ、
「エト君……っ! 何でも……何でもします。だから、このマルティーナの中に……ああっ!」
閨の私は、今、1匹の雌でした。
発情した唯の雌として、若い少年の雄を求めたのです。
そんな私の全てを、彼は受け入れてくれました。
優しく嬉しそうに、時に獣のように荒々しく、また天使のように繊細に……。
(エト君っ!)
彼が好ましい、彼が愛おしい。
この熟れた女体の全てを使い、この黒髪の少年を喜ばせ、また愛して欲しいっ。
彼に口付けをします。
「ん、は……」
唇が離れ、目が合います。
彼の青い目が優しく笑い、
「ん……大好きですよ、マルティーナさん」
と、囁くように言いました。
(~~~~)
きっと明日、私は羞恥と自己嫌悪に陥るのでしょう。
でも、今は……今だけは……。
「ああ、エト君っ!」
獣の私は熱く声を弾ませながら、この若い雄を貪る事に夢中になるのでした。
◇◇◇◇◇◇◇
~エト視点~
朝日が昇る。
(し、沁みるねぇ)
干乾びた身体に太陽の輝きは眩しくて、ベッドの上の僕は青い目を細めてしまう。
……昨夜のマルティーナさん、凄かったな。
お母様は『狼人種』で、狼は肉食なのだと思い知ったよ。
(でも、気持ち良かった~)
普段、上品で清楚なのに、夜のベッドでは情熱的で、献身的で……うむ、最高なお母様です。
…………。
ま、昨日は特にだったけど……仕方ないよね。
昼間、あんな目に遭ったんだ。
気丈だし、年上の人だけど、怖くなかったはずがない。その反動もあるのかなと思う。
僕自身、おかげで人を殺した罪悪感を感じる余裕もなかったしね。
お互いの体温で、自分たちの心を保った感じ。
(……ふふ)
つい笑ってしまう。
さて、今日も元気に行きますか!
僕は1人頷き、客室のベッドを降りて、母娘の待つリビングに向かったんだ。
廊下を歩き、やがて、リビングに到着。
室内に入り、
「――おはようございます、エト君」
眩しいっ!
カウンターキッチンに立つお母様が美しく微笑んだ。
金色の髪を頭の後ろのまとめてエプロンを羽織り、まさに若奥様みたいである。
そして、昨夜と違い、上品で穏やかな雰囲気……でも、それが逆に艶めかしい感じ。
ドキドキ
(何だ何だ?)
ベッドの上より心臓が跳ねてるぞ。
僕は「お、おはようございます」と何とか返事。
やばい、顔、少し赤いかも?
マルティーナさんも気づいたのか、1度、紫の目を瞬く。そして、少しだけ嬉しそうに笑みを深くなさる。
あはは、ばれてる~。
と、リビングのテーブルには幼女もいて、
「お、おはよ、エトお兄様」
「うん、おはよう、レイナちゃん」
笑顔を向けられ僕もほっこり、そして笑顔を返しておく。
この子は癒し系だね~。
そして、
(昨日の事、幼女もトラウマになってない感じかな?)
出会った時も大変だけど、すぐ平気になってたし、意外と心のタフな子なのかしら。
尚、後日、お母様に聞くと、
『――怖さ以上に、素敵なお兄様が助けてくれた事実の方が心に強く残っているのでしょう』
との事。
て、照れるね。
(でも、良かったよ)
未来ある幼女には、嫌な記憶より幸せな記憶を胸に人生を生きていって欲しいものである。
と、閑話休題。
僕らは朝食を食べながら、
「今日も『魔窟迷宮の2階層』でいいですか?」
「はい」
「う、うん。お兄様の希望通りでいいよ」
「ありがとうございます、マルティーナさん、レイナちゃん。じゃあ、今日もお願いします」
と、本日の予定を決定。
食事後、身支度を整え家を出発、そして『魔窟迷宮』の入り口に到着し、僕らは建物内に入っていく。
そして広大な大森林で、魔物を次々と狩って行ったんだ――。
◇◇◇◇◇◇◇
初めての『2階層』探索から10日が経った。
その間、僕は母娘と共に『魔窟迷宮』へと1回2日なので計5回分の狩猟に通っている。
戦果は上々だ。
魔物を狩り、素材を回収、売却し、1日約3~5万円の収入を安定して得ている。
お母様曰く、
「エト君と出会ってから、生活の余裕が生まれました」
との事。
(それは良かった)
お母様に喜んでもらえて、僕も嬉しい。
尚、彼女が言うには、僕の魔物を狩るスピードは尋常ではないらしい。おかげで通常の5倍以上の数を狩っているとか……マジですか?
でも、僕1人の力じゃないと思う。
お母様の『索敵』能力、娘ちゃんの『荷運び』能力、これがあればこそ、だ。
だって、僕の『攻撃力』がいくら高くても獲物が見つからなければ狩れないし、たくさん狩っても『素材』を持ち帰れなければ売る事もできないのだ。
僕ら3人の力が上手くかみ合っているから、だから、良い結果が出せるのだ。
そう伝えたら、
「まぁ……ふふ、そうですね」
「レイナも役に立ってるの? え、えへへ、嬉しいな♪」
と、2人も素敵な笑顔になる。
(うんうん)
僕も心が温かくなったよ。
あと、この5回の狩猟で『連携』も良くなったように思う。
1度、『角猿』3体と戦闘になった。
この『角猿』はマギ・ブラスターの『通常射撃』の通じない相手である。
(やばいか?)
と、一瞬、思ったけれど、
「私を信じて!」
「!」
マルティーナさんの背中が叫び、先陣を切る。
そして、『獣人』らしい素早い動きと長い槍の間合いで、3匹の『角猿』を足止めしてくれる。
もちろん、長くは無理だろう。
――けど、7秒なら。
(喰らえ、魔力充填射撃っ!)
そして、1匹を撃破。
数が減れば更に安定し、続けて2匹目、3匹目も『魔力充填射撃』でしっかり狩れたんだ。
その時に、
「エト君を信じていました」
と、お母様は僕を見つめて、光る汗の流れる笑顔を見せてくれたんだ。
(ああ、そうか)
僕が彼女の『足止め』を信じて魔力充填したように、お母様も僕の『射撃』を信じ、7秒間必死に足止めをしてくれたのだろう。
もし射撃が遅れたら? あるいは外したら?
彼女は相当、危険な状況に……いや、それこそ『角猿』たちに殺されていたのかもしれない。
でも、僕を信じて『前衛』に立った。
立ってくれたのだ。
(これが『仲間』……か)
信頼し、自分の命を預ける相手……うん、マルティーナさんなら、まさに相応しい相手だ。
きっと彼女も、同じように思ってくれている。
――その信頼を裏切らないよう、がんばろう。
僕はそう心に固く誓った。
尚、戦いだけではない。
家に帰った夜の時間も、僕とマルティーナさんはお互いの事を知り合い、悦ばせ合い、より深い信頼と愛情を築いていた。
(……えへへ)
何でもしてくれるし、何でも受け入れてくれる。
本当、年上の女の人って最高~♪
そんな訳で今、僕は仕事でも家庭でも、素敵な母娘と共に幸せな日々を過ごしていたのである。
◇◇◇◇◇◇◇
本日も僕は、母娘と一緒に家を出た。
空は青く快晴で、通りを吹き抜ける風が柔らかくマルティーナさんの金色の長い髪と尻尾の美しい毛並みを揺らしている。うん、凄く絵になっている。
眺めて歩きながら、僕は聞く。
「今日はどうしましょう?」
「そうですね。『3階層』に挑むのも良いですが、1度、『地上』の依頼を受けるのも良いかもしれません」
「地上……『貢献度』稼ぎですか?」
「はい。エト君の実力なら、4~5階層でも充分通用するでしょう。その方がやはり稼げますし、そのために『緑印級』を目指すなら、今の内から『貢献度』を稼いでおいた方が後々楽になるでしょうから」
なるほど、今後を見据えて、か。
(確かに『4階層』、『5階層』に行くには2ランク上げないと駄目なんだもんね)
必要『貢献度』も多い。
その分、今の内から備えた方がいいのかもしれないね。
僕は頷き、
「わかりました。じゃあ、今日はギルドの掲示板を見てみましょう」
「はい」
「う、うん、お兄様」
母娘も賛同してくれ、僕らは『冒険者ギルド』へと向かったんだ。
やがて到着し、大きな建物に入る。
(相変わらず、人多いなぁ)
室内は活気があり、賑やかだ。
掲示板前には依頼書を求める『冒険者』が集まって、大混雑となっていた。
おお……凄ぉ。
(……よ、よ~し、僕らも突撃だぁ!)
覚悟を決め、前に出る。
と、その時、
「――失礼します、マルティーナ・シュメ様ですね?」
(え?)
「はい?」
突然、横から声をかけられ、見れば、若い女性のギルド職員さんが立っていた。
こちらにお辞儀し、
「突然のお声がけ、申し訳ありません。実はギルドからマルティーナ・シュメ様に『指名依頼』をお願いしたく、お声をかけさせて頂きました」
「まぁ……私にですか?」
(指名依頼?)
僕と母娘は目を丸くする。
不安そうに「お母様……?」と見上げる娘のおかっぱの金髪を、マルティーナさんは優しく撫でる。その様子は実に母親らしい。
そして、お母様は頷き、
「わかりました。まずは、その『指名依頼』の内容を伺っても?」
「ありがとうございます。では、別室にて詳しいご説明をさせて頂きますので、どうぞこちらへ」
と、ギルド職員さんは階段を示す。
その案内に従い、僕ら3人は喧騒の1階フロアをあとにし、階上へと登って行ったんだ。




