018・地上の依頼を受けて
あらすじ、少し変えました。
色々試行錯誤してまして、今後タイトルなども変更する可能性もありますがどうかご了承下さいね。
では本日の更新、第18話です。
よろしくお願いします。
「あ……んんっ」
お母様の口から悩ましげな声がこぼれ出る。
今夜も、レイナちゃんが自室に戻ったあと、僕はマルティーナさんから『男女』についての勉強をさせてもらっている。
経験豊富な元人妻さんから、丁寧に、自分の熟れた肉体を使って教わる授業である。
(さ、最高だ~)
天国とはこの事か、と思う僕だった。
…………。
やがて、一息。
「エト君は覚えが早いですね」
「ど、どうも」
ベッドの上で、お互い裸のまま会話する。
淡い照明に照らされる彼女の裸身は、白く滑らかで、少し汗に濡れ、上気した様子も本当に美しく艶めかしい。
こんな素敵な人とエッチできるなんて……。
「僕、幸せです」
つい素直に口にする。
彼女は一瞬、キョトンとする。すぐにその頬が赤くなって恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑う。その表情は何だか乙女みたいで可愛くて。
「もう……急に何を言うのですか」
「本当ですよ? だから僕も、マルティーナさんとレイナちゃんを必ず幸せにしてみせます」
「…………」
「? マルティーナさん?」
「ふふ、そんなこと、考えなくていいんですよ?」
「え?」
驚く僕の髪を、年上の彼女は優しく撫でる。
「エト君は若いんです」
「…………」
「深く考えず、今は経験を積み、楽しんでください。私も、こんな若い男の子に求められて嬉しいのですから」
「……えっと」
「それに、私はもうおばさんですから……ね?」
と、穏やかに笑う。
でも、その表情はどこか寂しそうで……何だか胸の奥がモヤッとする。
だから、しっかり言う。
「僕にとってマルティーナさんは、誰より魅力的な女の人でしかないです」
「……あ」
「世界で1番好きです」
「……っ」
彼女は息を詰め、その顔全体が真っ赤になる。
数秒見つめ合い、お母様は何かを恐れるように視線を外して、深く息を吐く。
「もう……エト君は」
「…………」
「ふふ、この話はここまでにしましょう」
「マルティーナさん」
「それより、明日は1度、『地上』で依頼を受けてみましょうか」
「……え?」
突然の話題転換に、僕は青い目を瞬く。
マルティーナさんは微笑み、僕の頬を白い指で撫でる。
「今日の『魔窟迷宮』でわかりました。エト君の実力は『1階層』の獲物では勿体ないのだと。ならば『ギルド貢献度』を積み、ランクを上げ、早い内に『2階層』、『3階層』に挑んだ方が良いでしょう」
「先にランク上げ、ですか」
「はい。『無印級』の討伐依頼なら、『マーダーマンティス』を狩るよりも簡単です」
「え~? そうなんですか」
なら、やってみるか。
(マルティーナさんの判断だし、きっとその方が良いのだろう)
僕は頷き、
「わかりました、そうします」
「はい」
お母様も満足そうに頷かれた。
ウズッ
その美しい笑顔を見ていたら、何だかまたいたしたくなってくる。
僕の反応に、お母様も気づく。
長い尻尾が揺れ、表情が『女』のそれに変わっていく。
「ふふ、やはり若いですね」
「う……」
「いいんですよ。さぁ、もう1度いらしてください」
彼女は甘く笑う。
重そうな乳房を揺らし、僕へとキスしながら、僕を引っ張るように仰向けになる。
金色の長い髪がシーツに広がる。
「マルティーナさんっ」
「あ、んっ」
未亡人さんの甘い嬌声が客室に響く。
僕と美しいお母様は『男女』の補習授業を行い、やがて、お互い深い満足の中で眠りに就いた。
◇◇◇◇◇◇◇
翌朝、僕とシュメ母娘は『冒険者ギルド』を訪問した。
(うわ、混んでる~)
掲示板前は、多くの冒険者でごった返している。良さそうな依頼書を取り合い、騒然とした雰囲気だった。
でも、
(うん、この熱気、嫌いじゃないな)
むしろ『前世の僕』の理想の光景に思えて、『今世の僕』も何だかワクワクしている。
見れば、掲示板の依頼書は、推奨ランクごとに分けて掲示されている。
(ふむ?)
「パーティーの場合、メンバーのランクが違ったら『依頼の推奨ランク』はどうなるんですか?」
「基本、最上位と最下位の中間ですね」
「へ~?」
「ただし、ギルド側で記録されたメンバーの実績、能力を加味し、総合的に判断して受注許可の可否が決められます。要は、ギルドの判断次第ですね」
「なるほどです」
僕は頷き、
「となると、中間は『青印級』……レイナちゃんと同じランクだね」
と、幼女を見る。
彼女は驚いたように目を丸くし、
「あ、そ、そうだね」
コクコク
と、何度も頷いた。
(うむ、可愛いのぉ~)
でも、今まで中間は『緑印級』で、僕が加わった事で『青印級』にランクダウンしてるんだよね……。少し申し訳ない。
でも、母娘は気にした様子もなく、
「では、何か良さそうなものを探しましょう」
「い、いいの選ぼう、お母様!」
「ふふっ、ええ、エト君の『初依頼』ですものね。しっかり吟味していきましょう」
「うん! ええと、ええと……」
と、2人で掲示板を見ていく。
僕、放置。
いや、ま、2人の方が良し悪しの判断がわかるし、別にいいんだけどね……。
(でも、少し寂しい)
と、苦笑しながら、母娘のあとをついていく。
やがて、15分かけて、母娘は1枚の依頼書を掲示板から剥がし、僕にも見せてくれる。
「これにしましょう」
(ふむふむ?)
依頼内容は『森林ゴブリンの討伐』とある。
オルガランテ北部の森で、この繁殖力に優れた魔物の駆除が定期的に行われているらしい。要は、常駐の依頼の1つ。
依頼主も『街の軍務局』で身元も確か、報酬の支払いも確実だ。
敵の強さも、
「レッドゴブリンと同じです」
「じゃ、大丈夫ですね」
と、安心である。
また指定期間中の駆除数に応じて『ギルド貢献度』が増加するため、『ランク上げ』も一気に狙えるとか。
マジ、良い事尽くめじゃん。
(本当に、しっかり吟味してくれたんだね……)
何だか感動だよ。
「2人とも、色々考えてくれてありがとうございます」
「いえ、そんな」
「え、えへへ……♪」
僕のお礼に、2人も照れたようにはにかんだ。
やがて、受付に移動する。代表のマルティーナさんが手続きをし、3人分の『登録カード』を提示、無事、審査を抜けて受注が成立する。やったぜ。
「では、北部の森へ行きましょうか」
「はい、マルティーナさん!」
「う、うん、お母様」
そして、僕ら3人はギルドをあとにする。
やがて『オルガランテの街』を出発すると、北への街道を乗合馬車で移動していったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
「――今日はこのぐらいにしましょう」
と、マルティーナさんが言った。
「あ、はい」
僕は頷き、銃口から蒸気を上げる『マギ・ブラスター』を亜空間にシュンとしまう。
そんな僕らの周囲には、『森林ゴブリン』の死体が無数に転がっていた。
幼女は、せっせとその死体を『解体』している。
(呆気ないなぁ)
思った以上に楽な仕事だった。
北部の森に着き、約5時間、僕らは200匹以上の『森林ゴブリン』を狩っていた。
『森林ゴブリン』は、見た目、『レッドゴブリン』と大差なく、肌が緑色で体表に植物が生えている小人の魔物だった。一応、棍棒や木の槍などを扱ってくる。
でも、弱い。
レッドゴブリン同様、『マギ・ブラスター』の1発で死んでしまう。
(いや、弱いは言い過ぎかな……?)
お母様曰く、『森林ゴブリン』は森の植物に擬態し、不用意に近づいた獲物を不意打ちで集団で襲う習性があるらしいのだ。
その擬態が意外と上手い。
初見、僕は見つけられなかった。
だけど、狼人種の母娘の『鼻』は誤魔化せず、奴らはあっさり居場所を看破されてしまう。
おかげで僕が『マギ・ブラスター』でパンパンと撃ち抜くだけの作業になった。
ただ数が多く、10匹以上の群れにも遭遇したけど、
シュパッ ヒュパン
と、マルティーナさんの槍が奴らを斬り裂き、貫いていく。
結果、1匹も僕に近づく魔物はいなくて、おかげで僕も安心して射撃を続けられたんだ。
小人の死体を眺め、お母様は言う。
「さすがエト君ですね」
「?」
「あれだけの数の『森林ゴブリン』を全て1発で倒しています。ただの1度も外していません。おかげで誤射を恐れず、私も安心して戦えました」
と、笑う。
(あ、うん……なるほど)
それを聞き、『前衛』は『前衛』で『後衛』からの誤射も心配するのだ、と、今知った。
お互い、信頼が大事。
僕も言う。
「僕も、マルティーナさんが守ってくれると信じられるから、安心して撃てます」
こういうのは、伝えるのが大切だ。
彼女もほら、嬉しそうに笑ってくれ、つられて僕も笑う。
やがて、幼女を手伝い、僕らも『解体』を行っていく。『森林ゴブリン』の素材は『所持品』の他に『表皮の植物』もあるとか。稀に、希少な植物が生えているんだって。
あと、『右耳』が討伐証明。
これを回収し提出しないと、報酬が出ない。
(マジ大事!)
やがて、全ての素材を荷物として母娘のリュックと僕の肩提げ鞄にしまう。
ちなみに、
「このクエスト報酬は100リドです」
「!?」
日本円で1万円っ!?
(や、安ぅ~っ)
昨日、『魔窟迷宮』で集めた素材の売却額は合計2000リド――約20万円はしたぞ?
まぁ、たまたま運良く『古いネックレス』が入手できたのが大きいらしいけど……でも、1人頭、約6~7万円になっている。ちなみに、そのお金で僕、着替えや食器、歯ブラシとか色々買ったんだよ。『母娘の家』での居候用にさ。
なのに今日は、1人頭、3333円って……。
茫然とする僕に、お母様は、
「『無印級クエスト』の相場は、このぐらいです」
「で、ですか……」
「はい。ただ、ギルドへの『貢献度』は大きく加算されるはずです。今日の討伐数を考えれば、恐らく、今回か次回で『赤印級』に昇印できるでしょう」
「! 本当ですか?」
「はい、本当ですよ」
と、彼女は柔らかく微笑んだ。
(そっかぁ)
金銭以外で『ギルドの依頼』の影響は、結構大きいんだね。
今回か次で昇印、そしたら、魔窟迷宮の『2階層』と『3階層』にも挑めるんだ。
(ふふっ……)
僕は笑い、幼女を見る。
突然の視線に、彼女はビクッと背筋を伸ばす。
僕は笑い、
「うん、今日がんばったもんね。昇印できるか楽しみだよっ」
と、両手を出す。
レイナちゃんは紫色の目を丸くし、思わず、彼女も小さな両手を上げる。
僕はその手を、自分の手で軽く叩く。
パン
いい音が響く。
彼女は驚き、すぐに、
「う、うん、そうだね、お兄様っ」
と、照れたようにはにかんだ。
僕も笑顔で頷く。
そんな僕と娘の様子に、美しいお母様は「ふふ……っ」と優しい笑みをこぼしたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
街道脇に『石塔』が建っている。
実はこれ、乗合馬車の停留所で1日に4~5本の馬車が来るんだってさ。
(まさに異世界のバスだね)
尚、現在、森林の中に造られた街道の『石塔』では、僕と母娘の3人しかいない。
風に揺れる梢の音を聞きながら、のんびり待つ。
ふと横を見れば、楽しげに談笑する母娘がいる。
どちらも美形で、
(うん、絵になるなぁ)
眺めていても楽しいし、目が幸せだ。
その時、ふと思う。
「あの……今更ですけど、僕、一緒に暮らしてて大丈夫ですか?」
「え?」
「え?」
思わず聞いた僕を、母娘が振り返る。
僕は言う。
「その、なし崩し的にお世話になってますが、ご近所さんの目とか、家族の空間を壊したりとか、実はご迷惑になってたり……?」
もしそうなら、正直に言って欲しい。
母娘は同じ紫色の目を瞬き、
「エト君は……私たちと暮らすのは嫌ですか?」
「まさか!」
僕はブンブン首を左右に振る。
「むしろ、ありがたいです、幸せです! でも、だから心配になったと言うか……」
「なら、問題ありません」
「…………」
「エト君は、私たち母娘の恩人です。エト君が望むだけ居てください」
「でも……」
「夫を亡くしたあと、私たちはただ生きるだけの日々でした。ですが、今はエト君がいて、生きる張り合いができています。その成長を見守るのが楽しいのです」
「…………」
「娘も、お兄様ができて喜んでいますしね」
と、隣の幼女を見る。
コクコク
レイナちゃんはおかっぱの金髪を揺らし、何度も頷く。
「そ、そうだよ、お兄様!」
「レイナちゃん……」
「レイナ、お兄様と一緒に暮らしたい! ずっと一緒にいたい!」
「…………」
普段、大人しい幼女が力説している。
(そっか)
居候してていいのか。
求められる事が嬉しくて、安心してしまう。
うん、なら、今後は生活費を入れて、家事も手伝ったりして、これからも一緒に暮らさせてもらおう。
本格的に、この美人母娘と同棲だ。
僕は頷き、
「うん、わかった。ありがとう。――これからもよろしくお願いします」
と、母娘に頭を下げる。
そして顔を上げ、明るく笑った。
2人も安心したように笑い、
「エト君……はい」
「よかった、お兄様」
ムギュッ
幼女は、僕のお腹に抱き着いてくる。
驚きつつ、僕もそのおかっぱの金髪を優しく撫でてやる。幼女の尻尾もパタパタ動く。
(ふふ、可愛いのぉ)
マルティーナお母様も優しい眼差しだ。
と、その時、
「あ、あのね?」
「ん?」
「お兄様が来てから、お母様、いっぱい笑うようになったの」
「…………」
「だからきっと、レイナよりお母様の方がお兄様と暮らせる事、喜んでると思うよ?」
と、小声で言う。
(え……?)
思わず、2人でお母様を見る。
娘の暴露に驚き、
「え……あ、いえ、その……」
お母様は珍しく慌てた様子で、その頬を赤くなさる。
(ほわぁ……)
年上の大人のお姉さんが恥ずかしがる姿は、実に可愛く、眼福である。
僕、ほっこり。
表情に気づき、お母様は少し拗ねたように言う。
「もう、レイナ」
「えへへ……」
「まぁ、喜んでいるのは否定しませんよ。その、エト君と暮らせて、幸せなのは確かですから」
と、僕を上目遣いに見る。
(…………)
ドキッとした。
いや、美人のお母様のその眼差しは反則だよ。
今度は、僕が赤面してしまう。
森の中の停留所で2人で赤くなり、幼女だけが1人楽しそうに笑っていた。
◇◇◇◇◇◇◇
そんな風に母娘と談笑し、乗合馬車を待っていた時、
ピククッ
突然、2人の垂れた犬耳――いや、狼耳が動く。
母娘揃って、街道の南側を向き、
「お馬さんの足音!」
と、レイナちゃん。
(お? ようやく乗合馬車が来たか)
僕は安堵する。
でも、お母様は少し首をかしげ、
「いえ……この蹄の音の多さは乗合馬車ではありませんね」
「え?」
「恐らくこれは……。エト君、レイナ、1度、街道の外に」
「え、あ、はい」
促され、僕は母娘と街道の外の草地に入る。
しばらくして、
ドドド……ッ
細かい振動と共に、無数の足音が聞こえてきた。
やがて、街道の先の曲がりを抜け、木々の中に現れたのは赤い鎧を纏う騎馬の集団だった。
(え、何?)
驚く僕の耳に、
「アーヴィン王国騎士団です」
「騎士団?」
「はい。確か『アルカナ大霊峰』の一部が崩れ、その調査に来るという話がありましたので」
「あ……」
僕も思い出し、北の方角を見る。
森の木々の向こうに、青く霞む大霊峰の山々が見え、その稜線の一部が丸く削れている。
(…………)
じ、事故です。
でも、『異世界知識』が教えてくれる。
あの『アルカナ大霊峰』は、王国にとって大事な山脈。
人を寄せ付けぬ標高の高い山で、強力な魔物も多く生息し、他国との国境を守る天然の要害ともなっている。また神話や伝承も多くて、一部の人々にとっては信仰の対象でもあるとか。
要は、前世の『富士山』みたいなイメージかな?
で、その大事な山に穴が開いたら、
(そりゃ、国も原因を調査しようと思うよ……)
しかも、噂でなんか『古龍』の仕業かも、ってのもあったしさ。
…………。
げ、原因、僕だけどね。
墓場まで持っていく、一生の秘密だ。
と、お母様は、
「エト君、騎士団が通り抜けるまでは街道の外にいてください。騎士の進路を妨げた場合、無礼討ちもありますので」
「あ、はい」
マジか?
僕は頷き、母娘と大人しく待つ。
そんな僕らの前を、赤い鎧に身を包んだ騎馬の集団が通り抜けていく。ちなみに馬たちも同じく赤い鎧を付けていて、うん、格好いい。
数は、30騎程かな?
街道脇の草の中から眺める僕らには一瞥もくれず、一団は土煙を上げながら、人間の小走り程度の速度で目の前を通り抜けていく。
その時、
(ん……?)
赤い集団の中、1騎だけ鎧の色が違う騎士がいた。
黒い鎧。
黒地に赤い紋様の入った鎧の『黒騎士』様だ。
他の騎士が『長剣』メインなのに対し、その黒騎士だけが背に『大剣』を負っている。
そして、何だろう?
(目が離せない)
存在感があるというか、不思議な圧を感じる。
と、その黒騎士も、ふとこちらを見た。
(?)
少し驚いたような反応を示し、けれど、馬の足は止まらず、そのまま通り過ぎていく。
何だ、今の反応?
しかも今の、お母様を見ていたような……?
やがて、その黒騎士様を含めた『王国騎士団』は街道の先へ行ってしまい、曲がった道の木々の奥に消えてしまう。
僕らは草むらから『石塔』前に戻る。
「す、凄かったね」
と、幼女が興奮したように言う。
僕も頷き、
「なんか1騎だけ、『黒い騎士』がいましたね」
「そうですね。あれは『黒の王剣』と呼ばれる騎士です」
「黒の王剣?」
「ええ、王国のどの騎士団にも所属せず、王の直属として王命のみに従い、単独で活動する騎士の呼び名です。つまり、『王国最強の騎士』ですね」
「!」
王国最強の騎士っ!?
(そういうの、格好いい~っ!)
僕は青い目を輝かせ……あれ?
「あの、もしかして、マルティーナさんのお知り合いですか?」
「え?」
「いえ、その『黒の王剣』さん、さっき、マルティーナさんを見て驚いていたようなので……」
「…………」
彼女は一瞬、複雑そうな表情を見せる。
すぐに苦笑し、
「私ではなく、夫の知り合いでしたね……」
「夫……」
「ええ、夫も王国ではそれなりに有名でしたから。私個人は『黒の王剣』とはお互いの顔を知るぐらいの関係ですよ」
「へ~……?」
何か、含みのある言い方。
(でも、その辺、お母様、あまり触れられたくない感じかな?)
なら僕も、何も聞かないでおこう、うん。
幼女はただ1人、『ほわ~』と憧れの目で、騎士団の消えた方向を見ていた。
(……ふふ)
僕とお母様も、ほっこりだ。
やがて、40分程して乗合馬車が来た。
それに乗り、車内で約2時間揺られて空が夕暮れに染まる頃、僕らは『オルガランテの街』に帰り着いたのだった。




