↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年エトと魔法の銃 ~未亡人のママさん冒険者と甘く楽しい冒険生活送ります!~  作者: 月ノ宮マクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/25

016・相互理解

 美しい母娘と赤い大地を歩いていく。


 先頭はマルティーナお母様で、続いて僕、最後尾にレイナちゃんの並びである。


 と、歩きながら、


「この階層に出る魔物は『岩石甲虫(ロックビートル)』、『角ウサギ』、『レッドゴブリン』、『水晶角鹿』、『マーダーマンティス』が主だったものです」


「へ~?」


「地上と通じる『祠』を基点に、東側には『岩石甲虫』が、西には『角ウサギ』、『水晶角鹿』が、南には『マーダーマンティス』が、北には『レッドゴブリン』が生息しています。もちろん生息域外でも見かける事はありますよ」


「……なるほど」


 つまり僕は昨日、東地区を歩いていたらしい。


(だから、『岩石甲虫』としか遭遇しなかったんだね)


 と、真実を知る。


 お母様の白い指は、前方を示す。


「『祠』から真っ直ぐ北に向かうと、次の階層に通じる『第二の祠』があります」


「おお、次の階層」


「はい。ただ階段前にはギルドが『結界装置』を設置していて、『無印級』は先に入れないようになっています」


「…………」


「なので、今日はこの階層を色々巡っていきます」


「はい……」


 ショボンと頷く。


 と、僕の様子に気づき、彼女は苦笑なさる。


「大丈夫。ランクはすぐに上がりますよ」


「はい……」


「それよりも、今日は私たちパーティーの初陣です。お互いの能力を知り、今後に生かすための大事な時間になります」


「――あ」


「何が得意か、何が不得意か、それを知り、自分の命を預ける相手として、仲間への理解と信頼を深めましょう。今日は、そのための1日です」


「うん、わかりました、マルティーナさん」


 さすが、熟練だ。


 助言に頷く僕に、マルティーナお母様も微笑んでいる。


 娘ちゃんも、


「き、今日はがんばろうね、お兄様」


「うん、そうだね。今日はレイナちゃんのことも色々教えてね」


「う、うん! えへへ」


 と、照れ臭そうに笑う。


 尻尾もパタパタ揺れて、ほんま可愛いのぉ。


 僕もつい笑顔になってしまう。


 そうして笑い合う僕と娘ちゃんを、お母様も優しい眼差しで見つめていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 3人でしばらく歩き続ける。


(多分、北東方面かな?)


 太陽の位置からそう進路を予想しつつ、今は先頭のマルティーナさんについていく。


 と、その時、突然、お母様の足が止まった。


「?」


 僕と幼女も足を止める。


 お母様は目を閉じ、かすかに整った顔を持ち上げている。


 クンクン


 形の良い鼻が動き、


「この先に『岩石甲虫』がいますね」


「え?」


「距離は約600メード先、数は恐らく5匹ほどでしょうか。腐肉の臭いもするので何かの死体を漁っているようです」


「わかるんですか?」


「はい、私たちは『狼人種(おおかみびとしゅ)』なので鼻が良いんです。風向き次第ですが、ある程度は判別できますよ」


「へ~、凄い!」


 さすが、獣人さんだ。


 感心する僕に、お母様は少し恥ずかしそうにはにかまれる。


 ちなみに『異世界知識』によれば、『1メード』は『1メートル』とほぼ同じ長さらしい。


(つまり、600メートル先がわかるのか)


 実に優秀な索敵・探査能力である。


 もしかしたら、娘ちゃんもできるのかな? シュメ母娘の『得意項目』か……うん、仲間として覚えておこう。


 そして僕らは、その方向へと進む。


 やがて、赤土の大地の遠方に、本当に腐肉を漁る『岩石甲虫』の群れが見つかった。


 数も5匹……さすがだ。


「いましたね」


「はい。数が多いので慎重に行きましょう。私が先行し何匹か引きつけますので、エト君は残りを狙ってください」


「え、そんな必要ないですよ?」


「え?」


 槍を構えようとしていた彼女は、僕を見る。


 僕は頷き、



「――この距離と数なら一瞬で終わらせられます」



 と、伝えた。


 お母様は「……一瞬?」と戸惑いの表情だ。


 説明するより見せた方が早いか。


(来い、マギ・ブラスター)


 ヒィン


 僕は、右手に銀色の『魔法の銃』を亜空間から出現させる。突然の出現に、母娘は一瞬、「!」と驚いた顔をする。


 構わず僕は、銃口を魔物の群れに向け、


(多重ロックオン)


 赤丸の照準を5匹全部に表示。


 狙いは強固な岩の外殻ではなく、頭部に細かく絞っておく。



「――撃ちます」



 母娘にもわかるよう口に出し、引き金を引く。


 ドッドッドッ パパパァン


 銃口から魔力の『光弾』が射出され、遠い『岩石甲虫』5体の頭部に正確に命中、一瞬、光の火花を散らして貫通、あるいは頭部を丸ごと吹き飛ばしていく。


 甲虫は全匹倒れ、赤土の上で動かなくなった。


 数秒経過、絶命を確信し、


(よし)


 僕は『リロード』し、銃口を青い空へ向けておく。


 見れば、母娘は唖然とした表情だった。


「……まさか、こんな……この距離の『岩石甲虫』5匹を、一瞬で……?」


「お、お兄様、凄い……っ」


 マルティーナさんは目を見開き、娘ちゃんの方も素直に感心してくれる。


(うへへ、えっへん!)


 その表情が気持ち良い。


 どうですか、僕の専用武器『マギ・ブラスター』の性能は……なかなか優秀でしょう?


 もう鼻高々である。


 やがて僕らは、魔物5匹の死骸に近づく。


 お母様がしゃがみ、1匹ずつ確かめ、


「本当に死んでいます」


「うん、ですね」


「エト君の火力、射程、精度がこれ程とは……。先日の『森林狼』の時に知ったつもりでしたが、私の認識が甘かったようです」


「…………」


「その若さで、エト君は本当に凄い実力者なのですね」


「えへへ……」


 美しいお母様からの熱い眼差しに、少し照れてしまう。


 幼女もキラキラお目目で、「さすが、お兄様……」と僕を尊敬したように見てくれる。


 あはは、参ったな~。


(いや、まぁ、実際、凄いのは『マギ・ブラスター』なんだけどね?)


 うん、わかってる。慢心は禁物だ。


 そして、僕らは戦利品の『岩の外皮』の回収を始める。


 解体ナイフを取り出して、


「レ、レイナ、やるよ」


「え?」


 驚く僕の前で、幼女もナイフを抜く。


 魔物の前にしゃがみ、


 サククッ シュ~ッ パキィン


 手慣れた様子で、手早く、けれど丁寧に『岩の外皮』を魔物本体から取り外していく。


(え、早っ)


 僕、唖然。


 僕の昨日の解体に比べ、何倍も早い作業だ。魔物の構造の把握、ナイフへの力加減、単純な腕力など、全ての解体技術が僕より上に思う。


 お母様は微笑み、


「昔からさせていたので、『解体』はレイナの得意分野なのです」


「へぇ~?」


 そうなのか。


(小さいのに偉いなぁ、レイナちゃん)


 僕の視線に気づき、


「え、えへへ……」


 幼女は照れたように笑う。


 ただ、その頬に魔物の返り血が点々と紫色に付いているのは、ご愛敬……。


 と、その時、


「あ、魔石」


「あら、ありましたか」


(え?)


 幼女の手に、紫色の宝石がある。


 直径は1センチぐらい、透明で歪な形をし、魔物の体液で汚れているけれど、レイナちゃんが布で拭き取ると綺麗な光沢が現れた。


(何これ?)


 と、見つめ、


 ――魔石。魔力の結晶塊。たまに魔物の体内から見つかり、そこそこの値段になる。


 そう頭の中で『異世界知識』が教えてくれる。


(へ~、そんなモノがあるのか)


 面白いなぁ。


 そして、ありがたい臨時収入だ。


 僕は、幼女に笑いかけ、


「やったね、レイナちゃん」


「う、うん」


 照れたように、彼女も笑う。


 マルティーナお母様も微笑み、取り出したタオルと水筒の水で、娘の汚れた手と頬を綺麗に拭いてやる。


「ご苦労様。荷物もお願いしますね」


「うん、お母様」


 頷く娘の頭を優しく撫でる。


 やがてレイナちゃんは『岩の外皮』10枚と『魔石』1個を大型リュックにしまい、


「ん……しょ」


 ギシシッ


 肩ベルトを軋ませ、立ち上がる。


(おお……凄い力だね)


 昨日、僕は『岩の外皮』9枚と『宝石の外皮』1枚の重さで限界になったのに、彼女は同じ重量を背負っても平然とした様子で立っている。


 僕の視線に、獣人の幼女は「?」とした顔だ。


(なるほど、『得意項目』……か)


 例え幼くとも、やはり『青印級』の冒険者は伊達ではないんだね。


 美人母娘が僕を見て、


「では、エト君、次の獲物を探してみましょう」


「行こ、お兄様」


「あ、はい。行きましょう」


 僕が頷くと、2人も微笑む。


 こうして相互理解を深めながら、僕らは更なる赤い荒野の奥へと進んでいったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
索敵さえ出来ればかなりの物・・・とはいえやはり前衛は欲しい所。次回にはマルティーナお母様の実力が分かるのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。