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少年エトと魔法の銃 ~未亡人のママさん冒険者と甘く楽しい冒険生活送ります!~  作者: 月ノ宮マクラ


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011・輝石甲虫

 7発の『魔力の弾丸』が光となって着弾する。


 パパァン


 連続する軽い衝突音が聞こえ、光の粒子が散る――同時に、岩石甲虫(ロックビートル)たちは鹿の死骸の上から吹き飛んでいった。


(――よし!)


 内心、拍手喝采。


 でも、冷静に銃口は構え続けておく。


 その残心は、正解だった。


 光弾が命中し、弾け飛んだ岩石甲虫の7匹の内、4匹は動かなくなっていた。


 でも、3匹が、


(……まだ動くか)


 見れば、岩の外皮が弾け飛び、足が1~2本、折れている。


 でも、致命傷じゃない。


 あの頑強な岩の外皮が『マギ・ブラスター』の弾丸ダメージを減少させたのだ。


(防御力の高い魔物だね)


 冷静に分析しながら、


 ドッ ドッ ドッ


 再び引き金を引く。


 パッ パパァン


 3匹に命中し、2匹が絶命した。


 けれど、残る1匹は再び頑強な岩で銃弾を弾き、光の粒子を散らしながら2射目も耐える。更に、砕けた岩の外皮を広げ、内側の半透明な翅を広げて、


 ヒュバッ


「!?」


 僕へと突進してきたっ!?


 慌てて、横に跳ぶ。


 直前まで僕がいた場所を岩石甲虫は通り抜け、近くの巨岩にぶつかる。ガァンと重い音が響き、岩の表面が放射状にひび割れた。


 う、わ……。


(直撃したら、死んでたぞ)


 その威力に青褪めながら、再度、倒れたまま射撃。


 ドッ パァン


 瀕死の中での反撃だったのだろう、さすがに3度目は耐え切れなかったようで、岩石甲虫は紫色の体液を流しながら絶命した。


「…………」


 僕は立ち上がる。


 残弾表示は『19』で、すぐにリロードしておく。


 更に周囲を確認し、安全を確認。


(ふぅ~)


 ようやく緊張を解く。


 少しヒヤリとしたけれど、僕の『冒険者』としての初陣は、見事、勝利を飾れたみたいだ。


 7匹の岩石甲虫を見る。


 初の獲物、か。


 嬉しさに、つい笑みがこぼれる。


 解体用ナイフを取り出し、買取素材となる『岩の外皮』を回収しておく。


(結構、砕けちゃったな……)


 無事なのは3枚だけ、それ以外は売り物にならない感じ。


 うん、『ロックオン』の精度が甘かった。


 もっと細かく、『本体』ではなく『部位』に照準を合わせ、素材部分を傷つけずに倒さなければいけなかったのだろう。


 でも、これも経験だ。


 失敗から学習し、次は上手くやればいい。


(ふふっ、冒険者してるな、僕)


 3枚の『岩の外皮』を回収し、肩提げ鞄にしまう。


 岩なので、正直、少し重い。


 でも、この重さが命を懸けた成果であり、自身の財産だと思うと苦にもならなかった。


 ポンポン


 軽く鞄を叩き、


「さ、次だ」


 顔を上げ、更なる獲物を求めて、僕は赤い大地を進んだ――。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ドッ パァン


 銃口から光弾が発射され、岩石甲虫の頭部を貫く。


(ふぅ)


 絶命を確認し、リロード。


 安全を確保してから近づき、『岩の外皮』を解体用ナイフで剥ぎ取った。


 ゴトッ


 鞄にしまうと、中で『岩の外皮』がぶつかり合い、固い音を響かせる。


(これで9個目か)


 初ゲットから約5時間が経過した。


 獲物を探し、赤土の大地を歩き回ったけれど、発見するのは『岩石甲虫』ばかりだった。


 しかも、単体。


 餌の死体がないからか、群れていない。


 なので、5時間かけて得たのは6枚分の『岩の外皮』のみだった。


(効率悪いな~)


 ため息が漏れ、


「よし、1度、休憩するか」


 と、狩りの中断を決めた。


 巨岩の日陰部分に座り込み、本日購入した携帯食とマルティーナさん宅で補充させてもらった水筒の水を飲み食いする。


 モグモグ ゴクゴク


(ぷはっ)


 うん、美味しい。


 携帯食と水筒を手に、青い空を眺める。


 白い雲がゆったり流れ、何だか気持ちも落ち着く。


 視線を下げれば、赤い大地がずっと続き、遠くには山脈みたいな地形も見えている。


(うん、広いや)


 魔窟迷宮、少し舐めてたかもしれない。


 地形や魔物の種類、その分布状況など、事前に調べれば良かったんだ。


 反省だ。


 そして、次に活かそう。


(今日は下見で、『安全に生きて帰る』ことを第1目標にするぞ)


 お母様と約束もしたしね。


 ……約束。


 い、いかん、少し顔が熱いや。


 パタパタと手で扇ぎつつ、携帯食の最後の一口を食べ、水筒の水で胃に流し込む。


 と、その時、


(ん……岩石甲虫?)


 が、1匹、遠い赤土の地面を歩いていた。


 でも、サイズが大きい。


 今まで見たものと比べ、倍近い巨体である。更に、岩みたいな外皮には、赤や青、緑や黄の煌めく石が埋まっていた。


(え、宝石?)


 驚く僕の頭の中で、


 ――輝石甲虫(ジュエルビートル)。岩石甲虫の亜種、突然変異体である。


 と、異世界知識が教えてくれる。


 更に、



 ――『宝石の外皮』は高値で取引される。



(……何、だと?)


 僕は青い目を輝かせた。


 宝石……高値……一獲千金……まさに冒険者ドリームっ!


 ヒィン


 僕は『マギ・ブラスター』を召喚し、巨岩の陰から奴を見る。


 体長1メートルほどの巨体の虫は、僕に気づかず、悠然と赤土の大地を闊歩している。


(絶対、狩る!)


 覚悟を決め、


(――ロックオン)


 赤い照準を巨体に重ね、僕は岩の陰から飛び出した。


「喰らえ!」


 銀色の『魔法の銃』の引き金を引く。


 ドッ


 魔力の光弾が発射され、巨大な輝石甲虫の頭部に命中する。


 ガィン


(え……?)


 火花と共に光の粒子が散り、光弾が弾かれた。


 唖然とする僕の前で、輝石甲虫は何事もなかったようにこちらを向き、巨大な宝石を宿す翅を大きく開放した。


 ドヒュッ


 空気を裂き、輝く巨体が空中を突進してくる。


「くっ!」


 慌てて横に跳び、避ける。


 ドガァアン


 僕がいた地点に輝石甲虫は激突し、赤土の地面を吹き飛ばし、巨大なクレーターを作った。


 赤い土煙が舞い、視界を埋める。


(おいおい、予想以上に硬いね?)


 砂を吸わないよう鼻と口を片腕で隠しながら、その場から走って移動する。


 あの硬さは、通常射撃では貫けない。


 なら、


(――『魔力充填射撃』だ)


 リロードし、即、充填を開始する。


 第1段階までの充填時間は、7秒だ――6、5……と、頭の中でカウントしていく。


 その時、土煙が揺れ、


 ドヒュン


 赤い煙を吹き飛ばし、再び輝石甲虫が僕に突進してきた。


「っ」


 近くの岩に隠れる。


 ドゴォン


「おわぁっ?」


 岩が砕け、大きな破片が僕へと落ちてくる。


 慌てた僕は、反射的に右手にある銀色の銃本体で破片を受け、横に弾く。


 ガリッ


 銃身に傷ができた。


(げ……っ)


 青褪める僕。


 だけど、マギ・ブラスターの自己修復力が働き、虹色の光を放ちながら傷跡が消えていく。


 安堵しながら、再度、逃げる。


 輝石甲虫はそんな僕を狙い、何度も突進してきた。


 ドゴォ ドォォン


 必死に走り、跳び、岩を盾にし、身を守る。


(くそっ)


 実戦でよくわかった。


 僕の『マギ・ブラスター』は遠距離武器だ。


 基本、接近戦に弱い。


 だから、不意打ちや遠距離戦ならいいけど、接近戦を挑まれた瞬間、一気に不利になるのだ。


 要は、『魔法使い』と同じ。


(これは、前衛が欲しいな)


 無事帰れたら、『仲間探し』を検討しよう。


 そんなことを考えている間に、短いようで長かった7秒が経過し、銃口の先に『魔法陣』が発生した。


(ロックオン!)


 走りながら、赤い照準を奴に表示する。


 輝石甲虫は、再び僕に突進し、



「――魔力充填射撃!」



 足を止め、僕は引き金を引いた。


 カォン


 魔法陣から一条の光線が射出され、輝石甲虫の巨体を貫き、青い空に真っ直ぐ抜けていく。


 直後、巨体が墜落し、赤い地面をズザザッと削る。


 僕の目の前で、停止した。


「…………」


 残弾表示『0』の銃口を構えたまま、奴を見据えた。


 巨体は動かない。


 頭から真っ直ぐ胴体を貫通し、円柱状の穴が開いている。紫色の体液が流れ、赤土の地面に染み込んでいく。


 ――絶命してる。


(っ、ふうぅぅ……)


 息を吐き、僕はへたり込んだ。


 今回は、さすがにやばかったね……正直、死ぬかと思ったよ。


 でも、


「――僕の勝ちだ」


 と、薄く笑う。


 緊張からの解放と抜けない興奮で、まだ手足は震えているけれど、心は満足している。


 そして、目の前を見れば、


(うん、お宝だ)


 美しい宝石を宿した『輝石甲虫』の外皮が陽光に輝いていた。


 その輝きに、青い瞳を細める。


 そして、解体用ナイフを取り出す。


 やがて僕は、勝利の報酬を遠慮なく頂戴し、肩提げ鞄へと放り込んでいったんだ。

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― 新着の感想 ―
無事に変異種を倒せたが、ソロで活動する上での課題が出ましたな・・・前衛となればやはり、お母様が適任かな?
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