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【連載版】推しの氷結公爵に事務能力で雇われたので、今日も平静を装って尊死しています  作者: 江合 花果
第三章 動き出す脅威

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お告げ(ノエル視点)

【ノエル視点】


 怒られていた。


 それはもう、かつて見たことがないほどに。

 大人になってこんなに怒られることがあるのか、と思うほどに。


 勝手にタウンハウスを抜け出したこと。

 夜中に出歩いたこと。

 立ち入り禁止区画に入ったこと。

 危険な相手と大立ち回りをしたこと。


(そんなに怒らなくても良いんじゃないだろうか)


 ちょっと勝手に護衛もつけずに外出して、王都の禁止区画にヒョロッと入って、朽ち果てかけた教会の中で、魔人と死闘を繰り広げただけじゃないですか。


(うん、そりゃ怒られるか)


 ライアスは声を荒げるタイプではなかった。

 しかし今夜は、いつもより口数が多かった。

 いつもより言葉が早かった。


 それがライアスなりの怒り方なのだと、ノエルはなんとなく理解した。


(プンスカ怒っているライアス様、ちょっと可愛い)


 神妙な顔でお説教を聞きながら、ノエルは脳内でそっとそう思った。


 ライアスが荒い息を吐いた。

 まだ言い足りないのを堪えて、ため息をついた。


「改めて聞くが、君が戦っていたあれは、過去の魔人戦争に出現した魔人なのだな」


「はい」


「で、君は雑居街で見つけた、その魔道具で魔人を撃退した、と」


「はい」


「魔道具のこと、魔人のことは、夢の中で見た光景が鮮明で、調べてみたら魔道具も見つかり、魔人も本当にいた、と」


「はい」


「で、魔人と遭遇したものは仕方ないと、魔道具で撃退した、と」


「はい」


 ライアスが少し黙った。


「クラウス、どう思う」


「え、そこで俺に振りますか」


 クラウスが困惑した声で言った。


「私にも正直、何が何だか分からん」


「いや、分かる人いないでしょ……」


 クラウスがぼそりと呟いた。



(よし、夢のお告げパターン、何とかなりそうだ)


 ノエルは内心でそっと安堵した。


 だって、この世界がゲームの世界で、自分は廃課金者の廃プレイヤーでした、などと言う方が理解されない。

 夢のお告げの方が、まだましだ。


(何とかこれで誤魔化されてくれ、ライアス様)


 祈りながら二人の様子を見ていると、ライアスがノエルを見た。


「ノエル、一つだけ確認をさせてくれ」


「はい」


 ライアスが静かに、しかし真剣な声で続けた。


「過去の魔人戦争は、伝記の中にしか存在しない出来事だ。しかし今夜、自分はその魔人と思しき存在と、君の戦闘を実際に目にした」


「はい」


「仮にあれが本当に魔人だとして、君は伝説として語られてきた存在を倒したことになる」


「それは、まあ……はい」


 ライアスが続けた。


「さらに問題なのは、君の魔道具だ」


 ライアスは整理するように、一言一言を選びながら話した。


「あの結界の強度、魔道精霊の迎撃能力、短剣の概念破壊。どれも常軌を逸している。古代の失われた魔法の水準でなければ、到底作れるものではない」


「ええ、まあ……」


「それを君は、夢のお告げを信じて手に入れ、魔人を撃退した」


「はい」


 ライアスが、しばらく黙った。

 整理すればするほど、状況の異常さに直面している顔だった。

 釈然としないのは明らかだった。

 しかし他に説明がつかないので、保留にしているようにも見えた。


 クラウスがため息をついた。


(夢のお告げ、ギリギリ通っているか……?)


 ノエルが内心で祈っていると。


「ノエル、一つだけ確認をさせてくれ」


 ライアスが、真剣な声で言った。


「はい」


「君は、その、まさかとは思うが」


 少し間があった。


「聖女、なのか?」


 ノエルは、固まった。


(……はい?)


 夢のお告げによる安堵が、音を立てて崩れた瞬間だった。

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