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【連載版】推しの氷結公爵に事務能力で雇われたので、今日も平静を装って尊死しています  作者: 江合 花果
第三章 動き出す脅威

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星天の機神環(ノエル視点)

【ノエル視点】


 成功した。


 ノエルは自分の状態を確認しながら、内心で満足していた。


 左腕に装着した腕輪が、緑色の光を放っている。


 星天の機神環(せいてんのきしんかん)。

 先日、クラウスと訪れた雑居街の廃墟で手に入れた魔道具だ。


 意識外の攻撃も含め、自分に対する敵意を感知し、攻撃された瞬間に強力な結界を展開してくれる。

 状態異常を常時無効にしてくれる機能もある。

 そして、攻撃された瞬間に魔道精霊が展開して、襲撃者を魔力の矢で迎撃する。


(前世のプレイヤーたちの間で、ファンネルと呼ばれていたやつだ)

(動画配信サイトのゲームプレイ動画内でも大人気だった)


 乙女ゲームという特性上、戦闘パートに興味がないプレイヤー向けの課金アイテムだ。

 実際に手に入れてみれば、完全にチート状態だった。


(最終戦でも充分に機能する代物だ)

(ヴェイルごとき中ボスに、これを破る術はない)

(むしろ、これがなければこんな危険な場所に一人で来たりしない)


 そう思っていると。


「貴様ーー」


 ヴェイルが吠えた。

 右手に強力な炎を生み出し、ノエルにぶつけてきた。


 迫ってくる炎に、少し怯んだ。

 しかし動かなかった。


 炎は展開している結界が完全に阻み、霧散した。

 熱さも感じなかった。

 結界の緑色の光が、一瞬強くなった。


 直後、魔道精霊が無数の魔力矢をヴェイルに放った。


 今度は警戒していたのか、ヴェイルは左手に魔法で盾を作り、防いだ。


「さすがは、腐っても魔人ですね、ヴェイル・ナハト」


 ノエルは言った。


 ヴェイルが固まった。


「な、何故貴様が私の真名を知っている」


「それを貴方が知る必要はありません」


 ノエルは短剣を構えた。


「貴方には練習台として、ここで滅びてもらいます」


 ヴェイルが鼻で笑った。


「ふん、確かにその結界は厄介だが、魔力矢など私には効かん。貴様が何者かは知らんが、この教会の存在と私の真名を知っている時点で危険だ。ここで消すとしよう」


 魔法を防がれたためか、ヴェイルが直接攻撃を仕掛けてきた。

 右手の爪を伸ばし、ノエルに切りかかる。


 しかしその攻撃も、結界が弾いた。


「直接攻撃も完璧に防ぐだと、厄介な」


 ヴェイルが魔道矢の反撃を防ごうとした瞬間、ノエルは踏み込んだ。


 短剣を持っているとは意識していても、直接攻撃をしてくるとは思っていなかったのだろう。

 ヴェイルは完全に油断していた。


 短剣が、脇腹を浅く斬った。


 斬った瞬間、短剣の緑色の発光が強くなった。


「くぅ、この程度」


 ヴェイルは距離を取った。

 魔力矢の反撃を防ぎながら、ノエルを睨みつける。


 その瞬間だった。

 ヴェイルの顔が変わった。


「な、何だと」


 声が、乱れた。


「自身の身体から、力が――」


 言いようのない怠さが身体を覆うのを感じているのだろう。

 自分の中から力がごっそり抜け落ちたような様子だった。


 ヴェイルはノエルを睨みつけてきた。

 油断なく短剣を構えているノエルを。


「ま、まさか、その短剣か」


 ヴェイルが狼狽して叫んだ。


「貴方たち魔人は、人類を侮りすぎますからね」


 ノエルは不敵に笑った。

 いつもの笑顔とは違う、覚悟を決めた人間の笑いだった。


「私に対して深く警戒せず踏み込んでくると、思ってましたよ」

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