585話 飯でも一緒にどうだ?
「い、いえ……その……。失礼な対応をしてしまい、申し訳ありませんでした!」
受付嬢が勢いよく頭を下げた。
周囲からの視線が痛い。
なんか、俺が受付嬢をイジメているみたいになってないか?
「……気にしていないから構わない。それよりも手続きを進めてくれ」
絡んできた『竜牙』はともかくとして、受付嬢はやや不機嫌な視線をこちらに向けてきた程度だ。
別にこれぐらいで腹を立てる俺ではない。
「はい。ありがとうございます」
受付嬢がぎこちない笑顔で応じる。
どうやらまだ俺のことを誤解しているようだ。
まぁ、いいけどさ……。
できれば誤解を解いておきたいな。
「なぁ、今晩、飯でも一緒にどうだ?」
「えっ?」
「王都には美味い店もあるんだろう? 奢るぞ?」
「えっ? えっ?」
受付嬢が困惑した顔になる。
周囲の冒険者たちも固まっていた。
「コウタ殿! 女好きは大概にしてくださいまし!」
「……コウタちゃん、少しぐらいは慎もう……?」
ローズとティータから抗議の声が上がる。
「コウタ親分。さすがにそれはどうかと思うぜ」
「……えっと。主様の情欲は底なしですね。凄まじいです」
グレイスとエメラダからも冷たい目を向けられてしまった。
「いや、違うって。受付嬢ちゃんの誤解を解きたいんだよ」
「誤解……ですか?」
「ああ。君は俺のことを怖い奴だと思っているんじゃないか?」
「そ、そんなことは……」
「いやいや、取り繕わなくても大丈夫だ。Aランク冒険者なんて、何をするか分からない変人も多いもんな。分かるよ」
さらに上にはSランクもいるが、それはほんの一握りだ。
実質的にはAランクが冒険者の頂点と言っても過言ではない。
そんなところまで上り詰めるような奴らは、奇人変人の割合がとても高い。
もちろんそれだけでなく、ランクに見合った戦闘能力も持っている。
受付嬢からすれば、機嫌を損ねずに対応するだけでもヒヤヒヤものだろう。




